コロナウイルス騒動の影に隠れていますが、いま世界では石油戦争が勃発していることは御存知でしょうか。
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008604/1008709.html
OPEC石油輸出国機構にロシアなどの非加盟国を加えた会議、OPECプラスの会合が、2020年3月6日にオーストリアのウィーンで開催されました。OPECプラス産油国閣僚級会合で、減産措置強化を主張するOPEC加盟国とロシアとの間で交渉が事実上決裂し、OPECプラス産油国が2020年1月1日より実施していた減産措置も3月末で終了し、4月1日以降ロシアは自由に原油生産を行うことが可能となったのです。勿論、コロナウイルスによる原油の需要低下もあります。
ニューヨーク原油価格(1バレル価格)は次のようになりました。
2020/3/6 $45.9
2020/3/13 $32.93
2020/3/20 $26.39
恐るべき下落幅で、「逆オイルショック」とも言われています。原油生産には1バレルあたり10~30ドルの生産コストが掛かりますが、米国が2010年以降急増させているシェールオイルだと1バレルあたり30ドル以上掛かると言われており、今回の交渉決裂はサウジアラビアとロシアによるシェールオイル潰しではないかと分析する識者も居ます。岩盤の隙間にある石油を高圧水で押し出して採掘するシェールオイル採掘の技術を確立して大増産を始めた米国と、従来型油田で生産する産油国との間の「石油戦争」が勃発しているのです。
※参考記事、中東産原油と米国シェール・オイルの攻防の行方
https://www.jccme.or.jp/11/pdf/2015-03/josei02.pdf
40ドルが20ドルに下がると半分かと思いますが違うのです。例えば生産コストが15ドルだとすれば、利益が25ドルから5ドルと5分の1に減っているのです。ロシアもサウジアラビアも国家予算にオイルマネーが組み込まれていますから、原油価格の急落は国家予算を直撃します。年金の支払いや公務員の給料が滞ってしまう大問題になります。政府の財政まで含めた損益分岐点は50ドル以上と言われています。
なんでそんな損になるような大増産を続けているのかと言えば、アメリカのシェールオイル潰しを狙っているのではないかと推測されています。だから、サウジアラビアとロシアの交渉決裂は表面的な事で、実は両国が合意して共同でアメリカのシェールオイルに喧嘩を売っていると考えることができるのです。アメリカのシェールオイル業者が倒産して、原油価格が上がるまで、体力勝負を続けようというわけです。これが普通の問屋同士の抗争であれば独占禁止法違反の不当廉売ということになるのですが国同士にはそんな法律の縛りはありませんから、片方が音を上げるまで石油戦争は続きます。アメリカのシェールオイル業者の一部が倒産したというようなニュースが来るまで、少なくとも数ヶ月は要する闘いです。
一時的に苦しいかも知れないがアメリカを潰せば後日儲かるはずだという見立てです。そのあおりで、オイルマネーの投資先から資金流出が起きています。金価格が1割下がり、世界中の株式市場で混乱が起きています。日本だって東証一部のPBRが1倍割れ、リート平均利回りも6.7パーセントまで上昇するほどの暴落が起きています。
しかしながら、シンギュラリティの観点から言えば、この石油戦争はアメリカの勝ちになります。
シェールオイルの生産コストが低下し続け、サウジとロシアがどんなに頑張って増産してもアメリカのシェールオイル業界が衰退することは無いでしょう。サウジとロシアが知っているシェールオイルの生産コストは「古い数字」かもしれません。これは生産性革命の一環ですから、誰にも止めることはできないのです。太陽光発電や燃料電池やリチウムイオン電池などの改良は毎日進展しています。脱化石燃料の流れは誰にも止められません。サウジとロシアの努力は守旧派の無駄な努力ということになる可能性が高いでしょう。勿論推測の話ではありますが、各自、色々考えてみると良いでしょう。今までオイルマネーが投入されていた業界や金融商品は今後後退が避けられないかも知れません。
石油戦争と同じように、生産性革命との向き合い方の違いで、様々な紛争を生じることになりますが、常に自分はどちら側に位置しているのか考えてみる必要があるでしょう。シンギュラリティ表を再掲致しますので参考にして下さい。
