はじめに

いま、IT革命(デジタルトランスフォーメーションDX)に引きずられる形で、RPA、フィンテック、AI、IOT、遺伝子編集など、社会のあらゆる場面で変革が起きています。

2012年に始まったシンギュラリティ革命が少しずつ拡大伝播してきているのです。

2012年は奇跡の年

コンピューターの処理速度や記憶容量や機械学習が進歩することが、我々の社会生活にどのような影響を与えるのか、少しずつ事情が飲み込めてきました。あらゆる企業の業績や、収益構造や、雇用関係にも大幅に影響することが予想されています。IT革命と遺伝子編集革命は「双子の革命」と呼ばれ、相互に影響し合い、社会変革の速度を毎日加速させています。フューチャリストや文明評論家や経済評論家といった人々の中には、驚くべき予言を提言する人も現れました。

※AI革命の中心点のひとつ、HuggingFace Leaderboard

Screenshot of huggingface.co

2018年、未だ社会変革の途上ですが、これから社会に出る子供たちはどのように考えれば良いのでしょうか。私も未成年の親として何をアドバイスすべきか考えましたが、それは簡単なことではないと思い至りました。あらゆる仕事の概念や形態が急激に変化するため、親世代の考えが子供世代には通用しないのです。

AI(RPA)が人類の能力を超える技術的特異点に関する書籍、いわゆるシンギュラリティ本をいくつか読んで、理系本と文系本があることに気付きました。理系技術者が書いている本と、文系社会学者が書いている本の2種類に分かれるように思いました。未来を正しく認識するためには、片方だけでは不足で、この両方の書籍について適切な読解が求められます。「私は文系だから」「私は理系だから」という言い訳は通用しないのです。

AI革命に関する書籍のリスト

わたしたちは様々な人々とシンギュラリティについての意見交換をしますが、この問題に関する人々の感受性は多様であることに驚かされます。シンギュラリティという言葉そのものを知らない人や、技術革新が社会に及ぼす影響について過小評価している人も多いです。18歳や22歳の若者がそのような感受性で従来通りの価値観で進路を決めたらどうなるか、少し心配になります。何を専攻するか、どこに就職するか、良く考えるべきです。勿論、わたしたちにも未来がどうなるかなんて分かりません。それでも、日々、未来の方向性に注意を払って観察する気持ちは持っています。毎日、刻々と変化しているし、これからも指数関数的に変わっていくのだという認識が必要です。

「シンギュラリティ」や「ゲームチェンジ」など、新しい言葉を知ることにより、我々は思考を先に進めることができます。私達の思考整理を、2045年に社会で活躍する子供たちに捧げたいと思います。彼らが社会変革の波にストレスを感じないように、それだけを願っています。

