米国カリフォルニア州のAIチップ設計企業cerebrasは、wafer-scale-engine(WSE)という史上最大サイズの計算チップを発表しました。ウエハサイズの計算エンジンという意味です。現在主流の12インチ(300ミリ)シリコン単結晶ウエハから最大サイズの正方形を切り出して、それを1つのチップにしてしまおうという驚くべき発想です。それは215ミリ四方のウエハに1.2兆個のトランジスタが搭載されているということです。このチップで、増大するディープラーニングの計算に対応しようという作戦です。計算チップのサイズを大きくする作戦ですから、微細化以外の手段であり、モアザンムーアの一種ということになります。
なんでディープラーニングするのか?それは勿論、人間の知的作業を代替するためです。画像認識、音声認識、意味認識などです。
OpenAIが最近発表したレポートによると、2012年から2018年の6年間に、最大モデルの機械学習に使用された計算量は30万倍に増加したということです。つまりAIコンピューティングは、ムーアの法則よりも2万5千倍速い速度で成長しているということになります。AIの計算需要は、3.5ヶ月ごとに倍増しているのです。いわば「ディープラーニング革命」「ディープラーニング爆発」とでも呼べるような状況が今まさに進行中なのです。
この貪欲な計算需要は、今現在、AIアプリケーションやアイデアが、コンピューターの計算能力によって制約されていることを意味します。ディープラーニング用の計算機の性能を上げれば上げるほど、新しいAI技術の成果を上げることができる状態にあるということです。計算機の性能が、AI開発のボトルネックになっているということです。ディープラーニングは非常に計算集約的な技術なのです。
WSEは過去最大のグラフィックス処理チップよりも56倍以上大きく、チップメモリが3千倍、メモリ帯域幅が1万倍以上の能力を有しており、従来数ヶ月掛かっていた最も複雑なAI情報処理を数分間で終える能力を持っています。
この技術が完成し実用化した時に人類の生活にどのような影響を及ぼすのか、ちょっと想像もつきません。少なくとも、スマートスピーカーや自動運転車の性能が飛躍的に向上することは間違いないところです。
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