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シェアリングエコノミー、限界費用ゼロ社会

従来型資本主義経済社会において、生産性を向上する競争が継続され、極限生産性が達成された場合に、あらゆるモノの価値がゼロに近づき、人々は生活に必要なあらゆる財物を所有する必要が無くなり、従来型大企業は利益を生み出すことが困難になると予言されている経済体系、社会体制です。

アメリカの経済社会学者・未来学者ジェレミー=リフキンは、ポスト資本主義のシェアリングエコノミーにおける主要原理は、「新ガンジー主義」と、「協働型コモンズ」であると提示しています。

リフキンは、資本主義の成功がもたらす帰結を正しく認識せよと主張しています。市場資本主義体制の競争の結果として、あらゆる財とサービスの価格が「ほぼ無料」となり、利益は消滅し、所有権が意味を失い、市場は不要となるのです。リフキンは「資本主義そのものがシェアリングエコノミーを生み出した」と述べています。「シェアリングエコノミーは資本主義の子供」なのです。

1994年、ビル=ゲイツは「将来、銀行は必要なくなる」と主張しました。資本主義からシェアリングエコノミー、協働主義への移行は必然であると主張されています。他のすべての物事と同じように、資本主義にも、始まりもあれば終わりもあるということです。シェアリングエコノミーのスローガンは、「所有からアクセスへ」です。

勿論、シェアリングエコノミー、限界費用ゼロの時代が到来しても、貨幣は無くならないでしょうし、従来型資本主義経済も株式市場も商品市場も完全に無くなってしまう訳では無いでしょう。リフキンは、主役の地位が交代すると述べています。20世紀は資本主義市場経済が主で協働型コモンズが例外的な地位でしたが、21世紀に、将来的に主従が逆転すると予言しているのです。19世紀に資本主義が誕生し、20世紀に社会主義が誕生し、21世紀にはシェアリングエコノミーが誕生するのです。この3つの経済体制は、それぞれ影響し合い、混ざり合いながら機能していきます。

極限生産性とモノのインターネット(IOT)がもたらす帰結を正しく認識する必要があります。ムーアの法則に社会全体が牽引され、社会全体が変容します。太陽光発電のコスト低減が続き、エネルギーの価格が「ほぼゼロ」になり、送電網や電力会社が不要になります。3Dプリンティングの進化により、工場による生産から家庭内における生産へと切り替わり、工場生産・配達から家庭内生産・消費へとシフトする。店舗や宅配という概念が消滅するのです。

研究者達は、3Dプリンターを使って、3Dプリンター自身の全部品を製作することを試みています。このことの意味をよく考える必要があります。これはちょうど、GNUプロジェクトの開発コンピューター言語gccがgccによってセルフコンパイルされているのと同じことです。外部からの関与一切無く、フリーソフトだけで、次のフリーソフトが産み出される環境が完成しているのと同じ様に、3Dプリンターが自分自身の全ての部品を製造することができれば、3Dプリンターが外部からの関与一切無く、3Dプリンターだけであらゆる物品を製造できるようになるのです。世の中全ての製品が3Dプリンターによって制作可能になる時代が近づいているということです。研究者達は、3Dプリンターを用いて、コンクリートや住宅の骨組みを造る試みを研究しています。近い将来、建物の3Dプリンティングが完成すると予想されています。建物を印刷するのです。研究者達は、3Dプリンターを用いて、生活必需機械の全てを無料で生産する仕組みを研究しています。3Dプリンターは、生活必需機械をフリーソフト化してしまいます。100円ショップどころではなく、無料なのです。無料の3Dプリンターは、無料のエネルギーと、無料の材料で動きます。これらの文章の意味が分かりにくい場合は、「無料」というところを、「限りなく無料に近い」と置き換えて読解すると良いでしょう。

ジェレミー=リフキンは、インド独立運動指導者マハトマガンジーを高く評価しています。ガンジーは、資本主義とも中央集権型共産主義とも距離を置き、コミュニティーによる自治生産を主張していました。これは、最新の公共経済学(2009年ノーベル経済学賞エリノア・オストロムなど)が明らかにした協働型コモンズの優位性と驚くほど親和します。オストロムのコモンズ研究は、公共財や共有資源(コモンズ)=道路や発電所や水道などの管理には、資本主義の自由主義体制よりも、社会主義の計画経済よりも、住民による自治の関与が、効率を最高点に高めると分析したものです。

エリノア・オストロムの著作

コモンズ関連書籍

1968年にヒッピー運動の機関紙「ホールアースカタログ」を創設したスチュアートブランドは、「情報はフリーになりたがっている“Information wants to be free.”」というスローガンを発見しました。これは、知的財産権の分野における協働型コモンズの発見でした。

ホールアースカタログ関連書籍

1985年、MIT(マサチューセッツ工科大学)のAI研究所プログラマであったリチャード=ストールマンは、 Dr. Dobb’s Journal of Software Tools, Vol. 10, No. 3 にGNU宣言を発表しました。大型コンピューター用のマルチタスク・マルチユーザーのオペレーティングシステムUNIXの機能を持つパーソナルコンピューター用CPUで動作し、誰もが無料で利用できるOS(基本ソフト)の開発を始めました。ストールマンは、GNUプロジェクトを推進するために、MITを退職し、コピーレフトという新しい著作権の形態を発明し発表しました。

「GNUはパブリック・ドメインではありません。誰もがGNUを改変して再配布することが認められますが、さらなる再配付を制限することは、どの配布者にも認められません。つまり、プロプライエタリな改変は許されません。わたしは、すべてのGNUのバージョンが自由のままであることを確実にしたいのです。」(GNU宣言より)

Screenshot of www.gnu.org

1991年、ヘルシンキ大学の学生であったリーナス・トーバルズは、大型コンピューター用のマルチタスク・マルチユーザーのオペレーティングシステムUNIXの機能を持つパーソナルコンピューター用CPUで動作するOS(基本ソフト)の開発を1人で始めました。これは、やがてメーリングリストによる有志の共同開発という形で発展していき、いまや無償のアンドロイドOSとして、世界の大半のスマートフォンに搭載されるに至っています。コンピューターソフトウェアの世界では、限界費用ゼロ社会=シェアリングエコノミーの世界が一足早く実現しているのです。

コモンズの反対語は、囲い込みです。貨幣経済、市場経済、資本主義経済が始まる前と終わった後の主要資産は、コモンズです。

最後に、シェアリングエコノミーの実例を挙げます。

モノのシェア=フリマ(メルカリ、ヤフオク)、ネット宅配レンタル(TSUTAYA DISCAS、TKPレンタルネット)

空間のシェア=民泊(Airbnb、ステイジャパン)、レンタルスペース(スペースマーケット、インスタベース、スペイシー)、ルームシェア、農地バンク、予約駐車場B-times、TKP貸し会議室

スキルのシェア=家事料理代行(カジフル、カジー、ベアーズ、東急ベル)、介護育児(ダスキンライフケア、ニチイライフ)、知識スキル(ランサーズ、クラウドワークス)

お金のシェア=購入型クラウドファンディング(キャンプファイヤー、レディーフォー、マクアケ)、寄付型クラウドファンディング(レディーフォーチャリティ)

移動のシェア=カーシェア(タイムズカープラス)、ライドシェア(Uber)、シェアサイクル(ドコモバイクシェア)

参考書籍
「限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭」ジェレミー・リフキン、NHK出版
「Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary 」Linus Torvalds, David Diamond

「シェアリングエコノミーがよーくわかる本」上妻英夫、秀和システム

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