AI革命を学ぶ

「トコトンやさしい人工知能の本」、辻井潤一監修、産総研人工知能研究センター編、日刊工業新聞社

監修者の辻井潤一氏は日本における人工知能研究のキーマンのひとりです。この本では、人工知能の歴史から分野、最新研究に至るまで俯瞰的に見ることができます。特に、第三章「人工知能を支える基礎技術」と第五章「ディープラーニングは何がすごいのか」を読むことをお勧めします。大脳皮質を模倣したニューラルネットワークが機械学習を行い、特定分野では人間を超える知能を獲得しています。

「銀行員大失業時代」、森本紀行、小学館新書

この本の題名は、本を売るために出版社の人が考えたのかも知れません。この本の内容は、フィンテック革命に日本社会がどのように立ち向かうか、という話です。既存の銀行システムの革命的な改革に成功しなければ、本当にそのようになりますよという警告の書なんですね。一番感心したのは、「金融業界で生き残りたければ『ニュースは見るな』」という主張です。自分で見聞して自分で考えて行動せよということです。学生時代に哲学者を志したことがあるという著者は常に色んなことを自分で考える癖がついているのでしょう。これからの時代にそういうスタンスが有効であろうということですね。ただし、著者のシンギュラリティに対する読みは、レイカーツワイルとは違っているようです。カーツワイルはあらゆる側面でAIが人間を凌駕するという予言をしていますので、差別化して生き残るというような対策は無効になります。働くという意味で、生き残る道は無いと予言されているわけです。

「図解でわかる14歳から知っておきたいAI」インフォビジュアル研究所、太田出版

確かに分かりやすくAIの歴史から将来に向けての応用まで解説されています。子供むけにはこういう本も良いのかなと思いました。ただ、ブロックチェーンと、限界費用ゼロ社会(資本主義2.0、資本主義の終焉)についての言及が一切ありません。AIがもたらす極限生産性社会についての記述が少し物足りない気がしました。でも、AI理解の導入として十分すぎる分かりやすさです。中学生には推奨したいと思います。

新井紀子「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」東洋経済新報社

AIが東大入試に挑戦するという「東ロボくん」プロジェクトのリーダーである著者が、東ロボくんの内部でどのような処理が行われているかを明かしつつ、東ロボチャレンジの限界とAI革命の今後の予想と、AI恐慌を防止するために読解力の改善を提唱した本です。著者は東ロボくんにはスパコンは不要だし、シンギュラリティは来ないと断言しておられます。しかしこれは、自らの経験に基づく実感なんですね。来るという主張も来ないという主張にも、どちらも根拠は無いわけです。

「AI白書2019」独立行政法人情報処理推進機構

AI白書2017も凄かったけど、パワーアップしています。2018年版がお休みだったので2年ぶりの白書なのです!当代随一のAI研究者が総力を挙げて書いています。AIの現状を知ることができる本です。

いくつか例を挙げますので、詳細は実際に購入して確認して下さい。

AI100企業国籍(CB Insights)
76 アメリカ
8 中国
5 イギリス
4 イスラエル
2 カナダ
2 日本
1 台湾
1 フランス
1 スペイン

2016年AI関連世界特許出願件数
1位、米国IBM、666件
2位、米国マイクロソフト、192件
3位、米国グーグル、189件
4位、韓国サムスン、126件
5位、国家電網、121件
6位、富士通、102件
7位、NEC、102件
8位、NTT、95件
9位、韓国電子通信研究院、85件
10位、米国フェイスブック、83件

人工知能技術論文数が多い研究機関(2013-2018)
1位、CHINESE ACADEMY OF SCIENCE,5999
2位、CENTRE NATIONALV DE LA RESERCHE SCIENTIFIQUE CNRS(フランス),4997
3位、UNIVERSITY OF CALIFORNIA SYSTEM,3935
4位、INDIAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY SYSTEM IIT SYSTEM,2954
5位、TSINGHUA UNIVERSITY(中国),2585
6位、HARBIN INSTITUTE OF TECHNOLOGY(中国),2216
7位、UNIVERSITY OF LONDON,2211
8位、NANYANG TECHNOLOGICAL UNIVERSITY(中国),2167
8位、NATIONAL INSTITUTE OF EDUCATION NIE SINGAPORE,2167
10位、INRIA(フランス),2133
40位、東京大学,1184
115位、大阪大学,703
168位、早稲田大学,553
228位、京都大学,471
236位、東京工業大学,464
241位、名古屋大学,453
249位、情報システム研究機構,443
276位、筑波大学,415
300位、国立情報学研究所,387
309位、九州大学,382

もう世界における、米国と中国の勝ちっぷりと、日本の負けっぷりが見事に示されていますね。AI研究を目指す日本の高校生は、塾の偏差値表など見ないでこの表で志望大学を決めるべきでしょう。

総務省 ICTスキル総合習得教材

https://norikoe.net/wp-content/uploads/2020/01/ict_skill_all_set.pdf

これは、2017年度の総務省の事業で作成されたテキストです。こんな立派な463ページのテキストを無料で利用できるなんて驚きです。まさにIT革命の恩恵です。無料で使い放題。税金を払っているのですから堂々と利用しましょう。

この内容を全て理解できれば、シンギュラリティ適応の場面で、読んでない人よりも優位に立てます。このpdfをダウンロードして各自のスマホやキンドルに保存して電車やカフェで毎日勉強しましょう。社会の変化がなぜ起きているのか、どのように変化していくのか、ヒントが沢山詰まっているテキストです。463ページもあるので印刷するのは大変ですが、紙じゃないと理解できないページもあると思います。「ニューラルネットワークとディープラーニング」の項目のように、大事だと思ったページは印刷して何度も読み返したり、書き込みしたり、議論したりすると良いでしょう。

ジェフ・ホーキンス、脳は世界をどう見ているのか

レッドウッド神経科学研究所とヌメンタの創業者ジェフ・ホーキンスさんは、脳のリバースエンジニアリング、大脳新皮質の研究により、汎用人工知能のデザインをゼロからやり直そうとしています。思考実験、理論脳科学とも呼ぶべきアプローチにより、脳は世界の三次元地図(座標系)をたえず学習し続けて知性を獲得していると分析しています。

Screenshot of huggingface.co

All you need is attention という2017年のtransformer論文から、大規模言語モデルが驚くべきスピードで進化し続けています。 オープンソースLLMの言語能力は日々向上していますので、HuggingFaceのLeaderboardでチェックしましょう。そして、HuggingChatでその能力を体感して下さい。どんどん向上しますので、定期的にチェックして下さい。HuggingChatは日本語の質問を受け付けますが、回答は英語になりますので、ブラウザの自動翻訳機能を使って日本語で鑑賞すると良いです。