ナメクジの生存戦略に学ぶ

ユニークな研究者の一般向け書籍、思わず引き込まれました。その第五章「ナメクジの生き方」にある、「ナメクジの生存戦略」が非常に参考になると思いました。シンギュラリティ対策に役立つ考え方と思いましたので、ご紹介したいと思います。

『できるだけたくさんの卵を残したい』・・・ナメクジは外科的手術を受けるなどしてダメージを受けると、直後に産卵をするそうです。ナメクジには器官の再生能力が備わっていますが、再生出来なかった場合の保険として、体内にキープしている他固体の精子の有効活用を図っていると解釈できます。ナメクジの生存戦略として、とにかく沢山の卵を産むわけです。人間だと、「この配偶者の子孫は残すべきか」「経済状態が悪いので子供を育てられるだろうか」などとクヨクヨ考えてしまうのですが、ナメクジに言わせればそんなことは無駄な考えです。「なにも考えずに子供を産みなさい」というアドバイスですね。

『宵い越しのエサは持たない』・・・著者の研究室ではナメクジのエサを3〜4日に一度与えているそうですが、ナメクジは眼の前にあるエサを全てその日のうちに食べてしまうそうです。競争して食べすぎてしまうということでもなく、一匹で飼育しても同じ様に食べてしまいます。これは我々人間に当てはめれば、お金を即時に全部使うということを意味するでしょう。「今やりたいことに全力で取り組め。全財産をつぎ込んでやり尽くせ。」ということになります。子供の教育であれば、小学校中学校の段階でも、どんどん様々な体験をさせようということになります。大学の学費を心配して中高時代の勉強をおろそかにしてはダメということですね。大学生だって入ったお金は即時に全部使って、外国旅行や高価な本でも、合宿でも、全力で楽しみましょう。「今を生きろ」ということでしょうか。

『殻を失って得たもの』・・・ナメクジは進化の過程で殻を失ったと考えられていますが、ナメクジ研究者から見ると、殻が無いことによるメリットが沢山あるというのです。殻を造るためのカルシウム摂取が不要になり、殻の維持コストから解放され、殻があったら入れないような小さな隙間に自由に入れるようになったのです。人間で言えば、大きな家より、維持費の安いスモールハウスで、生活の小回りが効いている状態と言えるでしょう。ナメクジは究極のミニマリストかもしれません。

『ゆっくりには意味がある』・・・ナメクジの移動速度は1分間に18センチ、ヒトの体長に換算しても時速648メートルに過ぎないそうです。ナメクジは常に触覚で周囲の化学情報を検知して慎重に進んでいるのだそうです。これは目立たぬように慎重に生きる、と評価することが出来るんだそうです。動くものを検知する捕食者から逃れることができているのです。人間で言えば、「スローライフ」「瞑想」を実践しているようなことになります。シンギュラリティの時代を前にした我々人類も、旧来の進んできた方向性に基づいて、着実に歩んでいく必要があるでしょう。「データ中心主義」「データ資本主義」などの新しい価値観が台頭する可能性が指摘されていますが、「新しい価値観を疑い」、温故知新でゆっくりと進んでいくことも大事だよと教えてくれているようです。

どうでしょうか、意外にもナメクジの生存戦略が、21世紀の人類の生き方にも知恵を授けてくれているように思いました。

第六章「愛と青春のナメクジ研究」に記された著者の体験記も非常に参考になると思います。これからAI革命で人の仕事がどんどん不要になっていった場合に、何をすればよいのかという問題のヒントになると思います。著者が一番楽しいと感じることは、「新しい事実を自分が最初に見つけた瞬間」だといいます。題材は何でも良いのです。自分が興味のある問題を自分で考えて、新しい発見に気づくこと。それがとても楽しいことですよと言っておられます。別に研究じゃなくても、旅行でも読書でもスポーツでも何でも良いでしょう。どんな題材でも興味を持った事項についてどんどん動いていくことが大切だということでしょう。そして動いた結果として、新しい感動が得られるはずですよと教えてくれているのです。

※参考記事

サバイバル生活(節約作戦)
データ資本主義

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