江戸時代中期の異色画家「伊藤若冲」ご存知ですか?京都の青物問屋の長男に生まれ、23歳の時に父親の急逝を受けて問屋を継いだが、独身を貫き、酒も宴会も好まず、独学で絵画を学び続け、中国宋元画の模写に没頭し、40歳の時に弟に家督を譲って隠居してしまいます。
平均寿命が40歳だった江戸時代には、40歳は「初老」だったそうです。それから84歳で亡くなるまで画業三昧の日々を送るのです。隠居料を受け取っていたのか、三軒の家を持ち、うち二軒をアトリエとしてつかっていた、悠々自適な生活でした。これは画料を当てにせずに暮らせるということを意味していましたが、次第に若冲の絵は人気が出てきて求める人が増えていきました。当時若冲は、絵一枚につき米一斗分の代金を貰っており、「斗米庵」「米斗翁」と自称していたそうです。親交のあった「売茶翁」に近い心境だったかもしれません。
若冲はお金持ちだったわけですが、21世紀のシンギュラリティ革命において、ベーシックインカムを受領する人々は、この隠居料をもらっていた若冲と立場は似ているかもしれません。好きなことに打ち込む人生ができるのです。問題は、「好きなことが無い」という場合ですね。これは大問題です。
20世紀までは、「どうやって身を立てるか」が大問題でしたが、21世紀には、「どうやって隠居するか」が大問題なんですね。好きなこと、やりたいことが無ければ、毎日つまらなくて絶望してしまうでしょう。やりたいことが無い場合、受動的な趣味にはまってしまうことでしょう。ゲームとか、SNSとかで、喧嘩論争をして日々を送るのでしょうか。
若冲は植物の虫食いや病葉も忠実に描き込みました。
また、象と鯨を一緒の画像の中に登場させる壮大なインスピレーションも描き込んでいます。
若冲の「虫食い、わくらば(病葉)」や「象と鯨図屏風」を見て、若冲の自由な遊戯を堪能してください。そして自分にはどのような遊戯があるのか、考えてみましょう。
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