量子機械学習

藤井啓祐、驚異の量子コンピュータ

シンギュラリティ革命に量子コンピューターはどのように影響するのでしょうか。そもそも、量子コンピュータってなに?それがごく普通の感想になりますが、シンギュラリティ革命を乗り切るには苦しくても量子コンピューターの勉強をする必要があります。この本は、2019年10月23日にグーグルがNature誌に量子コンピュータが従来型の古典コンピュータを超える性能を持つこと「量子超越性」を実証した論文の査読者の一人である日本人研究者が書いたものです。著者によると、量子コンピュータの量子超越性実証は、ライト兄弟による最初の有人飛行のような重要な一歩であると言います。古典コンピュータにおけるムーアの法則のように、量子コンピュータでも指数関数的な性能向上が始まっていると解説されています。これを「量子版ムーアの法則」というのだそうです。

140ページ図27から量子ビット数の変遷をご紹介します。

  • 2014年、5QBIT–google
  • 2015年、9QBIT–google
  • 2017年、22QBIT–google
  • 2018年、72QBIT–google
  • 2019年、79QBIT–IonQ

この本で紹介されている用語もご紹介します。

超電導量子ビット、、、極低温で薄い絶縁体を挟むと電子対(クーパー対)が絶縁体を量子力学的に飛び越えるトンネル効果が発生し、それをマイクロ電磁波で操作することができる。電子の個数を制御するだけなら普通のデジタルコンピュータであり、量子コンピュータとは言えませんが、電子対1個の違いにより量子力学の作用を観測できるようになるという意味では量子ビットになり得るのでしょう。

イオントラップ、、、真空中で電荷を持つイオンを冷却し、電極で捕えて(トラップして)、量子ビットとして利用する。レーザー光を照射したり、光を検出することにより、量子ビットを操作したり、読み込んだりすることができる。

半導体量子ビット、、、現在の半導体微細化技術を応用して、電子数個をシリコン基板のMOSコンデンサの中に閉じ込めて、スピン(電荷以外の次元)を観察したり操作したりして量子ビットとして利用する。

光量子ビット、、、光の強度を弱めていくと単一光子のレベルまでエネルギーが低下し、量子力学的な光子のふるまいを観察できるようになる。光子の偏光の向きを利用したり、ヤングの実験のように2種類の経路の区別を利用したりする。

ショアの素因数分解アルゴリズム、、、1994年にアメリカの数学者ピーター・ショアが発見したアルゴリズム。量子コンピュータによって古典コンピュータに対して指数関数的に高速化して素因数分解を計算できることが示された。素因数分解は暗号強度の根拠となる重要な計算であり、機械式計算機が発明されて以来突破されなかったチューリングマシンのテーゼが突破された大きなブレークスルーだった。

量子ビットの要らない量子アルゴリズム、、、ネットショッピングや動画配信サイトで使われる推薦システムを高速化させる量子アルゴリズムを改良する過程で、テキサス大学に14歳で入学したエウィン・タンは18歳の時に古典コンピュータを使って従来の古典アルゴリズムを凌駕する推薦アルゴリズムを構築することに成功した。これは「量子インスパイアード古典アルゴリズム」と呼ばれている。特定の課題については、従来のコンピュータを高速化できるアルゴリズムが新たに発見される可能性が秘められている。

トーラス量子誤り訂正符号、、、1997年にアレクセイ・キタエフが提案した量子ビットの配置方法。ドーナツ型の表面=トーラス上に量子ビットを配置することにより量子コンピュータの誤り耐性を向上できることを、ロバート・ラウッセンドルフらが示した。誤り耐性量子計算の閾値を1パーセント付近まで一気に引き上げて、臨界点を大きく引き寄せた。

量子アニーリング、、、1998年に東工大の西森秀稔らによって提案された計算方法。アニーリングは「焼きなまし」を意味し、量子力学的粒子がシュレーディンガー方程式に従って振る舞うことにより目的関数の最小値にを探し出すことができることを利用するものです。この粒子の振る舞いが、製鉄における焼きなまし法による鉄結晶の歪みを除去する技法に似ていることから量子やきなましと呼ばれている。量子アニーリングで計算できるのは網目状の経路の中から最短経路を探す「組み合わせ最適解」などの問題が提示されている。特定目的の計算機となる。カナダのD-WaveSystems社は2011年5月11日、128量子ビットプロセッサ上で動く量子コンピュータシステムD-Wave Oneを発表した。

Screenshot of dwavejapan.com

アナログ計算機、アナログシミュレータ、、、車の模型に風をあてて空気の流れ方を理解する風洞実験装置は、空気の流れを計算していることと同じことである。

NISQ、、、Noisy Intermediate-Scale Quantum Technology ノイズのある中規模量子技術、つまり、量子ビット数の不足を補うために完全な量子誤り訂正を行わずに計算する量子コンピュータの時代を意味する。NISQ時代の次には、誤り訂正を備えた「誤り耐性量子コンピュータ」の時代が予想されている。

ファインマンの言葉、、、「自然法則は古典力学では動いていない。もし自然をコンピュータでシミュレーションしたければ、量子力学で動くコンピュータを作るべきだ。」ファインマンの経路積分で、量子力学の振る舞いを積分形式で提示してみせたファインマンさんらしい言葉です。

著者によると、現在の量子コンピュータの主なプレーヤーは、グーグル、IBM、インテル、マイクロソフトといった巨大IT企業のほか、D-Wave、リゲッティコンピューティング、IonQなどのベンチャー企業も開発にしのぎを削っているということです。

Screenshot of www.rigetti.com
Screenshot of ionq.com

著者らのグループでは2018年に量子機械学習アルゴリズムの提案も行っています。量子コンピュータの知見により、機械学習の効率が劇的に向上する可能性があるというのです。

※参考記事、量子コンピュータを用いた変分アルゴリズムと機械学習

https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/2019/09/74-09seriesAIphys1.pdf

量子コンピュータがどういうものか分からなくても、いやおうなしに実用化されれば社会生活の中で活用され、我々自身の生活に影響してきます。今後の社会の変革に、量子コンピュータも関わって来る可能性が高まりつつあるのです。「量子機械学習」という概念まで出てきてしまいましたから、もはや無視することはできません。量子機械学習がどうなっているか、定期的にチェックする必要があるでしょう。

※参考書籍

量子コンピュータによる機械学習

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