計算機屋かく戦えり

シンギュラリティを乗りこえるために、コンピューター(チューリングマシン)の仕組みと歴史を知ることは大事なことです。月刊アスキーの連載に加筆され出版された「計算機屋かく戦えり」は日本のコンピューター黎明期の激闘の歴史を学ぶことができる良書です。残念ながら紙の書籍は絶版ですので、図書館で探して読んでみるか、古本屋を探すか、電子書籍版でお読みになることを推奨します。

日本は、「ヘンミ計算尺」と「タイガー機械式計算機」で世界を席巻し、世界初の小型リレー式計算機「カシオ14A」や、世界初のオールトランジスタ計算機「シャープCS10A」や、世界初のマイクロプロセッサ「インテル4004」が、全部日本人の手によって開発されたことは驚く他ありません。戦後から80年代まで、日本はイノベーションの宝庫だったのです。

日本初の真空管式コンピューターFUJICの開発者フジフィルムの岡崎文次氏の言葉を引用します。「基本的にコンピュータは電気じかけの自動ソロバンなわけです。だから、まずはソロバンの珠に相当するフリップフロップを作るのです。それができたら、その珠をはじく論理回路をつくってやればいい。ほかの人が想像するほど、難しいことではなかったと思います。」

この感覚が非常に大事です。大事なのは原理であって、デジタル回路はそれを実現するための道具にすぎないわけです。だから、半導体素子は何でも良いわけです。半導体である必要すら無いわけです。それで、ソレノイド式とか、パラメトロン式の計算機も開発されたわけです。パラメトロン式コンピューターは世界中で日本だけで開発製造されたものだそうです。当時の日本人の根性には本当に驚くばかりです。

当時の日本人は、見たことも聞いたこともない、日本には影も形もない電子計算機の仕組みを、わずかな英語の論文から貪るように吸収して、自分の頭で考えて、次から次へと実際に動く装置として開発していったんですね。このような激闘を、今や、日本より中国や台湾や韓国で盛んにやっているんだと思うと少し寂しくなります。