歴史に学ぶ

未来は歴史の続編です。歴史を知ることにより、未来の方向性を予測することができるのです。歴史書を読みすぎて困るということは有り得ません。

ユヴァル・ノア・ハラリ、サピエンス全史上巻

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさん、キレッキレの知性の持ち主です。それは第一章の冒頭部分、「物理学」、「化学」、「生物学」、「歴史学」を繋げて描写した部分にも現れています。ああ!そのように壮大な時間軸を解釈するのですか!この俯瞰力、凄いです。テレビや雑誌などでも時折紹介されている「農業革命は史上最大の詐欺であった」という衝撃的な文言が刻まれた書物です。農業革命は良いことだと思い込んで居ましたので、逆の視点を提供されて驚きました。確かに、穀物栽培の発明により人類の栄養は偏り始め、生活習慣病のリスクが高まり、免疫力も低下してしまったのかも知れません。試みに各章の読解を提示してみますので各自書物を手に取って読んでみて下さい。

第1章、唯一生き延びた人類種

7万年前、ホモ・サピエンスが文化を形成し始めてから、「歴史」の道筋が紡がれることになったが、これには3つの重要な革命が記されている。7万年前の認知革命、1万2千年前の農業革命、そして500年前に始まった科学革命である。最後の科学革命は、歴史に終止符を打ち、何か全く異なる展開を引き起こす可能性がある。

ホモ属には、サピエンスの他に、ネアンデルタール人や、シベリアの洞窟で見つかったデニソワ人など、他の近縁種も居たが、現代ではサピエンスだけが生き延びている。これをどう解釈するか、「交雑説」と「交代説」が長年論争してきたが、最新のDNA解析で化石と現代人のDNAを比較することにより、現代人には1〜4パーセントのネアンデルタール人のDNAが引き継がれ、現代のメラネシア人とオーストラリア先住民のDNAのうち最大6パーセントがデニソワ人由来のDNAであると判明した。この事実をどう解釈すればよいのか分からないが、どちらの説も完全に正しいわけではないと判明した。サピエンスだけが生き残ったのは、その比類なき言語能力ではないかと思われる。

第2章、虚構が協力を可能にした

サピエンスは15万年前にはすでに東アフリカに出現していたが、地球上の他の場所に進出して他の人類種を駆逐し始めたのは7万年前のことであった。7万年前から3万年前にかけて、サピエンスは突然、舟やランプや弓矢や針を発明し、芸術作品、宗教や交易、社会的階層化の最初の痕跡を生み出した。

7万年前に「(アダムとイブの)知恵の木の突然変異=認知革命」が起きて、サピエンスの言語は虚構を記述する能力を獲得した。サピエンスは、見知らぬ人同士の協同作業を可能にする有限責任会社=法人を生み出し、遺伝子によって規定された社会性(150固体程度)を大きく超えた組織形成を可能にした。サピエンスは、ゲノム(生物学的特性)を迂回して(超えて)、巨大な組織と巨大な物語を紡ぎ始めた。

第3章、狩猟採集民の豊かな暮らし

サピエンスは1万年前に農耕を始めるまで長い期間、種の全歴史を通じて狩猟採集民として暮らしてきた。その痕跡は、「大食い遺伝子」や「頻繁な不倫」として現代社会に引き継がれている。狩猟採集民の生活がどのようなものであったのか、ほとんど分かっていないが、現代の狩猟採集民の生活を観察することにより推測することはできる。現代の狩猟採集民は、平均すると週に35から45時間しか働かず、現代文明社会の労働者よりも短い時間である。彼らの栄養は多様性に富んでおり、化石を調べると人口の5から8パーセントが60歳を超えていた事が分かる。家畜や人口密集が無かったので感染症も少なかった。これを「原初の豊かな社会」と定義することができる。

第4章、史上最も危険な種

約4万5千年前、サピエンスはアフロ・ユーラシア大陸から、オーストラリアまで移住するという偉業を成し遂げた。それは当地のジャイアントカンガルーやフクロライオンなど大型動物相の絶滅を引き起こした。同様に、シベリアを経由してアラスカからアメリカ大陸にも進出し、マンモスやマストドンやオオナマケモノを絶滅させた。各地にサピエンスが進出した時期と、糞石(糞の化石)の年代測定の相関が動かぬ証拠となり、人類の有罪は決定的となった。サピエンスの狩猟採集民が絶滅の第1波を引き起こし、農耕民の伝播が第2波を引き起こした。現代の我々が引き起こそうとしてる絶滅の第三波は更に壮絶なものとなるだろう。

