資本主義の終焉をより良く理解するためには、資本主義の起源を理解する必要もあるでしょう。
古来、ユダヤ教、キリスト教では利子を取ることは禁止されていました。
旧約聖書、出エジプト記、22章25扁「 あなたが、共におるわたしの民の貧しい者に金を貸す時は、これに対して金貸しのようになってはならない。これから利子を取ってはならない。」
新約聖書、ルカ福音書、6章35扁「しかし、あなたがたは、敵を愛し、人によくしてやり、また何も当てにしないで貸してやれ。そうすれば受ける報いは大きく、あなたがたはいと高き者の子となるであろう。いと高き者は、恩を知らぬ者にも悪人にも、なさけ深いからである。」
これは、市中で広く高金利による貸付行為が行われていたことの裏返しでしょう。高金利の非倫理性を戒めた宗教的、倫理的な教えなんですね。
西暦325年、第1回ニカイア公会議で、聖職者に対してウスラが禁止されました。ウスラとは、月利1パーセントを超える利息の徴収のことです。
https://en.wikipedia.org/wiki/First_Council_of_Nicaea
> 17. prohibition of usury among the clergy
789年カール大帝の「一般訓令」で一般信徒にもウスラ禁止が拡大されました。1179年の第3回ラテラノ公会議では、ウスラを取った者の破門が宣言されます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Third_Council_of_the_Lateran
> Canon 25 excommunicates those who engage in usury.
中世では時間は神の与える物であると考えられ、スコラ学派のトマス・アクィナスは、物の返還に加えて物の使用の対価を求めることは二重徴収になるので認められないと説明しました。複雑な理屈を弄していますが、要するに、利息取引に潜む非倫理性・非信仰性に着目して、キリスト教会は禁止したと思われます。利息を払う位なら教会に寄付しろという意味合いもあったでしょう。
しかし、金銭の貸し借りに伴う対価として利息の契約をすることは根強い需要があり、貨幣経済の拡大に伴って裏取引として利息取引の拡大が無視できなくなり、1215年第4回ラテラノ公会議でユダヤ人の利子が容認されることになりました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Fourth_Council_of_the_Lateran
> Canon 67: Jews may not charge extortionate interest.
資本主義の起源は、12~13世紀説と、15~16世紀説と、18世紀説があるそうです。
12~13世紀説は、上記のキリスト教会による利子容認により資本主義経済が始まったと評価しています。
15~16世紀説は、カールシュミットが「海と陸と」で描いた海賊資本主義を国家が支援したことが起源であると主張しています。
18世紀説は、蒸気機関などの産業革命により、工業化が進展したことが資本主義の起源であると主張しています。
いずれにしても、利子が利子を生み、資本が指数関数的に増大することを資本主義と定義しているわけです。土地も生産手段も、すべて私有財産化され、それが金銭で取引されながら、価格が常に上昇していく様が観察されました。価格の上昇は年間の上昇率に換算して利回りになるのです。単なる決済手段であった貨幣が、利子の発見・承認によって価値の主役に置き換わり、資本主義の無限競争が始まったのです。
※参考書籍
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