※厚生労働省の2020/04/01発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10651.html
日本で2020/4/1時点でPCR検査陽性が2107人、死亡者57人になりました。世界では、感染者849,876人、死亡者41,506人となっています。
これは、20世紀初頭のスペイン風邪との対比を思い出させる状況です。スペイン風邪は、1918年1月から1920年12月まで世界中で5億人が感染したとされ、当時の世界人口の1/4程度に相当する感染者数でした。死亡者数は1,700万人から5,000万人との推計が多く、1億人に達した可能性も指摘されるなど人類史上最悪の伝染病の1つでした。
スペイン風邪はいわゆる新型インフルエンザウイルス感染症だったのですが、当時と今では、人類の持つテクノロジーが違っていたのです。1918年から2020年までの102年の間に発明発見された科学技術を列挙してみたいと思います。
1931年、電子顕微鏡の発明によりウイルスを観察できるようになった。
1953年、ロザリンドフランクリンがDNAのX線回折写真撮影。人類はDNAの二重らせん構造を発見できた。
1959年、ウィリアムプルソフによる世界初の抗ウイルス薬の発明。
1983年、キャリーマリスによりPCR法が発明され遺伝子解析の効率が飛躍的に向上した。
1983年、WHOによりバイオセーフティーマニュアル策定。現在のレベル4実験室の源流。
1985年、田中耕一によるレーザーイオン化質量分析計用試料作成方法特許申請。抗体タンパク質の検出精度が飛躍的に向上した。
1987年、石野良純博士がCRISPR遺伝子について論文で言及。
2003年、ヒトゲノム全解読完了。
2010年、クレイグベンターが人工合成細胞JCVI-Syn1.0の細胞分裂に成功。
2012年、ダウドナ&シャルパンティエのCRISPR-Cas9論文。遺伝子編集時代の幕開け。
2014年、ケビンエスベルトの遺伝子ドライブ論文。CRISPR-Cas9を使ってCRISPR-Cas9遺伝子を挿入することにより、種全体の遺伝子操作(種の編集)可能性が示唆された。
なんと、人類は100年の間に、ウイルスの具体的構造を認識し、写真撮影し、増殖メカニズムを解明し、阻害薬を見つけ、遺伝子配列を決定し、それを編集することができるようになり、人工細胞まで合成できるようになったのです。
中国古典孫子の兵法で「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というものがありますね。敵を知るというのはウイルスの遺伝子解析であり、己を知るというのはヒトゲノム解読完了のことです。人類とウイルスの戦いは人類が大きく前進している状態です。生物学医学と全く関係無いように見える半導体工学の進歩が絶大な影響を及ぼしており、ワクチンや抗体の開発はスーパーコンピューターの中でシミュレーションすることができます。
ということで、未だ新型コロナウイルスの治療法や予防法は確立しておらず大変であることは間違い無いのですが、人類が過去に直面したペストや天然痘や新型インフルエンザなど感染症との戦いに比べて、人類の勝利に終わる可能性が非常に高くなっていると言えます。個々の個人については運悪く亡くなってしまうこともあるかも知れませんが、人類全体としては明るい未来が拓けているのです。
※参考書籍
日経サイエンス、2020年5月号(特集:新型コロナウイルス/宇宙の化学進化)
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