当サイトの問題意識を表にまとめました。個々の記事参考書籍を読みませんと趣旨が掴めないかもしれませんが提示しておきます。シンギュラリティ年表も御案内しておきます。

シンギュラリティ表

産業革命以前、20世紀と21世紀の違い、シンギュラリティの前後でどのように変わるのか、一覧表にしてみました。当然、就職先や投資先は右側の「新体制」に属する企業を目的とすべきでしょう。左側の「旧体制」企業は、少しずつでも右側の方に移行できるように努力し続けなければ生き残れません。
項目中世旧体制新体制
西暦19世紀まで20世紀21世紀
価値の源泉宗教人間中心主義データ主義
政治王権神授説議会制民主制デジタル民主制
経済貨幣経済(金利なし、聖書によるウスラ禁止)
資本主義(金利あり)、成長経済シェアリングエコノミー(金利なし)、定常経済
人口ほぼ一定増加(ベビーブーム)減少(少子高齢化)
物価ほぼ一定上昇(財産の囲い込み)下落(協働型コモンズを無償利用)
通貨政府発行の法定通貨(国際取引は未熟)政府発行の法定通貨(基軸通貨はドル)暗号通貨(主要通貨はビットコイン)
金融小規模融資銀行融資クラウドファンディング
企業特許会社大企業ビジネス株式会社小規模、非営利団体NPOボランティア、ソーシャルビジネス、分散型自律組織DAO(decentralized autonomous organization)
労働奴隷的労働雇用契約の必要あり。正社員パーマネント契約。給与は低いが多数雇用される。必要ないがやるなら単発の仕事(ギグ)。パートタイム業務委託契約。給与は高く小数精鋭。
生産手工業から蒸気機関への移行工場でNC加工家庭で3Dプリンティング
収入自営収入給与、キャピタルゲインベーシックインカム
コンピューター機械式計算機ノイマン型(プログラムで動く)、デジタル古典コンピューターデータ駆動型、ディープラーニング型(NN機械学習で動く)、量子コンピューター
インターネットなしクライアントサーバーモデル(中央集権)、web1.0&2.0ピアツーピアによるブロックチェーン(分散台帳)、web3.0
流通・小売業小規模小売業デパート百貨店、商店街、グローバル化百円ショップ、無人コンビニ自動販売機、ネット通販ロボット配送、ローカル化、eコマース、Qコマース、ダークストア
モノとヒトの関係所有所有アクセス
情報非公開紙媒体を購入インターネットで無償取得
著作権・知的財産権未成熟保護廃止(海賊党運動)
エネルギー木炭、石炭有料の化石燃料を給油無料の太陽光エネルギーを充電
自動車馬車内燃機関エンジンの自動車を購入して人間が運転電気モーターのカーシェアリングをコンピューターが自動運転, MaaS
衣類手工業背広、プレタポルテ(高級既製服)wear something→ユニクロ,ZARA,H&M,Gap
食料自給自足高価(働かざる者くうべからず)安価(限りなくゼロ、無料に近づく)
住居代々相続住宅ローンで新築住宅を購入空き屋に無償で入居
不動産価値の源泉価値の源泉価値無し(VR・AR・デジタルツインへ移行)
ビジネスの主戦場王宮大都市メタバース(ネットワーク上の仮想世界)、リアルサイトは辺境
家族大家族夫婦と子供2人単身世帯
主要団体封建国家国民国家NGO,NPO
必要な勉強技能型、親方に弟子入りする暗記型、教科書を習得する討論型、答えの無い問題を切り拓く
資格・学歴形成期価値があるし必要価値は無く不要(学びは必要)
飲食店・店舗実店舗実店舗、多様性無人コンビニへ集約、ゴーストキッチン、クラウドキッチン
主要議題ルネッサンス開発・発展持続可能性SDGs
世界観神話開発の物語新しい物語

