ショック・ドクトリン

ショック・ドクトリン(The Shock Doctrine,ショック主義)は、人々を恐怖に陥れるようなショックを利用しても市場原理主義を推し進めようとする考え方で、「惨事便乗型資本主義」、「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」とも呼ばれ、ジャーナリストのナオミ・クラインさんが世界的ベストセラーで提出した概念です。

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市場至上主義が行き着くところまで行ってしまって、あらゆる題材の金融商品が販売され、人々の生活を奪うような大惨事があってもそれを利用して金儲けをすることまで堂々と行われている風潮を批判するものです。アメリカ同時多発テロ事件(2001年)、イラク戦争(2003年)、スマトラ島沖地震 (2004年)による津波被害、ハリケーン・カトリーナ(2005年)などの災害時であっても利益を得ようとする取引が批判されています。

例えば先日の台風19号による日本の損害保険会社の保険金支払額が全体で2兆円を超える可能性があると言われていますが、この機会に損害保険会社株式の空売りを仕掛けて儲けようとしたり、復興特需で儲かりそうな会社の株式に巨大な信用買取引を仕掛けるような動きが批判されるわけです。

このテーマは、ものすごく単純化すると、経済学における、政府の介入を肯定する「ケインズ派」と、政府の介入に消極的な「新古典派」の対立と同じことのようにも見えます。

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ケインジアンであるナオミ・クラインさんが、新古典派の新自由主義を批判していると評することが可能なのです。

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数字の計算に過ぎないと思われがちな市場取引においても、常に倫理的視点は失ってはならないよという警告にも見えます。生産性革命のゴールが近づき、利子率が低下し、企業が利益を上げることが難しくなりつつある21世紀に、自動車の燃費偽装や排ガス偽装、鋼材の強度偽装、建築物の耐震偽装、食品表示偽装など、様々な企業で倫理違反行為が続出していますが、これに対する戒めとなっています。先進国における利子率の低下は日々エスカレートしており、ショック・ドクトリンもエスカレートしていくことが懸念されています。

※参考書籍

ショックドクトリンが紹介されている、水野和夫、株式会社の終焉


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