ナース・プラクティショナー Nurse Practitioners は欧米で導入が進んでいる上級の看護職であり、一定レベルの診断や治療などを行うことが認められており、臨床医と看護師の中間職と位置づけられています。practitioner というのは「開業医」「専門家」という意味の英単語です。
日本では正式な国家資格の段階には至っていませんが、認定看護師の特定行為という形で、一部の医療行為を看護師に補助させています。看護師の特定行為研修制度ポータルサイトによると、「特定行為とは、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる行為のこと。」とされています。医師の不在時にも、医師が事前に作成した手順書に従って特定行為を行うことができます。NPになるには、通常の看護師資格に加えて、大学院の修士課程を修了して、特定行為研修を受けて認定を受ける必要があります。
国民皆保険が整備されていないアメリカでは、NPの制度は日本よりも大幅に活用されています。日本のNPとアメリカのNPは質的に異なります。全米診療看護師連盟 American Association of Nurse Practitioners AANP のHPを御紹介致します。
アメリカでは、Full Practice Authority(完全実施権限) という制度もあり、特定の医師からの監督指示がなくても、州看護委員会の排他的認可を受けて、独自に患者を診察して処方薬を含む治療行為を行うことができる仕組みになっています。
カナダのオンタリオ州には、ナースプラクティショナーの診療所もあります。Nurse Practitioner-Led Clinics 診療看護師主導クリニックです。広大な国土をカバーするために、医師だけでなく診療看護師も開業してプライマリーケアの選択肢を提供すべきと考えられているのです。
病院に行くかどうかを決める前のプライマリーケアを担当する一次医療機関として機能しています。高血圧や糖尿病など慢性疾患の管理も担っています。そういえば日本でも、助産師は助産所を経営できますし、薬剤師は薬局で患者と話をして一類市販薬を販売することができますね。町医者も簡単な問診や検査だけで、大学病院への紹介状を書くだけのところも多いですね。線引きが難しいですが、医師から診療看護師へ、一定の業務を移管することは合理的な手段と言えるのでしょう。
少子高齢化により20世紀の医療保険制度を維持することが出来なくなってきた時、「診療報酬の引き下げ」や「後期高齢者医療制度」などの小手先の対応策だけでは対処しきれなくなる可能性があります。日本でもNPの拡大を求める環境は整いつつあると言えます。
近い将来、機械学習AIシステムが医師と診療看護師NPの境界を移動させる可能性があります。普通の看護師がAIマシンを併用することでNPに変わる可能性を秘めています。プライマリーケアという意味では、現在の町医者が全てNPに転換されてもおかしくありません。高度な外科手術も、手術ロボットの進化により人間の医師から置き換えられていく可能性があります。医師は新薬や治療法の開発を行う研究者だけになっていくとも考えられます。
同じように、他のあらゆる職業においても、21世紀は職域の境界が移動する可能性があると考えるべきでしょう。機械学習AIシステムが、自分の仕事にどのように影響するか、あるいは自分が目指している職業にどのように影響するか、各自考えてみて下さい。
コメントを残す