第5章、農耕がもたらした繁栄と悲劇

紀元前9000年頃、小麦の栽培がゆっくりと始まった。農業革命により、サピエンスは種として多くの食物を手にしたが、個々の固体は、労働時間を増加させられ、農作業によるヘルニアや関節炎に悩まされ、栄養の偏りによる免疫力の低下、集住による感染症のリスクが高まり、部族間の抗争も激化して、貧富の格差も生じ、幸福になったとは言えなかった。農業革命は
史上最大の詐欺であったのだ。

1995年トルコ南東部のギョベクリ・テペで彫刻の施された7トンの石柱が出土した。この年代測定と、栽培された小麦のDNA解析により「石柱が農耕に先行していた可能性」が指摘されている。

農業革命は家畜の飼育も可能にし、ヒツジ・ニワトリ・ロバ・ウシなどのDNAを飛躍的に増加させたが、個々の固体にとっては残虐な行為が横行している。サピエンスにとっても家畜にとっても、種のDNAは繁栄したが、個々の固体には悲劇でしかなかったのである。

第6章、神話による社会の拡大

農業革命は、狩猟採集民の縄張りを劇的に縮小させた。そして、時間の概念を拡大させた。農耕に伴う不確実性が、未来に対する不安を増大させ、食糧の余剰を生んだ。集落は拡大の一途をたどり、人々の協力を維持するために、神話による想像上の秩序が発達した。紀元前1776年のハンムラビ法典も、西暦1776年のアメリカ独立宣言も、想像上の秩序に過ぎなかった。宗教や人権やドルや国家などの神話は「物質世界に埋め込まれ」、「私たちの欲望を規定し」、「共同主観的現象」であり、生まれた瞬間から徹底的に教育され続けてきた我々個人には、脱出不能の監獄であるのだ。

第7章、書記体系の発明

社会の拡大は、税金や法律や目録など、膨大な量の情報処理を必要とした。そこで、名も知れぬ古代シュメール人の天才が脳の外で情報を保存して処理するシステム=「書記」を発明した。書記は当初、数値を主として、話し言葉のごく一部を記録できるに過ぎない「不完全な書記体系」であったが、やがて話し言葉の全てを記述しうる「完全な書記体系」に発展した。さらに、話し言葉を越えて、ゼロの概念も含む「数の言語=数式」に発展した。それはやがて、2進法の人工知能を生み出し、サピエンス自身を脅かす存在になりつつある。

第8章、想像上のヒエラルキーと差別

「想像上の秩序」と「書記体系」により、サピエンスは巨大なネットワークを組織することができるようになったが、これは中立的でも公正でも無く、架空のヒエラルキーと不当な差別を生み出した。アメリカ独立宣言は万人の平等を謳っていながら、富める者と貧しい者の不平等には関心が無かった。当時のアメリカ人にとって平等とは富める者と貧しい者に同じ法律が適用されることを意味するに過ぎなかったのである。ヒエラルキーは征服者が被征服者との力関係を固定化させるために利用されることが多かった。それは生物学的に何の根拠も無いにも関わらず、世代を重ねる毎に強固なものとなっていく悪循環の性質を有していた。たいていの社会政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物学的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものにほかならない。歴史を学ぶ重要な理由のひとつは、それを知ることである。

サピエンスの男と女は、生物学的な差異で分けられているが、ほとんどの人間社会で家父長制が布かれ、男女間の格差が大きかった。女性は子供を産み育てるのに必要なエストロゲン(女性ホルモン)を大量に分泌し、テストステロン(男性ホルモン)は男性より少ないが、そのことが社会における支配的地位を占めることに不都合であるかどうかは、全く分からないことだ。それにも関わらず、つい最近まで、そして現在においても、男女の格差が続いていることは不可思議なことである。

第9章、統一へ向かう世界

農業革命以降、サピエンスは神話と虚構によって人工的な本能を生み出し、それが「文化」として発展した。近代政治秩序における自由と平等のように全ての文化は矛盾を抱えており、これを解消しようとして、常に文化は変化していくことになる。その変化の方向性として、多様な文化が統一に向かっている様子が観察される。グローバルな秩序は、普遍的秩序として全世界を支配し始めた。それは、「貨幣」、「帝国」、「普遍的宗教」の秩序である。

