OECD経済協力開発機構のGoing Digital 報告書を御存知でしょうか。
Going Digital というのは、デジタルトランスフォーメーションDXの方向性を研究し、人々の幸福・福祉に結びつけようとするプロジェクトです。OECDの説明を引用します。
---引用はじめ
デジタルトランスフォーメーションには、イノベーションを促進し、効率性を高め、サービスを向上させるとともに、より包括的で持続可能な成長を促し、幸福度を向上させるという多くの期待が込められています。しかし、これらの利点には混乱がつきものです。組織や市場と同様に、私たちの相互作用や社会との相互作用は変容しつつあり、雇用やスキル、プライバシー、セキュリティ、技術の変化が社会全体に利益をもたらすようにするにはどうすればよいのかといった重要な問題が提起されています。デジタル革命により、より強固で包括的な成長を実現するためには、首尾一貫した包括的な政策アプローチを構築することが不可欠です。これがOECDの「Going Digital」プロジェクトの本質です。
---引用おわり
ようするに、デジタルトランスフォーメーションがもたらす大きな変化を人々の福祉に繋げるための政策提言を模索する活動がGoing Digital というわけです。Going Digital は「デジタル化」というような意味でしょうか。人の仕事がAIによって置き換えられることをデジタル化と言っているのです。
このプロジェクトの報告書「デジタル化に向けて:政策形成と生活の向上」が2019年3月に発行されており、その中に「加盟国別の自動化される職務比率」の表があり、これが要注目です。
この表で、北欧やニュージーランドは自動化される職務の割合が40パーセント未満とされたのに対し、日本やドイツは自動化される職務の割合が54パーセントと最も高い部類にランキングされてしまいました。
報告書によると、過去20年間で、ほとんどのOECD加盟国の労働市場は二極化しているということです。高技能職と低技能職の割合が増加している一方で、中堅職の雇用は減少しているのです。書き言葉や話し言葉の認知能力や数値分析や推論や複雑な問題解決の技能に対する需要が高まる一方で、身体を動かすルーチンワークの需要は減り続けています。中堅職とはどういうことなのでしょう。大学短大進学率が6割に迫る日本においては、「ただ大学を卒業しただけ」の人材が普通にこなすような仕事は紛れもなく中堅職ということになってしまうでしょう。
この報告書ではデジタル集約型、デジタルトランスフォーメーションが進んだ業種では、テクノロジーを補完するスキルを持ち、非定型的な作業を行うことができる労働者が恩恵を受けると言います。
過去20年以上にわたってOECD加盟国の労働生産性の向上と、実質中央値賃金の伸びは切り離されてきたので、デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上の恩恵を全ての労働者が受けられるようにすることが大切であると報告書は述べています。
労働者にプラスの結果を与えるためには、企業の柔軟性と労働の流動性と雇用の安定性のバランスをとることが必要になるということです。これには、起業家が事業を開始したり清算したりすることが容易にできること、企業がビジネスの状況の変化に応じて労働力を調整できること、労働者が自分のスキルやキャリア計画に合ったより良いマッチを求めて企業や場所の間を移動できることなどが含まれています。金融市場、住宅市場、商品市場への参入と撤退の規制も重要になると言います。
つまり、デジタル化に伴って、企業の柔軟性を高めていく必要があり、労働市場の流動化は避けられないということですね。非正規労働者を正規雇用に切り替えろ、など言ってる場合じゃないということですね。正規雇用という概念そのものが無くなるというのです。
管理人としては、OECD報告書に同意する部分もありますが、高度人材や職業訓練を通じて雇用流動性を高めていくというのには同意できません。それは過渡期の話であって、そのような流動の時代は数十年以内に終わり、やがて99.99パーセントの人類にとって、労働からの解放の時代が来ると思っています。
モラベックのパラドックスがありますので、高度人材といっても、そんなものあるのかな?と思います。将棋とかチェスでチャンピオンが機械に負けているし、画像認識や音声認識ではAIが人類のレベルを超えているという報告もあります。これからはすべての領域で機械が人類を超えることを前提に考えていくべきだろうと思います。
※参考記事
モラベックのパラドックス
AIの画像認識率が既に人類を超えてる件
AIの音声認識率も既に人類を超えてる件
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