グレートデカップリング

機械は我々を幸福にするのか(インタビュー) DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文

The great decoupling グレートデカップリングは、MITのふたりの教授、エリック・ブリニョルフソンと、アンドリュー・マカフィーが提出した概念で、デジタル技術により経済は発展しても、雇用は伸びず大多数の人間の富が増えないという「大分断」の時代を意味します。それは人類の内部における貧富の格差の拡大という意味も暗示していることになります。

19世紀産業革命では、蒸気機関の発明により人類は機械の筋力を得て肉体労働から解放され生産性が向上しましたが、同時に人々の雇用や生活の質(所得の中央値)も向上してきました。この相関関係は20世紀中盤まで続きました。これをcoupling連結とするならば、21世紀のICT革命では生産性の向上と人々の雇用とは連結されず絶対的に分断されると予想されているのです。この分断は20世紀終盤以降、過去30年間に観察されていると上記MIT教授が述べています。

蒸気機関によって肉体労働から解放されても人類には知的労働が残されていましたが、ICT革命では知的労働からも解放されるために、あらゆる意味での仕事が無くなると予想されているのです。つまり、今度の産業革命は今までの産業革命とは種類が違うということなんですね。そのことを良く理解する必要があります。

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機械との競争

グレートデカップリングの時代に雇用を維持させるための19の方策が、エリック・ブリニョルフソンと、アンドリュー・マカフィーの最初の本「機械との競争」に提案されています。簡単にご紹介しますので興味を持った方はぜひ本を手に取って読んでみてください。それは、日本社会も避けて通れない未来を示しているはずです。

  1. 教育に投資する。高スキルの労働者を増やす。
  2. 教師に説明責任を持たせる。終身在職権剥奪も。
  3. 教育機関は教育指導に専念し、試験や認定を別機関で。
  4. 義務教育の授業時間を増やす。
  5. 高スキル移民の積極的受け入れ。
  6. すべての高等教育機関で起業家教育を行う。
  7. 起業家ビザの新設。
  8. スタートアップ向けマニュアルや雛型や情報交換の提供。
  9. 起業に対する行政面の障壁の排除。
  10. 通信輸送インフラの強化。
  11. 基礎研究への助成金の増額。
  12. 労働市場の流動性の維持。
  13. 雇用促進税制、補助金。
  14. 福利厚生と雇用を切りはなす。
  15. ネットワークビジネス規制の凍結。
  16. 住宅ローンへの補助金廃止。
  17. 金融サービスへの補助金廃止。
  18. 特許制度改革。
  19. 著作権保護期間短縮。

14番は重要な提言です。厚生年金や健康保険を、雇用契約と分離しろと言っているわけです。ほかにも、5番の移民拡大や、12番の労働市場流動性維持(終身雇用制廃止)、16番の住宅ローン補助廃止や、17番金融サービス補助廃止は、競争力確保のために少しずつ進めざるを得ない政策です。手を変え品を変え、少しずつ少しずつ、進展するはずです。世界の趨勢なので誰も止めることができません。


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