太陽は核融合エネルギーで発熱発光しています。それが地球に届いて、太陽電池で我々にエネルギーを与えています。太陽光発電を使うということは、核融合発電をしているのと同じことです。
太陽電池には様々な方式がありますが、どれも、太陽光が物質内の電子を励起し(エネルギーを与え)価電子帯から伝導帯に引き揚げ、引き揚げられたフェルミ準位を電圧の差として取り出すことは同じです。
現在主流のシリコン太陽電池は、PN接合に光を当てるものです。
(1)電子が余っているn型半導体と、正孔が余っているp型半導体を接合させますと、接合面付近の電子と正孔が結合します。p型とn型の半導体についてはこちらの記事を御参照下さい。
(2)接合面付近の電子と正孔が結合して、自由電子と自由正孔が無くなっている場所を空乏層depletion layerと言います。pn接合についてはこちらの記事を御参照下さい。n型半導体から電子が無くなっている部分はプラスに帯電し、p型半導体の正孔が無くなっている部分はマイナスに帯電して、電界electric field を発生させています。
(3)pn接合のバンド図です。p型とn型が接続されているのでEFフェルミ準位(電位)は同じになります。シリコン結晶内で共有結合されている最外殻電子(価電子valence electron)のエネルギーレベルはEV、電子が結晶内の隣の原子に移動できるエネルギーレベルはEC(conduction energy)です。
(4)pn接合に光が当たりますと、電子が光励起され自由電子となってn型半導体に集まり、同時に生じた正孔も自由正孔となってp型半導体に集まります。このときに生じたp型とn型のフェルミ準位の差Voを電圧として取り出すのがシリコン太陽電池です。
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もうひとつ、色素増感太陽電池の仕組みも見てみましょう。
これはシリコン太陽電池よりも更にシンプルな仕組みです。太陽光によって励起された電子のエネルギーを電極を通じて取り出すだけです。川の水が上流から下流に流れてくるように、光が当たった色素内で励起された電子が光の当たっていない部分に流れて行くのです。
典型的な色素増感太陽電池の主なパーツを説明します。
1、色素Dyeというのは光エネルギーを吸収するために、色が付いているということですね。材料は何でも良いですが、特性が良いものとして、Ruルテニウム化合物が用いられることが多いです。色素に光が当たると電子がエネルギーを受けて励起され、伝導電子となります。
2、色素は、酸化チタンTiO2の表面に設置すると発電効率が増すことがわかっており、酸化チタンが必須の材料となっています。酸化チタンは化学反応を促進する光触媒として良く使われますが、色素増感太陽電池でも同じように電子の受け渡しを促進しているのです。
3、励起された電子は、負極である透明電極 Transparent Electrode を通じて、フェルミ準位の低い、光の当たっていない正極 Counter Electrode へと流れて行きます。透明電極は導電性ガラスが使われることが多いですが、透明の導電性プラスチックを使って曲面形状の太陽電池を造ることも可能です。
4、正極から電子を受け取るのは、電解質electrolyteです。電解質の中では、ヨウ素Iが電子を受け取ってヨウ素イオンI-となり、電子を失った色素に電子を供給します。それで、上記1に戻って、色素に光が当たると再度電子が励起されるというわけです。
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太陽光発電の費用は毎年下落しています。技術革新、研究開発、生産性の向上により、毎年毎年値段が下がっているのです。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDOでは、2030年に7円/KWhという発電コストが目標として掲げられていますが、未来学者・経済学者ジェレミーリフキンは、「太陽光発電のコストは限りなく無料に近づく」と予言しています。数字で言えば1円/KWh未満ということになります。人類はエネルギーを無料で利用できるようになると予想されているのです。無料にならなくても、1キロワット時あたり7円であっても、現在の火力発電所などと同等のコストですから、わざわざ石炭や重油を燃やす必要はなくなるということになります。近い将来、火力発電所は無くなると予想されています。蒸気機関車が無くなったのと同じです。