第10章、最強の征服者、貨幣

狩猟採集民は物々交換をしており貨幣は無かったが、農業革命後に都市や王国が台頭して輸送インフラが充実すると、専門化が促進され、専門家どうしを結びつける貨幣が使われるようになった。貨幣は当初「大麦貨幣」として本質的価値のあるものが使われたが、やがて、銀やタカラガイの貝殻のように本質的価値を欠くが保存や運搬に便利なものが使われるようになった。紙幣や硬貨を経て、現代社会において貨幣の9割以上は「電子データ」として流通している。貨幣は最も普遍的で最も効率的な相互信頼の制度であり、グローバル経済秩序の協力を可能にするが、同時に名誉や忠誠、道徳性や愛など本来交換できないものの交換を迫るという邪悪な面も持っている。貨幣は文化の統合に大きな役割をはたしているが、それに劣らず極めて重要な武力の役割を無視することはできない。

第11章、グローバル化を進める帝国のビジョン

紀元前200年頃から人類のほとんどは帝国の中で暮らしてきた。帝国とは、「複数民族の支配」と、「変更可能な境界と無尽の欲」を特徴として持つ政治秩序である。ペルシア人は「お前たちを征服するのは、お前たちのためなのだ」と主張した。帝国は、言語、法律、貨幣などの標準化を推進した。それにより被征服者は優れた文化の恩恵を受けるのだと正当化された。

帝国は全て流血と迫害と戦争を通して権力が維持されてきたが、被征服者に民主主義や法制度や近代建築などの文化も継承させた。それは被征服者が20世紀民族主義により独立を果たした後も喜んで使い続けているものだ。帝国の良い面と悪い面は分割することができない。

将来の帝国は、全世界に君臨するグローバル帝国である。地球温暖化など本質的にグローバルな問題が出現したため、国家は急速に独立性を失いつつある。グローバル帝国は後期ローマ帝国に似て、多民族のエリート層に支配され、共通の文化と利益によってまとまりつつある。

ユヴァル・ノア・ハラリ、サピエンス全史下巻

下巻では、続編「ホモ・デウス」の問題意識がちらほら出現します。もう、この本を書いている時に続編の構想があったのですね。試みに各章の読解を提示してみますので各自書物を手に取って読んでみて下さい。

第12章、宗教という超人間的秩序

農業革命には宗教革命が伴っていたようだ。狩猟採集民は地元の精霊を信奉するアニミズム体系に従っていたが、農業革命を経て社会の拡大に伴い、社会を安定化させる必要性が増し、多神教の宗教が出現した。宗教とは、超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度と定義される。

やがて多神教の信者の一部は「宇宙の至高の神的存在」である一神教を生み出した。最初は古代エジプトで、次にイスラエルでキリスト教が誕生し、更にアラビア半島でイスラム教が生まれた。一神教は、他の信仰を認めない傾向があり、それどころか、サン・バルテルミの虐殺のように一神教内部のわずかな教義の違いで大虐殺を引き起こすことすらあった。

多神教と一神教の他にも、仏教やジャイナ教など「自然の法則」を信奉し学ぼうとする宗教が生まれた。アニミズムや多神教や一神教に自然法則など、様々な教義を組み合わせて同時に信奉する「混合主義」も勢いを増している。それこそが唯一の偉大な世界的宗教なのかもしれない。

過去300年間に人間を崇拝する新宗教が出現し隆盛を極めている。それは「自由主義的な人間至上主義」、「社会主義的な人間至上主義」、「進化論的な人間至上主義」に分類することができる。それぞれ、資本主義、共産主義、ナチズムという具体例を持つ。21世紀に入りサピエンスを「アップグレード」しようとする進化論的な人間至上主義が復活する兆しがある。

第13章、歴史の必然と謎めいた選択

交易と帝国と普遍的宗教のおかげで、様々な歴史の分岐点における選択を重ね、すべてのサピエンスは今日のグローバルな世界に到達した。この拡大と統一の流れは歴史の必然の結果だと思われる。しかし、その最終産物の内容が今日の状況とは異なっていた可能性も十分想定できる。物理学や経済学とは違い、歴史は正確な予想をするための手段ではない。歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、従って私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためである。

