ラザフォードの実験

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当サイトでは、シンギュラリティを乗り越えるために原子物理学の科学史を学ぶことが大切だと考えています。それは半導体の内部で何が起きているのかを学び、半導体の性能向上速度に関するムーアの法則の進む道筋を理解することを助け、日常世界とはかけ離れた未知の世界への冒険心を刺激することだからです。

ニュージーランド出身の物理学者、アーネスト・ラザフォードは、放射線を研究し、ヘリウム原子核の放出であるアルファ線と、電子の放出であるベータ線と、電磁波であるガンマ線を発見し、これらが原子核の放射性崩壊により生ずることを突き止めていました。

ラザフォードは、研究室の助手ガイガーと、指導学生マースデンに、金箔の前にラドンを置いてアルファ線を照射する実験を指示したところ、1909年の実験で、ほとんどのアルファ線は金箔をそのまま通り抜けるが、約8000個に1個の割合で真後ろに跳ね返されることが発見されたのです。

このときのラザフォードの驚きは次のように述懐されています。

「もし、一枚のティッシュペーパーめがけて一五インチ砲弾を撃ち込んだところ、それが跳ね返されて戻ってきたとしたら、あなたはそれを信じられますか」

ここでティッシュペーパーというのは極限まで薄くした金箔のことで、15インチ砲弾というのはアルファ粒子のことです。このような感想が出てくるということは、ラザフォードが原子の構造と実験装置の関係について四六時中考え続けていたことを示しているでしょう。

ヘリウム原子核HE2+は、陽子2個と中性子2個から成る重い粒子です。陽子や中性子の質量は電子の1836倍ですから、ヘリウム原子核の重さは、電子の約7344倍ということになります。そんな重い高速粒子が真後ろに跳ね返されたということで、ラザフォード達は驚いてしまったわけです。

8000個に1個しか跳ね返されないということで、「原子はスカスカで、原子核は非常に小さい」ということが分かりました。

He2+が真後ろに跳ね返されたということで、原子核とHe2+の間に斥力(反発力)が働いており原子核は正に帯電していることが分かりました。

ラザフォード達は原子核を発見したのです。それは1904年に長岡半太郎博士が提唱していた土星原子モデルに類似する構造でした。ラザフォードは実験結果を1911年に『α および β 粒子の物質による散乱と原子の構造』という論文にまとめて発表しました。これは原子核物理学の扉を開く画期的な論文でした。

※参考書籍

山本義隆、原子・原子核・原子力わたしが講義で伝えたかったこと


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