シンギュラリティに対する心理学的アプローチ

20世紀を知っている30代以降の世代、つまり、シンギュラリティ対策の親世代は、2000年頃大ヒットした心理学者スペンサー・ジョンソンさんの「チーズはどこへ消えた?」を読んだ記憶があるはずです。世界で2800万部、日本でも400万部突破して、Amazon史上最大の大ベストセラーとなりました。原作は1998年出版で、日本では2000年に発売され、ちょうど「ドットコムバブル崩壊」で混乱期にありましたので、人々のニーズに合致していたのだと思います。当時、アマゾンがネット書店として日の出の勢いで成長し、何でもかんでもインターネット化が進行して、20世紀の既存の商売が変化を求められていた時代でした。21世紀の今は、インターネット化のその次、AI化の時代に直面しているわけですが、20年振りに読んでみて、心理学的アプローチは今回も有効だなと感じましたので、印象に残ったフレーズを御紹介したいと思います。21世紀生まれのシンギュラリティ直面世代の皆さんも必読書ですぞ!

・ホーが提案した。「もうあれこれ事態を分析するのはやめて、見切りをつけて新しいチーズをみつけたほうがいいと思うんだが」 「だめだ」ヘムは言い張った。「なんとしても真相を究明するんだ」・・・これは小人のホーがチーズが消えた後に仲間のヘムに新しいチーズを探しに行こうと誘ったのに、ヘムが拒否する場面です。これを客観的に読むことにより読者自身の行動を軌道修正することができるのです。

・「たぶん」ヘムが言った。「腰を下ろして、事態を見守っていたほうがいいんじゃないかな。いずれチーズは戻ってくるはずだ」・・・チーズが消えた後も小人2人は「チーズが戻ってくる」と期待して待ち続けていたんですね。これを読むことにより読者は「変化の不可逆性」に気付くというわけです。

・だが、時間がたつにつれ、本当に新しいチーズがみつかるかどうか疑問に思えてきた。食べられる量以上のものを手に入れようとしているのではないか、つまり力に余ることをやろうとしているのではないかという気がした。・・・これは新しいチーズを探し始めた小人ホーの述懐です。新しいチーズを探し始めているときには、無駄なことをしているのではないかという疑問が常に湧いてくるということを教えてくれます。また、チーズは食べるものですから、食べられる量以上のチーズを得る必要は無いという当たり前のことにも気付かされます。

・それから、元気はつらつと機敏に迷路を走りまわった。まもなくあるチーズ・ステーションで立ち止まり、胸をおどらせた。入口近くに、新しいチーズの小さなかけらがいくつかあったのだ。・・・非常に示唆的な文章だと思いました。まず、新しいチーズを探すときは元気よく機敏に動き回る必要があるということ、それから、新しいチーズが見つかる時は、いつも、ほんの少しの小さなチーズとして見つかるということですね。新しい大きな変化の波を捕まえるときには、常に、小さな予兆を捕まえるということです。

改めて読み返してみると、著者は変化に直面したときの人の感情の動きを鋭く分析していたのだと感心させられました。最近テレビなどでも「正常性バイアス」とか「防衛機制」といった心理学用語が解説されることもありますが「チーズはどこへ消えた?」では専門用語を使うことなく、人の心理の性質を読者に学ばせ、不利益を回避する知恵を授けることに成功していると思いました。

※参考書籍(上記著者の続編、最新書籍)

 スペンサー・ジョンソン、迷路の外には何がある?

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