2014年のベストセラーですが、改めて読んでみました。新書という形式のため、細かい議論はできないのですが、逆に結論だけが浮かび上がってくることになり、驚いてしまいます。各章の読解を御案内致しますので各自読み直してみて下さい。
第一章、資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
経済成長という信仰「成長教」は、歴史の曲がり角に来ているが、企業も政府も、それを認めようとしない。過去600年以上にわたる利子率の推移を見ると、利潤率=利子率が極端に低い状態は「利子率革命」が起きていると評価できる。社会・経済システムの大変革が起きているにもかかわらず、アメリカは「電子・金融空間」を創出し新たな投資先を提供し、量的緩和策によって、資本主義経済の延命策を実施しているが、それはバブルを大きくするだけであり、そのバブル崩壊のツケは結局一般国民が払わされることになるのだ。
第二章、新興国の近代化がもたらすパラドックス
先進国の利子率が低下して、過剰となったマネーの行き先は新興国への設備投資であった。それにより、新興国の近代化は歴史上前例の無いスピードで進行した。需給に基づく価格決定とは一線を画する、資源食糧価格の高騰である「価格革命」も発生した。グローバリゼーションにより経済格差も拡大し、国境を越えて先進国内部に進展した。バブルとその崩壊もグローバル化し巨大化の一途をたどっている。中国のバブルもやがて崩壊するだろう。利子率の低下という曲がり角に直面し、資本主義システム内部の覇権交代はもはや起こり得ない。
第三章、日本の未来をつくる脱成長モデル
投資から利潤を得る資本主義の成長拡大モデルは、世界中の「空間」に投資し終わった時に臨界点に達する。グローバリゼーションで世界中の投資先に資金が行き渡り、利益率が低下しゼロ近辺に至ることは「資本主義の最終局面」を迎えていることを意味する。ゼロ金利は資本主義卒業の証である。世界で初めてこれを手にしたのが日本である。利子率=成長が無いことを認識し、成長を求めない「脱成長」の経済社会構造を創出していく必要がある。それは中世から近代への転換時と同様に、当代の知性を総動員して取り組むべき課題である。
第四章、西欧の終焉
ギリシャ財政破綻に端を発する欧州危機は、単なる経済危機ではなく、EUという枠組みによる主権国家システムを超えていこうとする試みの挫折である。ヘドリー・ブルは「国際社会論」で普遍的政治秩序を目指す「新中世主義」を提示したが、中世キリスト教会の代わりに、欧州統一を理念とした新中世主義の試みが行われてきた。それが利子率革命により挫折するとき、ブルが示唆した「非歴史的選択肢」というものがクローズアップしてくる。それがどのようなものか、ブルも提示していない。
第五章、資本主義はいかにして終わるのか
資本主義は中心国(先進国)が周辺国(新興国)に投資して蒐集することにより利益を上げるシステムであったが、地球上全ての地域に投資が行き渡り、蒐集するものが無くなってきた。それはゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレを意味する。資本主義は、永続型資本主義から、バブル清算型資本主義へと変質してきている。中国バブル崩壊によるハードランディングか、成長を前提としない「定常状態」を各国政府が目指すソフトランディングか、21世紀の我々の手に委ねられている。世界で最も早くゼロ金利に突入した日本はそのリーダーシップを執るべきなのだ。「脱成長という成長」の道を真剣に考えるべきである。
---
改めて読み直すと、非常に明確に、現在の世界経済の状況が再確認できると思いました。20世紀には金利があったのに、どうして21世紀には金利が無くなったのか、今後人類はどの方向に進めばよいのか、不明確ながら、ぼんやりとした方向性が提示されています。「デフレ脱却」とか「株価上昇」などの20世紀的な価値観は既に無くなっているのだから、それは諦め、それを前提としない経済社会システムを模索すべきという主張なんですね。
コメントを残す