50年ぶり円安の意味

Screenshot of www.smd-am.co.jp

三井住友DSアセットマネジメントさんから驚くべきレポートが出ています。日本円の実質実効為替レートが50年ぶりの円安水準になっているそうです。

※三井住友DSアセットマネジメントのレポートpdf

https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2022/01/irepo220113.pdf

50年前と言えば1ドル360円の貧しい日本の高度成長期の時代と同じですから驚きます。三井住友DSアセットマネジメントさんのレポートでは、外貨建て資産のポートフォリオ比率を考えようみたいな論調になっています。日本円が下がり続けるなら資産防衛で外貨建て資産も考慮すべきという至極当然の考え方です。

確かに、外国通貨の購買力と比較して、50年前と同じ物価水準になっていることが分かります。しかし、この、「円の購買力が低い」ということは、「日本における物価水準が低い」ということと同義です。日本では500円のラーメン店がありますが、アメリカに行くとラーメン1杯2000円のお店があるそうです。

Screenshot of www.ichiranusa.com

生産性革命が進展していますから、購買力が相対的に低いと言っても、50年前とは意味合いが異なります。電子機器や工業製品や食料生産まで、全般に価格は低下していますから、50年前の「何も買えない円」ということではなく、「買えるけど、欧米に比べると購買力が低い円」という位置づけになります。

何で安いのかと言えば、日本は少子高齢化で年金生活者が増えて、経済が停滞し賃金が上がらないので、「高い商品が売れない」からデフレ傾向が続いているからなんですね。これは、商品やサービスを提供する企業側の涙ぐましい努力の賜物であるとも言えます。欧米諸外国ではそこまで企業努力は必要ないのです。

極端に物価が安い社会、それが日本社会なのです。

※参考書籍

中藤玲、安いニッポン「価格」が示す停滞

「安いニッポン」という本では、次のような価格が紹介されています。

ディズニーランド入場料(日本8200円、パリ10800円、フロリダ14500円)

ダイソー(日本100円、ブラジル150円、中国160円、シンガポール160円、アメリカ160円、台湾180円、タイ210円、オーストラリア220円)

アマゾンプライム年会費(日本4900円、フランス6200円、ドイツ8700円、イギリス11200円、アメリカ12300円)

更に「米住宅都市開発省がサンフランシスコで年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した」という衝撃的な記事を紹介しています。これは2019年12月の為替レート109円で計算されたもので、12万9150ドルなので2022年の1ドル115円で算出すると1485万円が低所得者ということになります。

Screenshot of ja.wikipedia.org

これ、世界中の経済誌やテレビ番組で恐れられているjapanificationあるいはjapanization 「日本化」というものですね。日本が失われた30年に突入したことを指し、「経済の長期停滞化」というような意味で使われています。

このニュースに対する認識と対策は2通りあります。現状認識と対応策が180度ちがうことになります。

(1)労働市場の硬直性を改善し(終身雇用の正社員を廃止し)復活への道のりを進まなければならない。

(2)何をやっても復活は無理だが、むしろ物価の安い事を利用していけば良い。

ですから、このニュースは、「少子高齢化で賃金も上がらないダメな日本。」という捉え方をすることもできるのですが、同時に「企業努力で歴史上類例を見ない超効率社会の日本」という風にポジティブに捉えることもできるはずなのです。物価が安くて最も進歩的な社会である、と胸を張ることもできるのです。最先端社会の日本、というわけです。

シンギュラリティ社会は、この生産性革命を究極的に推し進めた社会になります。デフレがもっと進行するのです。お金なんて不要な未来が迫ってきています。

シンギュラリティ表

産業革命以前、20世紀と21世紀の違い、シンギュラリティの前後でどのように変わるのか、一覧表にしてみました。当然、就職先や投資先は右側の「新体制」に属する企業を目的とすべきでしょう。左側の「旧体制」企業は、少しずつでも右側の方に移行できるように努力し続けなければ生き残れません。
項目中世旧体制新体制
西暦19世紀まで20世紀21世紀
価値の源泉宗教人間中心主義データ主義
政治王権神授説議会制民主制デジタル民主制
経済貨幣経済(金利なし、聖書によるウスラ禁止)
資本主義(金利あり)、成長経済シェアリングエコノミー(金利なし)、定常経済
人口ほぼ一定増加(ベビーブーム)減少(少子高齢化)
物価ほぼ一定上昇(財産の囲い込み)下落(協働型コモンズを無償利用)
通貨政府発行の法定通貨(国際取引は未熟)政府発行の法定通貨(基軸通貨はドル)暗号通貨(主要通貨はビットコイン)
金融小規模融資銀行融資クラウドファンディング
企業特許会社大企業ビジネス株式会社小規模、非営利団体NPOボランティア、ソーシャルビジネス、分散型自律組織DAO(decentralized autonomous organization)
労働奴隷的労働雇用契約の必要あり。正社員パーマネント契約。給与は低いが多数雇用される。必要ないがやるなら単発の仕事(ギグ)。パートタイム業務委託契約。給与は高く小数精鋭。
生産手工業から蒸気機関への移行工場でNC加工家庭で3Dプリンティング
収入自営収入給与、キャピタルゲインベーシックインカム
コンピューター機械式計算機ノイマン型(プログラムで動く)、デジタル古典コンピューターデータ駆動型、ディープラーニング型(NN機械学習で動く)、量子コンピューター
インターネットなしクライアントサーバーモデル(中央集権)、web1.0&2.0ピアツーピアによるブロックチェーン(分散台帳)、web3.0
流通・小売業小規模小売業デパート百貨店、商店街、グローバル化百円ショップ、無人コンビニ自動販売機、ネット通販ロボット配送、ローカル化、eコマース、Qコマース、ダークストア
モノとヒトの関係所有所有アクセス
情報非公開紙媒体を購入インターネットで無償取得
著作権・知的財産権未成熟保護廃止(海賊党運動)
エネルギー木炭、石炭有料の化石燃料を給油無料の太陽光エネルギーを充電
自動車馬車内燃機関エンジンの自動車を購入して人間が運転電気モーターのカーシェアリングをコンピューターが自動運転, MaaS
衣類手工業背広、プレタポルテ(高級既製服)wear something→ユニクロ,ZARA,H&M,Gap
食料自給自足高価(働かざる者くうべからず)安価(限りなくゼロ、無料に近づく)
住居代々相続住宅ローンで新築住宅を購入空き屋に無償で入居
不動産価値の源泉価値の源泉価値無し(VR・AR・デジタルツインへ移行)
ビジネスの主戦場王宮大都市メタバース(ネットワーク上の仮想世界)、リアルサイトは辺境
家族大家族夫婦と子供2人単身世帯
主要団体封建国家国民国家NGO,NPO
必要な勉強技能型、親方に弟子入りする暗記型、教科書を習得する討論型、答えの無い問題を切り拓く
資格・学歴形成期価値があるし必要価値は無く不要(学びは必要)
飲食店・店舗実店舗実店舗、多様性無人コンビニへ集約、ゴーストキッチン、クラウドキッチン
主要議題ルネッサンス開発・発展持続可能性SDGs
世界観神話開発の物語新しい物語

投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です