Newspick副編集長佐藤留美さんの「仕事2.0」読了しました。「お金2.0」「資本主義2.0」「サラリーマン2.0」など、このところ「いわゆる2.0本」が沢山でてきましたね。「社会変革の大波が来るぞ!」なんとなくそういうイメージがこういう風潮の根底にあると思います。これからもどんどん増えるでしょう。それでもまあ、時間の許す限りそういう本に目を通すと良いと思います。少しでも、ひとつでも気付くことがあれば大収穫だと思います。
この本で佐藤留美氏は、日本の労働生産性が先進7か国で最低となっており、OECD加盟35か国でも20位に甘んじている原因を次のように分析しています。
1、経営者がビジネスモデルを変えず、稼ぐ力が弱い。
2、多様な人材を活用できないのでイノベーションが起きにくい。
3、出世に年功要素が払拭できないため、若手のやる気が削がれ組織への愛着が低い。
4、給与に時間給の要素が消えないので、残業前提の働き方が根強く残る。
5、従業員の解雇がしにくいことから、余剰人材が多く、社内失業者が460万人以上いる。
6、企業年金や退職金の設計などが理由で、転職することへのハードルが高く労働市場が流動化しない。だから有用な人材をスカウトしにくい。
7、業務縮小に伴う人材整理がしにくく、衰退産業や事業に人が張り付いたまま、成長産業への人材移動がされにくい。
8、先進国のなかでも社員をトレーニングする教育予算が極めて低く、仕事のスキルが向上しない。
9、ダイバーシティが進まず、女性やシニア人材、外国人の活用ができていない。
10、生産性を高めるシステム投資が進まない。あるいは、その効率が悪い。
※参考URL=公益財団法人日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/
生産性を高めるためにも、働き手の側も柔軟な対応が求められています。グーグルの人材開発のリーダーを務めていたピョートル・グジバチ氏は「ニューエリート」という本の中で、旧エリートとニューエリートの違いを次のように対比させていたということです。
旧エリートとニューエリート
旧エリート | ニューエリート |
---|---|
固定化された地位 | 持続的に成長する |
有名大学や大学院卒業 | 豊富な学習歴 |
有名会社に入り一生安泰 | 自分がやりたいことややるべきことを追求 |
金融資産を保有 | 人間関係資本や変身資産(変化を恐れない力)を保有 |
上からの指示に従った仕事が早くて正確 | 新しい枠組を作る |
立身出世や名誉やステータスが動機 | 楽しいからやっている他者貢献 |
誇示的消費 | ミニマリズム(最小限主義) |
同窓会などの限定ネットワーク | 多様性に富んだ交友関係 |
スーツ姿 | wear something |
計画主義 | 学習主義 |
勤勉 | 情熱 |
服従 | 率先 |
安定 | ムーンショット(大ホームラン) |
会社に仕える依存する | 会社をうまく活用する |
なるほど、アメリカのIT企業の経営者がスーツを着ない理由が分かりますね。「俺たちは旧エリートとは違うんだぜ!」という主義主張が込められているというわけです。
著者は、今、VUCA(ブカまたは、ブーカ)の時代に入っていると述べています。VUCAは、つまり、
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
の頭文字を読み上げているものです。もともとは1990年代に冷戦構造の変化を受けた安全保障を考えるための軍事用語でしたが、21世紀に入って、ITバブル崩壊、リーマンショック、超低金利時代、AI革命、RPA革命、生産性革命により、社会全体が変革を受ける認識が広まり、個人の働き方や生き方を考える上でも有効な着眼点を示すビジネス用語として使われるようになりました。
デューク大学のキャシー・デビッドソン教授は2011年に、「米国の小学校に入学した子どもたちの65パーセントは、大学卒業時に、今は存在していない職業に就くだろう」とニューヨークタイムスに寄稿したということです。まさに不確実性の時代を象徴するような認識ですね。
著者は、2000年ノーベル経済学賞受賞のシカゴ大学ジェームズ・ヘックマン教授の「あらゆる学歴の人において、非認知能力が高まれば賃金も高まる」という研究を紹介し、これからの時代には、AIに代替しずらい非認知能力を鍛えるべきであると主張されています。非認知能力とは、「好奇心」「レジリエンス(適応力)」「グリット(突破力)」「倫理」「リーダーシップ」などの人間性を指すということです。好奇心を持って、畑違いの分野でも、どんどん飛び込んで行きましょうと推奨しています。
具体的対策として、「大人のインターン」というものを推奨しています。リストアップされていますので、御紹介します。
https://loandeal.jp/
http://nanasan.essence.ne.jp/
https://sankak.jp/
https://ridilover.jp/
http://crossfields.jp/
https://www.tigermov.com/
この本は、「具体的にどんな仕事をしろ」という答えを示すものではありませんが、「どのような方法で考えるべきか」ということは示唆してくれる本です。そういうヒントが沢山提示されています。定年5年以内とかの勤め人の方であれば「逃げ切れる」かもしれませんが、それ以外の全ての働く人に推奨できる本ですね。