文化は一種の精神的感染症あるいは寄生体で、人間は図らずもその宿主になっているだけだと見る学者が増えている。これを文化的情報単位ミームの複製であると見るミーム学や、ポストモダニズム、ゲーム理論なども、文化の変遷を解釈分析しようとしているが、いずれも個々のサピエンスの幸福とは無関係なものであるという結論は同じだ。その意味で、1500年頃に起きた科学革命とよばれる歴史の選択も謎めいた動きであったと言わざるを得ない。

第14章、無知の発見と近代科学の成立

コロンブスが1500年ころ、スペイン王室の支援を取り付けて、大西洋航路を発見するためにスペインの港を出港してから500年の間に、私たちの人口は14倍、生産量は240倍、エネルギー消費量は115倍に増えた。サピエンスは核爆弾により歴史に終止符を打てる力も手にしたし、月面着陸も成し遂げた。このような驚くべき発展は、研究が力を生み、力が資源を生み、資源が研究を生むという科学革命のフィードバックループによって実現された。近代科学は、「進んで無知を認める意思」、「観察と数学の中心性」、「新しい力の獲得」において従来の知識の伝統とは異なっていた。人々は神学よりも、数学、統計学を信奉し、知識を応用することであらゆる問題を克服できるのではないか、進歩できるのではないかと思うようになり、あらゆる方面からの莫大な資金提供が始まった。

第15章、科学と帝国の融合

ヨーロッパで生まれた科学革命による、テクノロジーの果実は最初ちいさなものであったが、近代科学と近代資本主義と結びつくことにより、地球上の他の地域に優る発展を遂げた。

テクノロジーはヨーロッパの帝国主義と絆を結び、世界に拡大していった。無知を認める科学的態度により、空白の世界地図が製作され、これに「探険と征服」の遠征が続いた。世界各地の先住民にとって、機関銃を持ったヨーロッパ人は、まるで宇宙からの侵略者であった。アステカ帝国、インカ帝国、オーストラリア、ニュージーランド、タスマニアの先住民が大虐殺された。科学は帝国主義に、イデオロギー上の根拠も与えた。未開人に文明の知識を教える「白人の責務」を果たせというスローガンが生まれた。こうして迫害や搾取が促進された。

第16章、拡大するパイという資本主義のマジック

帝国の建設にも、科学の推進にも、お金が必要だった。経済の近代史は、たった一言「成長」という一語に要約される。歴史の大半を通じて、経済はゼロサムゲームであり、一人当たり生産量はほとんど変化しなかったが、科学革命が「進歩」という考え方を登場させ、グローバルなパイ全体が拡大可能であることを示した。アダムスミスの国富論は、利益を再投資せよという声明書だった。

コロンブスは各国王室に働きかけて大西洋航路探索の資金を投資させ、アメリカ大陸から、金銀鉱山やサトウキビやタバコのプランテーションから莫大な利益を上げた。西欧諸国の植民地支配は、株式会社を通じて推進され、開発会社や奴隷貿易会社が各国株式市場に上場され、普通の中産階級が出資した。フランスのミシシッピ会社は20倍以上の高騰を経て暴落し、フランス革命の遠因となった。自由貿易の名の下にアヘン戦争が遂行され、コンゴでは人口の2割である600万人がベルギー人の搾取虐殺により命を落とした。ベンガル大飢饉では人口の3分の1である1000万人が死亡した。20世紀になっても労働者への搾取は続いた。農業革命同様、近代経済の成長も大がかりな詐欺だったということになりかねない。

第17章、産業の推進力

西暦1700年頃イギリスの炭鉱で坑道の水を汲み出すために蒸気機関が発明された。これを、織機に接続したり、鉄道を造ったり、無限に応用できることが発見された。これが産業革命である。熱を運動に変換する発想は、原子力発電所や内燃機関を生み出した。

産業革命は、第二次農業革命であった。トラクターや人工肥料や業務用殺虫剤や合成ホルモンにより、農地も動物も生産性が大幅に上がった。奴隷貿易と同様、動物の苦痛は無視された。大量に生産された食品や製品は、大量に消費された。資本主義と消費主義は表裏一体であった。それは、信奉者が求められたことを実際にやっている史上最初の宗教である。

第18章、国家と市場経済がもたらした世界平和

産業革命は、家族と地域コミュニティを崩壊させ、国家と市場経済が個人主義を推進させ、国民意識という想像上のコミュニティを与えた。

核兵器による大量虐殺の脅威は平和主義を促進し、交易が促進された。交易の促進は平和の利益と戦争の代償を増大させ、ますます戦争の歯止めを生み出す。しかし、もはや戦争が無いとは言い切れない。人類は常に天国と地獄の両方の入口に立ち、落ち着き無く双方を行き来しているだけである。

