新ユーラシア主義

高島康司、グレート・リセット前夜

テレビとか新聞とか、大学の教科書とかを読んでるだけでは得られない知見もあります。

それは裏の取れない「うわさばなし」です。「公然の秘密」という呼び方もあります。アメリカ人ならみんな知ってるけどあえて言わないこと、それでも、我々日本人には理解しがたいことであり、テレビとか雑誌とか普通の生活をしていても得られない知識、なんとかして知る必要があります。アメリカで何年か生活すれば分かるのかもしれませんが、そんな時間はありません。インターネットとか、こういう本で、情報を仕入れる必要があります。

この本では、その知識の片鱗が紹介されています。2021年1月22日のダボス会議のオンラインスピーチでロシアのプーチン大統領が話した内容が紹介されています。それは、行き過ぎた新自由主義・グローバリズムへのアンチテーゼとして、「新ユーラシア主義」が提示されていたのです。

もともとの「ユーラシア主義」は、1917年のロシア革命後に、1920年代に、西欧型資本主義よりも民衆に優しい全体主義を目指すべきと主張された考え方でした。それが、21世紀にブラッシュアップされたのが「新ユーラシア主義」なのです。モスクワ大学政治学部教授アレクセイ・ドゥーギン博士が提唱者です。それぞれの国の文化は独自の価値を有しているので、この文化的な価値を尊重し、それに基づく社会システムを形成すべきだとする主張です。自由民主主義に基づくグローバリゼーションと世界政府の試みを拒否する考え方です。

著者は、グレート・リセットによるグローバリゼーション世界政府の進展でも、新ユーラシア主義の全体主義でもない、自由民主主義の価値観を残した形での社会の持続可能性について、19世紀のアメリカの哲学者ラルフ・ワルド・エマソンの言葉にヒントを求めています。

「地球が大気の柔らかな腕に抱かれるごとくに、私たちは大いなる自然の中で安らいでいる。この大いなる自然が、「統一」、「オーバーソウル」であり、その中で、すべての人間の個々の存在が、他のあらゆる存在とひとつになっている。」

資本主義や消費社会の根底にある物質的欲望の対極にあり、自己の存在を自然との一体感のなかで感じ取る意識とはきっとこのようなものだろう、と著者は言います。グローバリズムと新ユーラシア主義の対決という破局的な方向性ではなく、第三の道を人類が歩んでほしいという切実な願いが込められています。

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