Nature Biotechnologyの2016年8月号に、エピゲノム編集を可能にする技術が発表されました。クリスパーキャス9から遺伝子切断活性を除いたdCAS9にDNA脱メチル化酵素TET1を追加したものを合成することに成功したのです。この技術ではDNAを編集するのではなく(DNAは切断せず)、DNAスイッチ(エピゲノム)を編集することができるようになります。
エピゲノムというのは、epigenome つまり、ゲノムの上、遺伝子以外の要素ということです。具体的にはDNAにメチル基(CH3)が結合すると、DNAに転写因子が結合できなくなり、遺伝子の発現が抑制される状態となり、遺伝子がオフになっている状態になります。ですから、メチル基のことを「遺伝子スイッチ」と呼ぶことがあります。この遺伝子のスイッチを自由自在に操作できるようになるという論文が発表されたのです。遺伝子スイッチは細胞分化の過程でも操作されていますから、これを自由に操作できるということは細胞の初期化も自由自在になる可能性がありますね。エピゲノムを研究する学問が、エピジェネティクスです。
シンギュラリティ革命は、デジタル革命であると同時に、バイオ革命でもあります。デジタル技術とバイオテクノロジーが相乗効果で急速に進化します。それは農業生産性の革命をもたらします。衣食住、日常生活のあらゆる場面で、従来の常識が通用しない社会が到来することになります。
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