「グローバル・タックスが世界を変える」という副題がついた本を読みました。富の偏在と貧困と温暖化や持続性などSDGsを実現するために、あらゆるグローバルタックスの方向性が議論されています。
今年のG7で法人税最低税率を15%以上にするという合意がありましたが、これはグローバル企業のタックスヘイブン(租税回避地)を使った課税逃れ、課税漏れを回避するための方策でした。
ダブルアイリッシュ・ウィズ・ダッチ・サンドイッチ・・・多国籍企業が課税逃れをする手法。アイルランドに実体法人と登記のみ親会社法人の2つを設立し、これを英領バミューダ諸島の法人から管理させ、事業収入を実体法人の所得として計上するが、オランダ法人に特許使用料を払い、オランダ法人は、アイルランドの親会社に特許使用料を支払うことで、各国の課税を回避する手法。各国の税制度と租税条約の穴をついた手法だが完全に合法である。
グローバルタックスの候補・・・タックスヘイブン利用税、外国為替取引税、ポートフォリオ投資税、外国直接投資税、多国籍企業利潤税、グローバル累進資産課税(富裕税)、炭素排出税、プルトニウム放射能生産税、航空連帯税、デジタル課税、ビット税(データ通信課税)、武器取引税、クリーン開発メカニズム税(CDM税、途上国の脱炭素化政策)
政策効果・・・課税により組織や人々の活動や意識を変える効果。グローバルタックスにも温暖化防止やSDGsなどの政策を前進させる効果が期待される。
グローバルタックスの起源・・・19世紀後半、スコットランドのエディンバラ大学の国際法ジェームズ・ロリマー教授が著書のなかで国際政府の財源として国際的な課税の可能性について言及した。
トービン税・・・1970年代に変動為替相場制が導入されて以降、貿易取引以外に、金融取引だけで利ザヤを稼ぐ投機的為替取引が活発化した。そこで、アメリカの経済学者ジェームズ・トービン教授が国際通貨取引に税金を掛け投機的な取引にブレーキを掛けることを提唱した。国連のミレニアム開発目標の財源として国際連帯税が検討された際に為替取引への課税が期待された。
UNITAID・・・2005年にフランスのジャック・シラク大統領が提唱した航空連帯税(出国する国際線運賃に課税、国際連帯税)の税収の使途を定めるために2006年に設立された国際機関。HIVや結核やマラリア対策など国際的な保健衛生の向上などに役立てられています。UNITAIDの財源の6割が航空税で、4割は各国政府やゲイツ財団などからの拠出金で賄われています。日本は2019年1月から国際観光旅客税が導入されましたが、税収のUNITAIDへの支出は明示されていません。ただ、日本も年間約1億円程度の拠出金を支出しています。
UNITLIFE・・・2015年に国連で設立された国際支援プログラム。石油、天然ガス、金、ウランなどの資源採掘業に課税し、その税収をアフリカの子どもたちの栄養改善プログラムに充てる。
新聞やテレビなどのニュースで、法人税最低税率のニュースがあったり、国際連帯税のニュースがあったりしたときに、それは、SDGsやグローバル多国籍企業の問題と繋がっているのだということを考えて頂きたいです。どうして世界がそのような方向性に進んでいるのかということを知る必要があります。各国からの拠出金に頼るのではなく、自らの税収で運営できる国際機関が増えてくれば、それはもう一種の「世界政府」のようなものと言えます。21世紀のグローバル化の時代には、社会問題もグローバル化し巨大化していくので、従来の枠組みでは対処しきれなくなってきているということですね。
コメントを残す