第19章、文明は人間を幸福にしたのか

人類は幸福度を増してきたという進歩主義的な見方には疑念がある。幼児死亡率の低下や物質的豊かさによって幸福になったと断定することはできない。幸福度を測るのに被験者に聞き取り調査する方法があるが、家族やコミュニティが幸福度に大きく影響することが判明した。この調査によると、過去2世紀の物質面の状況改善は、家族やコミュニティの崩壊によって相殺された可能性がある。

生化学は、我々の幸福感がセロトニンやドーパミンやオキシトシンの濃度で決まることを発見し、それを操作する試みも始まったが、多くの宗教者や哲学者は感情は当てにならないと考えている。仏教では、苦しみの源泉は束の間の感情を求め続けることにあると教えている。この教えによれば、幸福は外的要因(物質)でも内的要因(感情)も関係ないことになる。歴史学者は幸福度の観点から歴史を考察する試みを始めた。

第20章、超ホモ・サピエンスの時代へ

サピエンスはとうとう遺伝子操作の能力を手に入れ、自然選択の対象から、知的操作の主体になりつつある。それは家畜の選抜育種から始まり、DNAの操作に至っている。遺伝子工学により、線虫の平均寿命を6倍にすることもできた。マンモスやネアンデルタール人を復活させる試みも続いている。サイボーグ工学は、ヒトの神経細胞と電子回路を接続させる技術を進化させ、人工網膜やバイオニック・アームも試作されている。

遺伝子工学によりサピエンス自身の遺伝子を操作して、サピエンスではない支配者を生み出す可能性が高い。その特異点(シンギュラリティ)は近づいている。サピエンスは、自分達がどのようにしたいのか分からずに特異点に向けて突き進んでいる。

岡野友彦、源氏長者-武家政権の系譜

シンギュラリティの時代を生き抜くために、時代の流れに左右されない、ぶれない固定軸を持つことが必要です。それは日本人にとって「日本とは何か」という知識です。

源氏長者という言葉を知っていますか?知っていたとしても、「淳和奨学両院別当」や「准三后」は御存知でしょうか。そして、征夷大将軍が兼務していた源氏長者には天皇の三種神器に対応するような宝器が存在し、歴代将軍に受け継がれてきたことを御存知でしょうか。

歴史を知ることは自分自身を知ることです。そして歴史は、未来に向かって未知の問題が発生したときに、過去に倣ってどのように乗りこえていくべきか羅針盤になる知識なのです。日本社会が、仏教伝来をどのように乗りこえたのか、また武家の台頭(暴力の時代)をどのように乗りこえたのか、そして黒船来航(西欧列強植民地主義)をどのように乗りこえたのか、これを学び直すことにより、21世紀の子供達が、どのようにしてシンギュラリティ(AI革命)の時代を乗りこえるべきかヒントが得られるはずです。

池田まき子、自由への道-奴隷解放に命をかけた黒人女性ハリエット・タブマンの物語

アメリカの新しい20ドル紙幣の肖像に使われることになった奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの物語です。ノンフィクション作家、池田まき子さんの読みやすい記述で小学校高学年から引き込まれるはずです。27歳のとき「地下鉄道」と呼ばれる南部から北部自由州への奴隷逃亡を援助する組織の力を借りて命懸けでメリーランド州からペンシルバニア州フィラデルフィアまで160キロの道のりを一人きりで乗り切りました。自由の身になっても地下鉄道の「車掌役」として何度もメリーランド州に往復し120人もの逃亡奴隷の手助けをして、南北戦争ではモントゴメリー大佐の補佐役として諜報部隊を率い、大きな役割を果たしました。奴隷解放宣言、南北戦争終結後も、貧しい黒人の援助や黒人差別の撤廃に向けて働き続けたというのです。晩年には競売で取得した土地を黒人教会に委託して高齢黒人のための施設まで完成させたのです。なんという波瀾万丈に満ちた人生なのでしょう。彼女の活躍を評して「黒人たちのモーゼ」「(南北戦争における)黒人のヒロイン」「マザー・タブマン」などと呼ばれたそうです。ゆとり教育で骨抜きにされた現代の日本のこどもたちに読ませてあげたい!これが人生ですぞ!