「不確実性の時代」などベストセラーの一般書を沢山書いているカナダ出身の経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの「バブルの物語」は、全ての株式市場参加者が読んでおくべき名著です。
バブルの歴史、17世紀オランダのチューリップバブルや、18世紀フランスのミシシッピバブル、イギリスの南海バブルの経緯が説明されています。そして、バブルはいつも同じ経過を辿ると教えてくれます。
印象に残ったガルブレイスの主張をいくつか挙げます。彼はきっと新古典派というより、ケインジアンに近い立場なのでしょう。
・暴落の前に金融の天才がいる・・・巨額の金がかかわっている以上それを動かす人の頭脳も偉大であるに違いないと信じ込んでしまう。
・金融上の操作は革新にはなり得ない・・・レバレッジ取引、持ち株会社、M&A、すべて革新的発明ともてはやされたがバブルがはじけて真実が露呈する。
・投機の結末では真実はほとんど無視される・・・投機の終末期には異常な楽観主義・大衆的狂気が蔓延し、真実はほとんど無視され省みられることも無い。
・チューリップバブルでは、球根1個が「新しい馬車1台、葦毛の馬2頭、そして馬具一式」と交換可能なほどになった。
・貴族、市民、農民、職人、水夫、従僕、女中、さらには煙突掃除夫や古着屋のおばさんまでがチューリップに手を出した。
・ミシシッピバブルでは、ミシシッピ会社の株式を買うために売春する婦人まで現れた。
・1929年と1987年のバブル崩壊は、共和党政権下で発生した・・・この繰り返しは全くの偶然とは言い切れない。
これは1990年に出版されたバブル警告の本なのですが、1991年の日本語版への序文に日本の不動産バブルへの警告が書かれていました。そして、まさにこの1991年をピークとして、日本の不動産価格が30年近く下落し続けたわけです。
金融上の操作は革新とはなり得ないというのもドキッとさせられる言葉です。21世紀の中央銀行による量的緩和策なんかは「意味ないよ」とガルブレイスが教えてくれているようです。
さらにまた、「共和党政権時代に気をつけろ」という指摘まであり、2019年にこれを読みますとドキドキしてしまいます。そういえば2008年リーマンショックも共和党ブッシュ大統領の時代でした。2019年の共和党トランプ大統領は、ダウ史上最高値をやっているのにFRBに利下げを要求するという驚くべき事をやっています。ガルブレイスが生きていたら何と警告したでしょうか。
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