https://www.youtube.com/watch?v=3qJ95jwqd-w
シンギュラリティを乗り越える知恵、それは落語の中にあります。
昔、古今亭志ん朝の「居残り佐平次」を聞いて圧倒されました。そんな奇妙奇天烈な話があるわけない!でも、それを上手に聞かせちゃうんですよね。リアリティを付与して不思議と納得してしまう。高校生の頃だったか大学生だったか、「人生ってお金が無くても意外に乗り切れるかもしれない」と明るい気持ちになったものです。三遊亭圓生師匠の佐平次も素晴らしいですね!
幕末期の初代春風亭柳枝の創作落語と言われています。たぶん、柳枝さん自身に似たような経験があったんじゃないかと思います。佐平次にはモデルとなった実在の人物が居るはずです。
貧乏人が集まる長屋で佐平次という一人の若者が、3人の貧乏人を説得して1両を用意して品川の遊郭に遊びに行こうと誘います。1両以上掛かったら俺が何とかしてやるとか言って4人で妓楼に上がります。飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをやって、翌朝、3人から3両を巻き上げて、自分の2両を足して、5両を佐平次の母親に持って行っておくれと先に3人を返してしまいます。店の者には先に帰った3人が金を持ってくると言って、もう一晩、今度はひとりでどんちゃん騒ぎをします。次の朝、今度は、お金は無いが家の者が持ってくると言って、物置(布団部屋)に居残り(監禁)になります。そして夕方、客が来て忙しくなると、佐平次は布団部屋を抜け出して座敷に上がり「客あしらい(幇間)」を始めます。宴会を盛り上げるお調子者をやるわけです。これが実に見事で、客はおお喜び。佐平次は宴会が終わると布団部屋に帰るので店の者も文句を言えず、数日後には客から、あの男を呼んでくれと指名が掛かる始末。居残りの「イノどん」誕生です。ついに店の若い衆(太鼓持ち)の出番が無くなってしまい、お祝儀も佐平次に集中してしまうので、困った店主から宿代は後で払ってくれれば良いし、お金を渡すから帰っておくれと頼まれる始末というわけです。
なんと荒唐無稽な話かと思いますが、古今亭志ん朝や三遊亭圓生の名人芸にかかると非常なリアリティで迫って来ます。ちょっとこれは並の落語家には難しい演目かもしれません。人生かくあるべし、人生楽しまないと損、というテーマが伝わってきます。まるで純文学のようなまっすぐなメッセージです。シンギュラリティの時代、ゲームチェンジの激変の時代でも普遍性を持ったメッセージです。
ブレーメンの音楽隊
久々に「居残り佐平次」を見て管理人が思い出したのは不思議なことに、グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」です。動物たちが力を合わせて人生を切り拓いていく話です。無理筋に思えるようなことでも、仲間と協力して乗り越えちゃおうというわけです。無理筋を乗り切ってしまうところが、「居残り佐平次」と「ブレーメンの音楽隊」の共通項なんですね。それは、逆境に負けず、明るい気持ちと、知恵と、仲間の強力で、つまり人間力で乗り切るということなんですね。これって、シンギュラリティを乗り越える場合にも使える手法じゃないかと思うわけです。
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