1989年、ポーランドの民主化と混乱を経験して、モルガンスタンレーやグーグルで人材育成や組織開発をしてきたフェリクス・グジバチさんの「ニューエリート」第一章を読みました。当サイトの問題意識と非常に近い内容です。
著者のグジバチさんは、第一章「2020年代の成功者とは?」の冒頭で問いかけます。Are you ready to get fired? クビになる準備はできていますか?社会はどんどん変わっていくので従来の仕事はいつか成り立たなくなりますよ、と語りかけています。1800年代のアメリカで天然氷を切り出して世界に販売する仕事がありましたが、それが、製氷機械を使って工場で氷を作る新規参入者に淘汰され、それもやがて、家庭用冷蔵庫の発明により全滅したということです。このような破壊的イノベーションの速度が飛躍的に向上しているのが現代社会というわけです。
グジバチさんによると、ひとの仕事はWORK1.0から3.0まで、次のように変わっていきます。
働き方 | 世の中 | 求められる資質 |
---|---|---|
WORK1.0 | プロダクトエコノミー(生産経済) | 勤勉さ、体力、服従 → 蒸気機関や内燃機関によって必要性が低下した。 |
WORK2.0 | ナレッジエコノミー(知識経済) | 知能、服従 → コンピューター、機械学習によって必要性が低下した。 |
WORK3.0 | クリエイティブエコノミー(創造経済) | 情熱、創造性、率先 → 体力や知力に関わらない能力が要求される。 |
グジバチさんの日本社会に対する観察眼が鋭くて驚きました。グジバチさんの言葉を引用します。
「これは個人的な感想ですが、今の日本は江戸時代となんら変わっていません。お上が決め、それを各藩で動かす。今はそれが役人になり、地方自治体、天下り先が生き延びるようにプランニングされています、ですから、地方の長も多くが官僚出身です。」
日本の大手民間企業は「三公社五現業」から仕事を貰って護送船団で守られて調整型のビジネスをしてきたので、21世紀の破壊的イノベーションに対応できていないというわけです。いま世界で成長している企業は、グーグル、フェイスブック、ウーバー、エアビーアンドビーなど、新しい業界をつくり、競争が無い市場でナンバーワンになっている企業です。
新しい価値をつくり出すために、本業以外のことに手を出す試みが必要です。グーグルでは「20%ルール」と言って、就業時間の20%の時間で好きなことをして良いという仕組みを採用しているそうです。それが本業をよりクリエイティブにし、新しい仕事のタネになったりすることもあるというのです。この場合、門外漢であるとか初心者であるということが強みになるのです。社外のコミュニティー(交友関係)も武器になり得るということです。
グジバチさんによると、新しい仕事の基準は、「自己認識」「自己開示」「自己表現」を通じて行われる自己実現=他者貢献が必要になるということです。そのために重要なことは、「仕事で自分が出しているアウトプットにプライドがあるか」、「アウトプットを出すまでのプロセスを楽しんでいるか」という事だそうです。
ベーシックインカムの時代に、働かなくても良い時代に、成功者とみなされるのは、次のような人々になります。お金は成功の指標から外れることになります。
「大きな問題を解決できる人」
「コミュニティをつくれる人」
「社会貢献をしている人」
「フォロワーが多い人」
旧エリートとニューエリート
旧エリート | ニューエリート |
---|---|
固定化された地位 | 持続的に成長する |
有名大学や大学院卒業 | 豊富な学習歴 |
有名会社に入り一生安泰 | 自分がやりたいことややるべきことを追求 |
金融資産を保有 | 人間関係資本や変身資産(変化を恐れない力)を保有 |
上からの指示に従った仕事が早くて正確 | 新しい枠組を作る |
立身出世や名誉やステータスが動機 | 楽しいからやっている他者貢献 |
誇示的消費 | ミニマリズム(最小限主義) |
同窓会などの限定ネットワーク | 多様性に富んだ交友関係 |
スーツ姿 | wear something |
計画主義 | 学習主義 |
勤勉 | 情熱 |
服従 | 率先 |
安定 | ムーンショット(大ホームラン) |
会社に仕える依存する | 会社をうまく活用する |
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