知りませんでした、色素増感が凄い技術だということを。
話は、1873年にH.W.Vogelが色素増感現象を発見したことに始まります。ヴォーゲルは、銀塩写真の改良に取り組んでいました。銀塩写真は、ハロゲン化銀化合物AgXに光が当たると、これが分解し、Agが析出することにより画像が形成されますが、当初のモノクロ写真乾板が紫外線には強く反応するが、可視光には弱い反応しかせず、画像が不鮮明であったことを嘆いていた。ところがたまたま彼が入手した臭化銀写真乾板では、水銀の輝線F線486nmよりもE線546nmの方が感度が高くなっており、その原因を調べたところ、その乾板に含まれていた黄色色素コラリンが写真感光の感度を上げていることを見出したのです。色素によって増強される波長は異なり、これが後日カラーフィルム発明の起源になるわけです。
そして、1967年、東京大学の本多健一と藤嶋昭は、水中に二酸化チタン(TiO2)電極と白金(Pt)電極を置き、TiO2電極に光を当てると水が分解され、TiO2から酸素、Ptから水素が発生するとともに両電極間に電流が生じるという本多藤嶋効果を発見しました。光電効果により発生した電子を効率良くエネルギーとして取り出すことができるようになりました。光触媒も色素増感と同じく、光電効果を増強させる現象です。
さらに、1991年、スイス連邦工科大学のグレッツェル教授は、二酸化チタンにルテニウム色素を添加することにより飛躍的に起電力を増加できることを発見し、色素増感太陽電池DSCを発展させました。酸化亜鉛に光を当てると電子を生じるという湿式太陽電池は従来から知られていましたが、この発電効率を飛躍的に高めることに成功したのです。
2006年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授はルテニウム色素をペロブスカイト化合物に置き換えてペロブスカイト太陽電池PSCを開発しました。この太陽電池は印刷技術を用いて製造できる性質があり、太陽光発電の低価格化に期待が集まっています。
そして、2021年、世界初の固体型色素増感太陽電池がリコーから発売されています。
太陽光発電の発電コストは、2030年に化石燃料発電コストと同程度 7円/kWh まで低下すると予想されています。
太陽光発電のコスト低下に色素増感技術が影響するのです。驚きました。なぜこんな凄い技術がノーベル賞を受賞していないのでしょう。青色LEDが受賞したなら、こちらも当然受賞すべきでしょう。
色素増感を学ぶことにより、「太陽光発電のコストが本当に絶対に低下する」ということを心底理解することができます。生産性革命が本当に絶対に進展するということを認識できるわけです。これがシンギュラリティを乗り越えるために必須の知識となるわけです。
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