ブックガイド

シンギュラリティを乗り越えるための必修書籍

未来がどうなるか明確に記述された本が検閲もされず発刊され本屋に置いてあり、いつでも買える状態です。それなのに、なぜかほとんどの人々は自分達の将来に大きな関係のある「その本」を買わず、読むことも無いのです。

「2045年問題 コンピュータが人類を超える日」松田卓也著、廣済堂新書

松田卓也氏の著作リスト

シンギュラリティの問題を理解するために最初に読むべき本でしょう。中学生でも読めます。第三の技術的失業という言葉が紹介されています。最初が産業革命による自動織物機械による失業、第二が産業ロボット導入によるブルーワーカーの失業、第三の技術的失業は医師や弁護士も含めたあらゆる知的労働者が対象となり得ます。

「シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき(エッセンス版)」レイ・カーツワイル、NHK出版

レイ・カーツワイル関連書籍リスト

シンギュラリティのバイブル、難解な本なのでエッセンス版を推奨します。「シンギュラリティは近い」という題名は、聖書マタイ伝3章2節「悔い改めよ、天国は近づいた」を真似たものです。「脳のリバースエンジニアリング」とか、「1キログラムの岩の状態は、少なくとも10の27乗ビットのメモリに相当する」などという言葉が記載されており、誤解をおそれずに言えば「狂人レベルの思索」じゃないかと思いました。それだけ色んな事が分かってしまう聡明な人なのだと思います。その彼が、2045年に1000ドルで買えるコンピューティングが1秒あたり10の26乗回の計算に到達し、1年間に創出される知能は、今日の人間の全ての知能よりも10億倍も強力になる、と予言しているのです。カーツワイルは、半導体業界が年間40から50パーセントのデフレ(価格性能比が向上)しているにも関わらず総収入は毎年17パーセント増加しているとして、デフレは心配する必要無いという主張もしています。また、VR技術の進歩により直接面会する必要性が低下し、不動産もヴァーチャルなものとなる、という予言もしています。「不動産テック」の予言ですね。カーツワイルにとって、シンギュラリティは来ないという議論は意味がありません。それが来ることは確実であり、「いつ」「どのように」来るのか、それが問題なのです。

「限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭」ジェレミー・リフキン、NHK出版

ジェレミー・リフキン氏の著作リスト

シェアリングエコノミーについてのバイブル、必読書です。経済誌の見出しなどで「シェアリングエコノミーでこの株が儲かる!」などという文言を見つけると笑ってしまいます。ちゃんとこの本を読んでからシェアリングエコノミーという単語を使おうね!と言いたくなります。彼は、資本主義経済の極限生産性を目指す競争がゴールに到達したとき、あらゆるモノの価値がゼロに近づき、現在の市場主義経済の主要プレーヤーである大企業も利益を上げられなくなるだろうと予測しています。そしてポスト資本主義のシェアリングエコノミーにおける主要原理は、「新ガンジー主義」と、「協働型コモンズ」であると提示しています。これらはシェアリングエコノミーを生き抜くには必須の知識です。

水野和夫、資本主義の終焉と歴史の危機

水野和夫氏著作リスト

第一章、資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ

経済成長という信仰、「成長教」は、歴史の曲がり角に来ているが、企業も政府も、それを認めようとしない。過去600年以上にわたる利子率の推移を見ると、利潤率=利子率が極端に低い状態は「利子率革命」が起きていると評価できる。社会・経済システムの大変革が起きているにもかかわらず、アメリカは「電子・金融空間」を創出し新たな投資先を提供し、量的緩和策によって、資本主義経済の延命策を実施しているが、それはバブルを大きくするだけであり、そのバブル崩壊のツケは結局一般国民が払わされることになるのだ。

第二章、新興国の近代化がもたらすパラドックス

先進国の利子率が低下して、過剰となったマネーの行き先は新興国への設備投資であった。それにより、新興国の近代化は歴史上前例の無いスピードで進行した。需給に基づく価格決定とは一線を画する、資源食糧価格の高騰である「価格革命」も発生した。グローバリゼーションにより経済格差も拡大し、国境を越えて先進国内部に進展した。バブルとその崩壊もグローバル化し巨大化の一途をたどっている。中国のバブルもやがて崩壊するだろう。利子率の低下という曲がり角に直面し、資本主義システム内部の覇権交代はもはや起こり得ない。

第三章、日本の未来をつくる脱成長モデル

投資から利潤を得る資本主義の成長拡大モデルは、世界中の「空間」に投資し終わった時に臨界点に達する。グローバリゼーションで世界中の投資先に資金が行き渡り、利益率が低下しゼロ近辺に至ることは「資本主義の最終局面」を迎えていることを意味する。利子率の低下は「資本主義の卒業証書」のようなものだ。世界で初めてこれを手にしたのが日本である。利子率=成長が無いことを認識し、成長を求めない「脱成長」の経済社会構造を創出していく必要がある。

第四章、西欧の終焉

ギリシャ財政破綻に端を発する欧州危機は、単なる経済危機ではなく、EUという枠組みによる主権国家システムを超えていこうとする試みの挫折である。ヘドリーブルは「国際社会論」で普遍的政治秩序を目指す「新中世主義」を提示したが、中世のキリスト教会の代わりに、欧州統一を理念とした新中世主義の試みが行われてきた。それが利子率革命により挫折するとき、ブルが示唆した「非歴史的選択肢」というものがクローズアップしてくる。それがどのようなものか、ブルも提示していない。

第五章、資本主義はいかにして終わるのか

資本主義は、中心国(先進国)が周辺国(新興国)に投資して蒐集することにより利益を上げるシステムであったが、地球上全ての地域に投資が行き渡り、蒐集するものが無くなってきた。それはゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレを意味する。資本主義は、永続型資本主義からバブル清算型資本主義へと変質してきている。中国バブル崩壊によるハードランディングか、成長を前提としない「定常状態」を各国政府が目指すソフトランディングか、21世紀の我々の手に委ねられている。世界で最も早くゼロ金利に突入した日本はそのリーダーシップを執るべきだ。「脱成長という成長」の道を真剣に考えるべきである。

これは非常に明確に、現在の世界経済の状況が再確認できる本です。20世紀には金利があったのにどうして21世紀には金利が無くなったのか今後人類はどの方向に進めばよいのか、不明確ながら方向性が提示されています。「デフレ脱却」とか「株価上昇」などの20世紀的な価値観は既に無くなっているのだからそれは諦め、それを前提としない「定常状態」を維持する経済社会システムを模索すべきという主張です。

カイフー・リー、AI世界秩序

これは、台湾出身のカーネギーメロン大学のAI研究者で、マイクロソフトリサーチアジア(MRSA)を設立し、グーグルチャイナの初代社長で、ベンチャーキャピタリストでもある李開復(リーカイフー)氏のAI情勢分析と未来への提言書です。MRSAってILSVRC画像認識コンテスト2015で優勝した凄い研究所ですよね。我々日本人は、往々にしてアメリカ経由のシリコンバレーの論調に流されやすいものですが、中国側の知見を得られる貴重な本です。また、実際にディープラーニングを動かしている人の見解なので将来予測についても説得力があります。そして、最後の2章は人生観世界観を論じたもので、それまでのAI分析とは一線を画す内容であり、「2冊の本がひとつになっている」感覚を与えるものでした。


上記5冊の必修書籍に加えて、推奨書籍リスト

限界費用ゼロ

AI革命を学ぶ

イノベーションとは

向こう側の世界を考える

仕事をするなら(稼ぐ作戦)

サバイバル生活(節約作戦)

乗りこえる思想

歴史に学ぶ