テザー社と米金融当局の激闘

中島真志、アフタービットコイン2仮想通貨VS中央銀行

デジタル通貨に投資する人の必読書です。USDTを発行している香港のテザー社と、米国商品先物取引委員会CFTCの激闘が描かれています。2017年12月にCFTCはテザー社と親会社のビットフォネックス社に対して召喚状を送付しましたが、テザー社は「2018年1月1日以降、テザー通貨は米国籍の人には発行されない」と規約を改訂したというのです。また、2018年6月にはテキサス大学のジョン・グリフィン教授とオハイオ州立大学のアミン・シャムズ氏の共同執筆論文で、2017年末のビットコイン急騰はテザーによる価格操作の疑惑があると指摘されたのです。親子会社間でテザー通貨を発行し、そのテザーを使ってビットコインが購入されていたというのです。これがビットコインとテザーのブロックチェーン分析から明らかになったと言います。テザー通貨のドルに対するペッグ(釘付け、固定)は、ドル資金をテザー社に振り込むと同額のテザーが発行されるという、プルーフオブリザーブproof of reserve によって維持されているのですが、テザー社による裏付け資産の証明は不十分であると分析されています。また、裏付け資産の証明は、各月末に求められていることから、月末に向けてビットコインを売却してドルに換える取引が増加する要因になっているのではないかと書かれていました。2020年8月時点で、ビットコインの時価総額が22兆円、USDTは1.4兆円ですが、USDTの不安定性はビットコインの価格に影響しうると読み取れました。

また、各国中央銀行によるCBDC開発競争の激闘も詳細に描かれており参考になります。世界のトップを走っているのはデジタル人民元の中国だということです。以下に、印象深かった事項を列挙します。

  • CBDCは直接発行型と間接発行型がある。直接発行型は中央銀行がデジタル通貨を発行しエンドユーザーに直接利用させる方式です。間接発行型は現在の紙幣の流通方式と同じで、エンドユーザーは中央銀行に行かず市中銀行から紙幣を受領します。デジタル通貨でも、本人確認手続きや顧客管理サービス(決済アプリの使い方やトラブル対応を含む)などが煩雑ですので、中央銀行が直接発行するのは困難であると見られています。
  • CBDCはトークン型と口座管理型がある。トークン型はデジタルデータ自体に価値を持たせる方式で、口座管理型は中央銀行の口座の残高をユーザーが指図して操作する方式です。トークン型ではスマホの中に保存されているデジタルデータに価値を与えるので、2台のスマホがインターネットに繋がっていなくても、2台の間で通信できるならば、2台のスマホ間でデジタル決済をすることができます(オフライン決済機能)。
  • CBDCのプライバシー保護は、各国政府と中央銀行のスタンスにより異なる。マネーロンダリングやテロ資金や犯罪抑止の観点では、完全なトレーサビリティーを持たせることが好ましいことになるが、監視社会を警戒する立場では従来同様の匿名性を維持すべきとする意見がある。ブロックチェーンの特性上は、全ての取引が記録されるので、本人確認不要な匿名口座を認めるかどうかという論点になる。本人確認済みの口座と、本人確認未了の口座で1日の取引額の上限に差異を持たせる方式も検討されています。中国やロシアでは、匿名性の無いタイプが予定されています。
  • CBDCはデジタルウォレットにより管理されるので、利息を付けることが容易であり、マイナス金利を付けることも可能になります。CBDCの金利操作を新たな金融政策のひとつとして採用する政策が検討されています。
  • CBDCの開発は最終段階に差し掛かっており、中国のデジタル人民元とカンボジア中銀のバコンBakongが最先端を走っている。バコンはカンボジアの通貨事情を繁栄して米ドルも取り扱える仕組みになっており事実上世界初のドルCBDCと見られている。
  • 従来紙幣を印刷して流通させるコストが、2019年度にアメリカで1050億円、日本で524億円になっています。CBDCはこの費用を大幅に削減できる可能性があります。

CBDCが実用化した場合に、BTCなどの従来型暗号通貨がどうなるでしょうか。何らかの影響は避けられないでしょう。少なくともUSDTなどのステーブルコインは存在意義の危機にさらされることになるでしょう。CBDCよりも便利で得するというようなインセンティブを打ち出すことができなければ衰退するリスクがあるでしょう。

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