シンギュラリティ年表

2012年は奇跡の年です。ディープラーニングニューラルネットワークによる画像認識エンジンが画像認識コンテストで初優勝した年であり、キャットペーパー論文が発表され、同時に遺伝子編集のクリスパーキャス9酵素が論文発表され、ビットコイン財団が設立され、ヒッグス粒子が観測され素粒子論の標準模型が完成し、量子コンピューターの部品となる量子もつれの距離143kmの実験が成功した年です。シンギュラリティ革命の萌芽が全て出現し、もの凄い勢いで拡大し始めた年なのです。
シンギュラリティ年号起こった出来事
シンギュラリティ元年(2012年)DNNが画像認識コンテスト優勝。グーグルのキャットペーパー論文発表(教師無し学習だけでコンピューターが猫を認識できた)。音声認識ソフトgoogle now公開(apple siri は2011年公開)。クリスパーキャス9酵素の論文発表。ブロックチェーンを運営するビットコイン財団設立。CERNがヒッグス粒子検出を発表し素粒子論の標準模型が完成、人類は質量機構とヒッグス場を認識した(7月革命)。カナリア諸島で143kmの量子もつれテレポーテーション実験成功。カナダのD-Wave Systems社の量子アニーリングマシンを使ってタンパク質の折り畳み問題が計算された。
シンギュラリティ2年(2013年)カナダバンクーバーのWavesコーヒーショップに世界初のビットコインATMであるRobocoinマシンが稼働開始。NASA,Google,USRA(米国大学宇宙研究協会)が共同で、Quantum Computing AI Lab(量子コンピューターAI研究所)を設立。ミコロフらのword2vec論文が発表され自然言語処理の革命的発展が始まった。
シンギュラリティ3年(2014年)ケビン・エスベルトの遺伝子ドライブ論文発表。クリスパーキャス9を使って、クリスパーキャス9の遺伝子を組み込むことにより、種全体の遺伝子を操作できることが判明した。amazonがスマートスピーカーECHOを発売。米国ローレンスリバモア研究所の慣性核融合実験施設で、吸収エネルギーを核融合放出エネルギーが上回る「自己加熱」達成。
シンギュラリティ4年(2015年)DNNディープニューラルネットを用いた画像認識エンジンが人類のエラー率を下回った。中国で、ヒト生殖細胞の遺伝子編集実験。Google brain が ディープラーニング機械学習ライブラリTensorFlow のソースコードを無料公開。国連総会でSDGs採択。IPFSアルファ版リリース。オープンソース&ライセンスフリーCPUのRISC-V財団設立。OpenAI設立。
シンギュラリティ5年(2016年)クレイグベンターの研究グループが、53万塩基対の人工細胞DNA合成に成功し、JCVI-syn3.0 ミニマルセル(最小細胞)と名付けられた。人工生命体(原核細胞)の誕生である。スイス連邦工科大学のソーラープレーンが世界一周飛行に成功。太陽光エネルギー時代の幕開け。DNNディープニューラルネットを用いたalphagoが世界戦で優勝経験のある韓国のトップ棋士イセドル9段に4勝1敗と勝ち越した。IBMが量子コンピューターのクラウドサービス IBM Quantum Experience を公開。米国NISTがPost-Quantum Cryptographyプロジェクト開始。世界初の量子通信衛星「墨子号」の打ち上げ。
シンギュラリティ6年(2017年)DNNディープニューラルネットを用いた音声認識エンジンが人類のエラー率を下回った。機械学習を用いた囲碁AIソフトalphagoが囲碁チャンピオン中国の柯潔9段に3連勝し、将棋AIソフトponanzaが将棋名人に勝利した。Alibaba子会社Alipayが顔認証決済サービスを開始。Deepl機械翻訳サービス開始。自然言語処理の精度を飛躍的に向上させLLMの起源となった Transformer 論文 Attention is All you need が発表された。
シンギュラリティ7年(2018年)DNNディープニューラルネットを用いた自然言語認識エンジンがwikipedia読解問題で人類の正答率を超えた。LIDARレーザースキャナを搭載した世界初の市販車アウディA8発売。遺伝子編集によりHIV感染しにくくなった赤ちゃんが中国で誕生。米国アリゾナ州フェニックスでwaymoの自動運転タクシー商用運転開始(運転手なし自動運転レベル4)。耐量子暗号LWE方式を提案したOded Regevがゲーデル賞受賞。
シンギュラリティ8年(2019年)グーグルが量子超越性(量子コンピューターが特定課題においてシリコンなどの半導体による古典コンピューターの性能を超えていること)を実証。ビットコインで支払うことができるVISAデビットカードcoinbase cardサービス開始。IBMが量子コンピューターIBM Q System One発売。NII&NTTのエキスパートシステムが2019年大学入試センター試験英語科目で200点満点中185点(偏差値64.1)達成。RISC-V財団が米国の貿易規制から脱出するためにスイスに移転し、RISC-V international に移行した。
シンギュラリティ9年(2020年)ロチェスター大学の研究グループは15℃で超電導状態を示す炭素質水素化硫黄化合物を発見し、常温超電導の扉を開いた。新型コロナウイルス対策として人工合成されたmRNAワクチンが実用化。OpenAIの自然言語モデルGPT-3の人工合成ニュース記事の人間による識別率が52%を記録し識別不能を意味する50%に肉薄した。
シンギュラリティ10年(2021年)braveブラウザ1.19.86がIPFSを初めて標準搭載した。中米エルサルバドルでビットコインが法定通貨になった。IBM Quantum Summit 2021において127量子ビットの量子プロセッサ「Eagle」公開。IBMが2nmプロセスの試験製造に成功。
シンギュラリティ11年(2022年)中央アフリカ共和国でビットコインが法定通貨になった。NIST米国標準技術研究所が耐量子公開鍵暗号の最終候補CRYSTALS-KYBERを発表。米国ローレンスリバモア研究所でレーザー核融合の発生エネルギーが投入エネルギーを初めて超過した。2.05 メガジュール (MJ) のエネルギーを供給することで核融合のしきい値を超え、3.15 MJ の核融合エネルギー出力が得られた。OpenSSH9.0で耐量子暗号NTRUが実装された(capture now,decrypt later対策)。
シンギュラリティ12年(2023年)OpenAIが大規模言語モデルLLMを月額20ドルで使えるChatGPTplusを開始した。Metaが商用利用可能なオープンソースのLLMであるllama2を公開した。岐阜県の核融合科学研究所で中性子を出さないpB11核融合反応実証。中国で20万kWの高温ガス炉実証炉石島湾原子力発電所1号機が商業運転開始。
シンギュラリティ13年(2024年)EUROfusionがJET核融合実験炉で69MJの世界記録。Appleがios17.4から耐量子暗号PQ3をiMessageに導入すると発表。

