常温超電導

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2020年10月、アメリカのロチェスター大学のRangaDiasらの研究チームが室温超電導物質を発見し、論文がNature に掲載されました。260万気圧ですが、炭素質水素化硫黄(Carbonaceous sulfur hydride)が15℃で超電導状態と観測されたということです。ちなみに大気圧下における超電導物質の最高温度記録は、銅酸化物でマイナス135℃です。

常温超電導のアプリケーション

こちらの動画では、室温超電導の応用として、次のものが紹介されています。

  • 送電線の電気抵抗により失われている年間2億メガワット時(MWh)を節約できる送電網(米国で年間200億ドルの節約)
  • 浮揚した列車やその他の輸送手段を推進する新しい方法
  • MRIや心磁図などの医用画像およびスキャン技術
  • デジタルロジックおよびメモリデバイステクノロジー用のより高速で効率的な電子機器

研究チームは、現在、より低圧力下で超電導動作をする化合物の探索に力を入れているそうです。それにより、経済的に超電導物質を大量生産することができ、日常生活の応用も促進される可能性があります。水素化合物は超電導物質のパラダイムシフトを引き起こす可能性があると見られています。

高温超電導物質探索の歴史

この室温15℃が如何に画期的かは、上記の図を見れば分かります。150Kというのはマイナス123度、液体窒素でもマイナス196度ですから、今まで実用化には程遠い状態でした。15℃でなくても、家庭用冷蔵庫で実現可能なマイナス20度以上で、大気圧での超電導が実現できれば実用化が一気に進む可能性があります。

常温超電導量子ビット

常温超電導が実現すると、超電導量子ビットも常温で動作し得ることになります。それは常温量子コンピューターの開発を促進させる可能性を秘めた技術ということになります。

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ジョセフソン素子

常温超電導と聞いて思い出すのはジョセフソン効果とジョセフソン素子、ジョセフソンコンピューターです。超電導体を絶縁体で挟むとトンネル効果により電流が流れるというものですが、この時のスイッチング速度が通常のシリコン半導体よりも格段に速いため、これを用いた論理回路の研究が続けられています。ジョセフソン素子が常温で使えるようになったら、この研究が促進されることになります。ジョセフソン素子を使って機械学習したらAIの性能が飛躍的に向上するかもしれません。

論文撤回

2022年9月26日にNature誌は論文撤回を発表しました。論文で用いられたデータ分析手法に疑問があり明確化することが出来なかったということです。

https://www.nature.com/articles/s41586-022-05294-9

これは残念なニュースですが、高温超電導の研究は止まることなく世界中で継続されています。

ランタン水素

2019年にドイツのマックスプランク研究所の研究で、170ギガパスカル(約167万気圧)という高圧下で、250ケルビン-23度℃で超電導を示すランタン水素LaH10を発見しました。-23度といえば家庭用冷蔵庫でも実現可能な温度です。

Drozdov, A.P., Kong, P.P., Minkov, V.S. et al. Superconductivity at 250 K in lanthanum hydride under high pressures. Nature 569, 528–531 (2019). https://doi.org/10.1038/s41586-019-1201-8


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