技術的失業

われわれはいま、新しい病に憑りつかれている。おそらくは読者が名前も聞いたことがないような病だが、今後数年のうちにいやというほど耳にすることになるだろう。それは「技術失業」という病気である。労働力を節約する手段が、その労働力の新たな活用先を見つけるペースを上回って次々に発見されていることがこの病気の原因である。ジョン・メイナード・ケインズ(1930年)

※wiki 解説

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技術的失業とは、1930年のケインズの論説「孫たちの経済的可能性」で予言された社会状況で、将来の技術革新によって、「労働の使用を節約する手段の発見が、その労働の新しい使途を見つけるよりも速く起こるために生じる失業」とされています。

このケインズの論説は「1939年コンピューターの発明」よりも前になされていることがポイントです。コンピューターにより「労働の使用を節約する手段の発見」は加速度的に増加していますが、「労働の新しい使途を見つける」のは人間ですので、両者の差は開き続け、技術的失業は加速し続けているのです。

※ネット配信「孫たちの経済的可能性」訳=山形浩生
https://genpaku.org/keynes/misc/keynesfuture.pdf

※書籍版、ケインズ説得論集(孫たちの経済的可能性を含む)

ケインズは、技術的失業は一時的なもので、長期的には人類は経済問題を解決すると予言しています。ケインズは、先進国の生活水準は2030年には、100年前の4倍から8倍も高くなっていると予言しました。さらにまた、「大きな戦争や人口の極度の増加がないとすれば、経済問題は百年以内に解決するか、少なくとも解決が視野に入ってくる」と予言しています。労働量も4分の1から8分の1で構わないことになりますが、「1日3時間労働や週15時間労働」をすることで道徳心を満足させる試みが行われるだろうとも予言しています。面白い論考ですね。

この100年のアメリカの購買力平価GDPの推移をすぐに調べることはできませんでしたが、1980年から2018年までの38年だったらネット記事がありましたので、御紹介します。

※世界経済のネタ帳(出典 IMF – World Economic Outlook Databases )
http://ecodb.net/country/US/imf_gdp.html

これによると、たった38年で、2862ドルから20412ドルに増加しており、倍率で7.13倍です。ケインズの予想を大幅に超えて経済が拡大しているのです。それでも、全然1日3時間労働は実現していませんね。収入も増えたけど、消費も増えているからなんですね。

21世紀の技術的失業も、「労働の使用を節約する手段の発見が、その労働の新しい使途を見つけるよりも速く起こるために」生じることになりますが、生産性革命、AI革命の特徴は、人類を知的労働からも解放して、結局人類は働く必要が無くなる可能性を秘めているんですね。技術的に失業して、新しい就職先も無い。働く必要も無い「かもしれない」という特徴があるんですね、21世紀は。

ですから、21世紀の技術的失業の場合は、新しい仕事を探すのではなく、「人類は遂に仕事をする必要が無くなったということを悟り、仕事をしないで生活する方法を模索する」という対応が必要になるかもしれないのです。


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