人類史上最も重要な論文リスト

人類の歴史上きわめて重要な数学・科学のマイルストーンを学ぶことにより、将来のシンギュラリティ対策への理解を深めることができます。
発表年論文名著者名内容・意義
1687自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)アイザック・ニュートン万有引力、微積分学、ヒポテセス・ノン・フィンゴ(ラテン語:Hypotheses non fingo:私は仮説をつくらない)と宣言して科学革命を切り拓いた。
1832代数方程式が解けるための必要十分条件エヴァリスト・ガロア群論の導入、数の再定義、現代暗号の起源を用意した。
1847論理学の数学的分析ジョージ・ブールデジタル演算できるブール代数の創設。電子計算機の起源。
1900正規スペクトルにおけるエネルギー分布の法則についてマックス・プランク黒体放射エネルギーの最小単位を発見し、量子力学の起源となった。
1915一般相対性理論アルベルト・アインシュタイン外部を観測できない箱の中の観測者は、自らにかかる力が、箱が一様に加速されるために生じている慣性力なのか、箱の外部にある質量により生じている重力なのか、を区別することができないという、等価原理を人類が発見した。
1935物理的現実の量子力学的記述は完全であると考えられますか?アルベルト・アインシュタイン、ボリス・ポドルスキー、ネイサン・ローゼンERP論文、量子もつれの起源、量子コンピューターの起源。
1953核酸の分子構造: デオキシリボース核酸の構造ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック(ロザリンド・フランクリン)DNAの二重らせん構造特定
1957B2FH論文マーガレット・バービッジ、ジェフリー・バービッジ、ウィリアム・ファウラー、フレッド・ホイル恒星内元素合成の理論を紹介し、観測で得られたデータと実験データを用いてそれを裏付けした。また、鉄よりも重い元素を生成するための超新星元素合成を特定し、宇宙の元素構成比について説明を与えた。
1976暗号における新しい方向ホイットフィールド・ディフィー、マーティン・ヘルマン公開鍵暗号の発明(web3.0の起源)

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2018年3月 norikoe.net 管理人(2019年12月更新)