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かつて知識は秘密にされていた

野口悠紀雄さんの「知の進化論」を読んだところ、上記のフレーズが第一章のテーマになっていました。物心ついた時からwikipediaに親しんでいる21世紀の子供たちには意外なことかもしれません。

ユヴァルノアハラリさんの「ホモデウス」に描かれた「データ至上主義、データ教」の教義と似たような考え方が「知の進化論」を突き動かしてきたのかなと思いました。

知識人たちは自分達の権益を守るためにひたすら知識を隠し通してきました。旧約聖書はヘブル語、新約聖書もギリシャ語で書かれていましたが、4世紀に古代ローマ帝国のラテン語に翻訳され、一般の人々が聖書を英語で読めるようになったのはイングランド王ジェームズ1世が「欽定訳聖書」を刊行した1611年以降のことだそうです。様々な職業ごとの知識はギルドによって独占され、聖書の教義は聖職者が独占し、学問は大学が独占し、それぞれ門外不出の措置が採られていたのです。

知識の爆発(情報革命)は、活版印刷技術の発達によって始まりました。中国唐代に木版印刷が始まり宋代には木版の活版印刷も普及しましたが、これとは独立に欧州では15世紀にグーテンベルクによる金属活版印刷が発明され、ドイツ語の聖書(グーテンベルク聖書)が出版され、大量に流通し始めたのです。これが、教義を独占してきたカトリック教会への批判を行う宗教改革の武器になりました。

知識を独占してきたギルドや大学から、知識を一般市民に開放したのは、ダランベールらフランス百科全書派の出版活動でした。百科全書第1巻は1751年に刊行され、1780年までに全35巻が完結したのです。知識を市民に開放し、専制君主と聖職者の横暴を白日の下にさらし、1789年のフランス革命バスティーユ襲撃事件へと繋がる原動力になりました。

この本には記載されていませんが、19世紀にも電気通信や無線通信や新聞事業の展開で情報革命は進行し、20世紀にインターネット通信の発明により情報革命は更に加速しました。野口悠紀雄氏によると、インターネットは、パケット通信と、htmlという2つの技術によって支えられているということです。パケット通信は、情報を細切れのパケットに分割して送ることにより、通信線を専有せず、空いている時間に情報を送ることができます。htmlは、文章を見やすくデータ化することができ、ハイパーリンクという別のwebページにジャンプする機能があり、情報閲覧の効率が飛躍的にアップしました。

最大手だった百科事典ブリタニカは、マイクロソフトのCD-ROM百科事典エンカルタに駆逐され、やがて、無料閲覧できるwikipediaが、これを駆逐しました。情報はどんどん拡散し続けています。著者はそのような時代に、「大学の教育、入試体制が、IT時代に追いついていない」のが問題であると提言しておられます。大学の存在意義や、大学入試の在り方も問われているというわけです。2011年京都大学のネットカンニング事件に付随して、「例えば非常に長い英文を読ませて感想を書かせるような問題なら、IT機器での対応は難しいでしょう」という問題提起をされていて、なるほどなあと感心しました。知識を得る方法も、wikipediaを読んでお終いにしてしまうのではなく、自分自身の頭で考えて知識を消化することが大事だと思いました。wikipediaに書いてないことが大事なんですね。

情報革命は、今も続いていますし、どんどん拡大していくことでしょう。人工知能の進化により、知識の在り方が変わると述べられています。「知識を得ることそれ自体に意味がある」ということです。日常生活に必要な知識は人工知能に任せて、人間は自分達の楽しみのための知識探求に専念できるかもしれないと予測しておられます。自分が楽しいと感じる体験や知識は何か、それについて今から留意しておいた方が良いかもしれません。