実質金利は、名目金利から期待インフレ率を差し引いた、「本当の金利」ということになります。
その本当の金利で、アメリカは5年国債で、実質マイナス1.7パーセントという状態になっています。日本は物価上昇率が低いので実質金利も下がりにくく、日米実質金利の逆転(日本の実質金利の方が米国よりも高い現象)も起きています。
アメリカの実質金利がマイナス1.7パーセントになっていて、かつ、ダウ平均とナスダックの最高株価を更新し続けている、というのは、金融緩和によって株高を演出しているということに外ならず、非常に危うい相場になっていると言わざるを得ません。世界史上初めて、マイナス金利(金融緩和、政府資金投入)による史上最高値ということをやっているのです。いわば国家(中央銀行)による相場操縦ということになります。
こういうのは、ハイパーインフレのリスクがあり、第一次大戦後の敗戦国ドイツとか発展途上国ベネズエラとかアルゼンチンで起きたことはありますが、世界最大の経済大国でこういうことが行われているのは史上初となります。しかも、アメリカもEUも日本も、同時に金融緩和し続けており、中央銀行のバランスシートを拡大し続けているので、その問題点が、為替市場には現れていないことになります。赤信号みんなで渡れば怖くない、というヤツです。
問題点は、株式市場と消費者物価に現れます。株式市場が高くなるのは「良いニュース」として報じられますが、消費者物価が高いのは「悪いニュース」として報じられることになります。ハイパーインフレ、スタグフレーションは、気が付いたら誰も手が付けられない状態になっています。手遅れになってから気付きます。株価が高いと喜んでいる場合ではないのです。
スタグフレーションには金融政策が通用しません。物価が高くて困っているので、金利を下げる訳にはいかないからです。勿論不景気なので金利を上げて経済を止めることもできません。金利を上げることも下げることもできないというのが、スタグフレーションの恐ろしさなのです。スタグフレーションで国民を救済するには、金利の引き下げとか給付金とかではなく、例えば現物配給制などにするしかありません。とりあえず国民が生き延びることには役立つかも知れませんが、物流システムの非効率化を招きますので景気回復が遠のく恐れがあります。
シンギュラリティを乗り越えるためには、「今現在の経済状態」を天候状態のように正しく認識する必要があります。その指標には、株価や名目金利よりも実質金利の方が適切かもしれない、というお話です。
※参考記事
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