主要42カ国で採択されたAI原則

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2019年6月8日、主要20カ国(G20)貿易・デジタル経済相会議でAIをめぐって、人権や雇用に配慮するなど「人間中心」の開発を目指す原則を声明として採択しました。該当部分を引用します。

人間中心の人工知能(AI)
17.政府、国際機関、学術界、市民社会、民間部門を含む全てのステークホルダーがそれぞれの役割においてこれまで行ってきた取組を認識し、技術がどのようにして社会にインパクトを与えるかに配意しつつ、G20は、デジタル分野における起業、研究開発及びこの分野でのスタートアップの拡大及び不釣り合いに高いコストに直面する中小零細企業(MSMEs)によるAIの導入に特に焦点を当てつつ、イノベーションと投資が推進される人間中心のAIの実現環境を提供するよう努める。
18.我々は、AI技術が、包摂的な経済成長を促進し、社会に大きな恩恵をもたらし、個人に力を与えることを助けることができる点を認識する。AIの責任ある利用は、広範な社会の価値観を損なうリスクを軽減し、SDGsに向けた進歩を助け、持続可能で包摂的な社会を実現する原動力となり得る。AIの責任ある利用によってもたらされる利益は、労働環境と生活の質を改善し、女性と女児及び社会的弱者を含む全ての人に機会を与える人間中心の未来社会を実現する可能性を生み出すことができる。
19.同時に、我々は、AIが他の新興技術と同様に、労働市場の変化、プライバシー、セキュリティ、倫理的問題、新たなデジタル格差及びAIに関する人材育成の必要性を含む社会的課題を提起し得ることも認識する。AI技術への人々の信頼と信用を醸成し、その潜在能力を十分に引き出すために、我々は、OECD AI勧告から引用され、Annex に添付されている非拘束式のG20 AI原則によって導かれるAIへの人間中心のアプローチにコミットする。この Annex には、「包摂的な成長、持続可能な開発及び幸福」「人間中心の価値観及び公平性」「透明性及び説明可能性」「頑健性、セキュリティ及び安全性」「アカウンタビリティ」が含まれる。また、Annex は、国際協力及びリスクを抱える発展途上国や少数派の集団の包摂性に特に注意を払いつつ、リスクと懸念を最小化しながら、AI の恩恵を最大化し共有することを目的として、政策立案者のためのガイダンスを提供する。
20.人間中心のAIの追求にあたり、G20構成国は、既存の枠組みに沿ったプライバシー及び個人データの保護を促し続けることの必要性を認識している。G20はまた、AIに関する人材育成及び技能開発を促進する必要性についても認識している。我々はそれぞれ国際的な協力に継続的に努めるとともに、研究開発、政策の発展及びG20デジタル政策レポジトリやその他の協調的な取組を通じた情報共有といった分野で適切な会合を用いて協働する。

---引用おわり

これは5月22にOECDで主要42カ国で採択されたものと基本的に同じ方向性のものです。

Screenshot of www.oecd.org

AI原則の概要を引用します。

・AIは、包摂的成長と持続可能な発展、暮らし良さを促進することで、人々と地球環境に利益をもたらすものでなければならない。

・AIシステムは、法の支配、人権、民主主義の価値、多様性を尊重するように設計され、また公平公正な社会を確保するために適切な対策が取れる(例えば必要に応じて人的介入ができる)ようにすべきである。

・AIシステムについて、人々がどのようなときにそれと関わり結果の正当性を批判できるのかを理解できるようにするために、透明性を確保し責任ある情報開示を行うべきである。

・AIシステムはその存続期間中は健全で安定した安全な方法で機能させるべきで、起こりうるリスクを常に評価、管理すべきである。

・AIシステムの開発、普及、運用に携わる組織及び個人は、上記の原則に則ってその正常化に責任を負うべきである。

各国政府に対するOECDの提言は、以下の通り。

・信頼できるAIのイノベーションを刺激するために、研究開発への官民投資を促進する。

・デジタルインフラとテクノロジーでAIエコシステムとデータと知識の共有メカニズムの利便性を高める。

・信頼できるAIシステムの普及に道を開く政策環境を創出する。

・人々にAIに関わる技能を身につけさせるとともに、労働者が偏りなく転職できるよう支援する。

・情報を共有し標準を開発し、責任あるAIの報告監督義務を果たせるように、国際的、産業部門横断的に協力する。

---引用おわり

なお、AI原則の全文は、英語ですが、こちら↓で読めます。

https://legalinstruments.oecd.org/en/instruments/OECD-LEGAL-0449

このような宣言が採択されたのは2つの事情があるでしょう。ひとつは「AIの実用化が現実化してきた。」そして、もうひとつは、「AIの脅威も現実化してきた。」ということです。

しかし、歴史の教訓に学べば、このような理想論は実現しないことがあきらかです。「水は低きに流れる」ということわざがありますが、AIが人間を代替出来る場合には極限まで代替されることになります。だからこのAI原則は、反対言葉で解釈するのが良いでしょう。懸念されていることは全て現実化しちゃうというわけです。OECDの提言では「労働者が偏りなく転職できるよう支援する」という条項もありますが、転職先はありません。あるとしても、AIに代替された労働者の全員を吸収できるような仕事は無いのです。

※参考記事

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AIの音声認識率も既に人類を超えてる件


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