
ベルギー王立天文台が毎日公表している太陽の黒点周期のグラフでございます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽活動周期
https://en.wikipedia.org/wiki/Solar_cycle
太陽黒点数
太陽中心の核融合反応で発生した熱が、太陽表面の対流層を通じて太陽表面に伝播していくが、対流のムラにより表面運動の活性が高い時期は、黒点と白斑が同時に沢山できるが、活性が低下すると黒点が減少して、僅かに太陽の明るさが「暗く」なります。しかし、その暗さは、地球の気温を0.1度下げる程度ということです。黒点数と紫外線量は比例します。太陽からの放射エネルギーは最大0.2パーセント程度変動すると観測されています。それでも、人類の精神状態にマクロで影響し、精神病院の入院数や自殺者数や株価に大きな影響を与えています。我々の精神は知らず知らずのうちに太陽活動にコントロールされているようです。太陽黒点が多い時、我々は元気になり、株を買う勇気が出るようなのです。
11年周期
太陽活動が活発な時期と停滞している時期は、おおむね11年周期で繰り返されてきました。中国では紀元前2世紀には黒点の存在が観測されていましたが、ヨーロッパで望遠鏡が発明され、比較的正確に太陽黒点の量を数え始めたのが西暦1755年からです。2022年は25回目のサイクルのピークに向けた上昇期間にあたります。
景気イベントと太陽活動の不思議な一致
- サイクル21終盤1987年はブラックマンデー
- サイクル22終盤1997年はアジア通貨危機
- サイクル23終盤2008年はリーマンショック
- サイクル24終盤2020年コロナ暴落
- サイクル25終盤2030年頃なにが起きるか?
景気変動と太陽黒点数の関係を最初に論じたのは19世紀イギリスの経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズと言われています。彼の太陽黒点説は当初農業生産性との連動のみ着目されましたが、現代では経済全体との関連性を主張するエコノミストも現れています(下記参考書籍参照)。
10年前後の景気波動は、19世紀イギリスの経済学者クレマン・ジュグラーにちなんで「ジュグラーサイクル」と呼ばれていますが、このサイクルと黒点周期には不思議な一致が見られるのです。
※国立環境研究所の参考記事
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20170410/20170410.html
太陽光を浴びることにより人の体内でビタミンDが合成され、血中ビタミンD濃度上昇によりウツ病の発症が予防されると言われています。北欧などでは冬季日照不足の時期に「冬季うつ病」があると言われます。太陽光の量が人の気持ちに作用するのであれば、景気にも影響することになります。我々の心は、知らず知らずのうちに太陽活動にコントロールされているかもしれないのです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長である嶋中雄二さんの「太陽活動と景気」を読みました。驚くべき話が沢山書いてあります。いくつかピックアップしますので各自原書で御確認下さい。
55年周期
※吉村宏和、太陽長期変動研究の観点から見たアフリカ・ビクトリア湖水面位とナイル川水位変動の歴史的記録の考察(太陽活動55年周期、110年周期への言及) →55年コンドラチェフサイクルに対応。コンドラチェフサイクルは、外燃機関、内燃機関、コンピューター、インターネットなどの技術革新の影響を受けているとも言われています。
https://www2.nao.ac.jp/~mitsurusoma/gendai3/113-132Yoshimura.pdf
22年周期
※太陽磁気の22年周期→22年クズネッツサイクルに対応
太陽の磁極は22年に一度反転する周期を繰り返していると観測されています。最近では2013年に反転しました。ちなみに地球の磁極は、チバニアン地層で分かりますが、数十万年に一度反転すると言われています。クズネッツサイクルは建物の建て替え周期の影響を受けているとも言われています。
ヘール-ニコルソンの法則
フランスの経済学者クレマン・ジュグラーは、7~12年の周期は、(1)繁栄、(2)恐慌、(3)清算の3つの局面に分割されると分析した。彼は、「恐慌に先行する兆候は、大繁栄というシグナルである」と述べています。
ジュグラーの言葉に従えば、50年振りの低水準となっているアメリカ失業率は、「恐慌に先行する兆候」ということになってしまいます。
ロシアの科学者で歴史家でもあったアレクサンダー・チジェフスキーは太陽黒点に起因する地磁気嵐が、電気の使用、飛行機の墜落、伝染病、バッタの大量発生に影響するだけでなく、人間の精神活動にも影響を与えていると主張しました。大気中の負イオンの増加により、大衆が興奮するというのです。チジェフスキーは、黒点活動の11年周期が大衆の不平不満感に影響し、反乱、革命、内戦、国家間の戦争に至ることによって、人類の歴史を動かしてきたと主張しました。太陽活動の生物への影響を調べる研究を彼は「太陽生物学 Heliobiology」と呼びました。
「二人のドイツ人研究者、B・デュールとT・デュールは、50年ほど前に、黒点、磁気嵐オーロラといった太陽活動と人間の自殺との関係について、太陽活動が特に活発な日には自殺が約8%増加することを見出した。」
「1963年、アメリカの整形外科医R・ベッカーは、精神病院への入院が太陽フレアと相関していることを見出した。」→太陽フレアは、太陽活動が活発な時期、黒点数が多い時期に増えます。地磁気と我々の精神が何らかの連動をしていることを示すものでしょうか。
「脳の中での生理的・生化学的なプロセスは、生電気と密接に関わっており、その基本はナトリウムイオンやカリウムイオンの濃度の差を含む膜構造にあるとされている。これらのイオンの透過性は「膜電位」と呼ばれる電流でコントロールされるため、もしも地磁気が膜電位に作用するならば、それはヒトの生体の生理学的機能にも当然影響を与えるはずなのである。」
これは定性的な話ではありますが分かりやすい論旨です。我々の体内の神経細胞にはイオン電流が流れているのだから、地磁気の変動の影響を受けざるを得ないという当然の話になっているわけです。
この、地磁気の変動の他、季節性の、気温とか紫外線量というパラメーターも作用して、ヒトの心が動かされているようです。私たちは、怒ったり泣いたり喜んだり悲しんだりしているときに、その感覚が余りにも現実的であるために、それが太陽活動の影響を受けているとは全く理解することはできません。しかし、理解できなくても、影響を受けていることを示す証拠が沢山見付かっているのです。
この本には日光浴(紫外線)によるビタミンDの生合成と抑うつ効果についての言及はありませんが、これも様々な研究で影響が実証されています。黒点数が増加すると紫外線量も増えます。紫外線照射量が我々の精神に与える影響は株価の季節性アノマリー(1年周期の変動)に現れていると言えそうです。勿論、株価は紫外線量だけでなく、気温や、クリスマスなど文化的ミームの影響もうける複合要因で動きます。
※日経平均月別騰落率
https://www.dai-ichi.co.jp/market/anomaly/monthly_ratio.asp?kbshohin=etc&cdshohin=9101
※ダウ平均月別騰落率
https://www.dai-ichi.co.jp/market/anomaly/monthly_ratio.asp?kbshohin=etc&cdshohin=9102
※厚生労働省、統合医療情報発信サイトよりビタミンD
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html

※参考書籍
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