シンギュラリティ表
産業革命以前、20世紀と21世紀の違い、シンギュラリティの前後でどのように変わるのか、一覧表にしてみました。当然、就職先や投資先は右側の「新体制」に属する企業を目的とすべきでしょう。左側の「旧体制」企業は、少しずつでも右側の方に移行できるように努力し続けなければ生き残れません。項目 | 中世 | 旧体制 | 新体制 |
---|---|---|---|
西暦 | 19世紀まで | 20世紀 | 21世紀 |
価値の源泉 | 宗教 | 人間中心主義 | データ主義 |
政治 | 王権神授説 | 議会制民主制 | デジタル民主制 |
経済 | 貨幣経済(金利なし、聖書によるウスラ禁止) | 資本主義(金利あり)、成長経済 | シェアリングエコノミー(金利なし)、定常経済 |
人口 | ほぼ一定 | 増加(ベビーブーム) | 減少(少子高齢化) |
物価 | ほぼ一定 | 上昇(財産の囲い込み) | 下落(協働型コモンズを無償利用) |
通貨 | 政府発行の法定通貨(国際取引は未熟) | 政府発行の法定通貨(基軸通貨はドル) | 暗号通貨(主要通貨はビットコイン) |
金融 | 小規模融資 | 銀行融資 | クラウドファンディング |
企業 | 特許会社 | 大企業ビジネス株式会社 | 小規模、非営利団体NPOボランティア、ソーシャルビジネス、分散型自律組織DAO(decentralized autonomous organization) |
労働 | 奴隷的労働 | 雇用契約の必要あり。正社員パーマネント契約。給与は低いが多数雇用される。 | 必要ないがやるなら単発の仕事(ギグ)。パートタイム業務委託契約。給与は高く小数精鋭。 |
生産 | 手工業から蒸気機関への移行 | 工場でNC加工 | 家庭で3Dプリンティング |
収入 | 自営収入 | 給与、キャピタルゲイン | ベーシックインカム |
コンピューター | 機械式計算機 | ノイマン型(プログラムで動く)、デジタル古典コンピューター | データ駆動型、ディープラーニング型(NN機械学習で動く)、量子コンピューター |
インターネット | なし | クライアントサーバーモデル(中央集権)、web1.0&2.0 | ピアツーピアによるブロックチェーン(分散台帳)、web3.0 |
流通・小売業 | 小規模小売業 | デパート百貨店、商店街、グローバル化 | 百円ショップ、無人コンビニ自動販売機、ネット通販ロボット配送、ローカル化、eコマース、Qコマース、ダークストア |
モノとヒトの関係 | 所有 | 所有 | アクセス |
情報 | 非公開 | 紙媒体を購入 | インターネットで無償取得 |
著作権・知的財産権 | 未成熟 | 保護 | 廃止(海賊党運動) |
エネルギー | 木炭、石炭 | 有料の化石燃料を給油 | 無料の太陽光エネルギーを充電 |
自動車 | 馬車 | 内燃機関エンジンの自動車を購入して人間が運転 | 電気モーターのカーシェアリングをコンピューターが自動運転, MaaS |
衣類 | 手工業 | 背広、プレタポルテ(高級既製服) | wear something→ユニクロ,ZARA,H&M,Gap |
食料 | 自給自足 | 高価(働かざる者くうべからず) | 安価(限りなくゼロ、無料に近づく) |
住居 | 代々相続 | 住宅ローンで新築住宅を購入 | 空き屋に無償で入居 |
不動産 | 価値の源泉 | 価値の源泉 | 価値無し(VR・AR・デジタルツインへ移行) |
ビジネスの主戦場 | 王宮 | 大都市 | メタバース(ネットワーク上の仮想世界)、リアルサイトは辺境 |
家族 | 大家族 | 夫婦と子供2人 | 単身世帯 |
主要団体 | 封建国家 | 国民国家 | NGO,NPO |
必要な勉強 | 技能型、親方に弟子入りする | 暗記型、教科書を習得する | 討論型、答えの無い問題を切り拓く |
資格・学歴 | 形成期 | 価値があるし必要 | 価値は無く不要(学びは必要) |
飲食店・店舗 | 実店舗 | 実店舗、多様性 | 無人コンビニへ集約、ゴーストキッチン、クラウドキッチン |
主要議題 | ルネッサンス | 開発・発展 | 持続可能性SDGs |
世界観 | 神話 | 開発の物語 | 新しい物語 |
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