常温核融合

Screenshot of ja.wikipedia.org

1989年にユタ大学の研究者が報告して世界中で追試が行われましたが、再現性が悪かったといういわくつきの研究が、21世紀に入って復活の兆しが見られています。

とうとうnedo 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の補助金事業に採択され、2018年8月には「過剰熱」のレポートが公開されています。過剰熱というのは、実験設備に投入した総熱量を超える発熱(エネルギー)を生じたという意味です。しかも、その発熱量が酸化などの「化学反応」では説明がつかないレベルの(1万倍以上の)大量な発熱だというのです。化学反応じゃなければ「核反応」があったのか、と言われているわけです。2015年から17年にかけて世界14ヵ国に国際特許が出願されて2017年には成立しています。

https://www.nedo.go.jp/content/100882776.pdf

こちらの事後評価書に、次の記述がありました。

研究テーマ名: 金属水素間新規熱反応の現象解析と制御技術
委 託 先 : 株式会社テクノバ、日産自動車株式会社、国立大学法人九州大学、国立大学法人東北大学
総 合 評 価 : 妥当である
コ メ ン ト :
これまでの知見にない発熱現象の兆候を確認したことの科学的意義は評価できる。
しかし、試験条件が曖昧であり、発熱現象の確認と分析結果だけが成果として報告されており、現象の持続性・単位当たりの容量や金属等の原材料の再生等についての可能性の確認が報告されておらず、エネルギー技術として今後の研究開発の方向性を示すに至っていない。
基礎技術の解明が継続して必要であり、発生プロセスの実証研究と併せて基礎研究を行うことが望まれる。

※あいちシンクロトロン光センター報告

https://www.aichisr.jp/content/files/seikahoukoku/2017/5S2_201703019.pdf

※google patent「水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を利用して熱を発する発熱体セルを用いて安定して熱を得ることができる発熱システム」

https://patents.google.com/patent/JP6066143B1/ja

しかしこれは本当に核融合かどうか未確認であり、「金属水素間新規熱反応」とか、「凝縮系核反応」とか、「量子水素エネルギー、QHe」などと呼ばれています。

Screenshot of www.cleanplanet.co.jp

https://www.cleanplanet.co.jp/wp-content/uploads/210928_NR_Miura_CleanPlanet_jp_final.pdf

クリーンプラネットと三浦工業では、2021 年4 月から、量子水素エネルギーによる 1 キロワットの熱エネルギー放出のための実用化開発も始まっています。三浦工業はレッキとした上場企業であり、冗談なんかではございません。勿論、上場企業が絶対に間違えないという保証もないわけではありますが。

Screenshot of prtimes.jp

2024年2月、常温核融合の事業化を目指してクールフュージョン株式会社が設立され、400Wの電力で2000Wの熱出力を実現する常温核融合ストーブまで試作されているようです。更に2025年8月には、ステンレスを加熱して中性子が観測されたとする論文が科学雑誌に掲載されたようです。但し、中性子の数が最高でも1時間あたり30個と少な過ぎるのと、出てきた中性子のエネルギーが0.7MeVということで核融合の直接証拠とは言えない様です。

https://coolfusion.jp/pdf/mizunotadahiko_thesis_20250814.pdf

論文概要

We found that neutrons were generated when SUS304 alloy was compressed and tensile processed and heated from 300°C to 800°C, and the energy of the neutrons was 0.7 MeV. Here, we report on the control of neutron generation. The reactor was a cylindrical chamber that made by bending of 2 mm thick SUS304 plates. It was 10 cm in diameter and 40 cm long, with the inside surface buffed with mesh 400. Both ends were closed, hydrogen was poured into the reactor at 1 atmosphere, and then evacuated. By heating the tube and changing the temperature, it was confirmed that excess heat and neutrons were emitted. The neutron energy spectrum was confirmed by distinguishing gamma rays and neutrons using a NE213 liquid scintillator. The neutron energy had a peak at 0.7 MeV, which was significantly different from the 2.45 MeV that had been thought to be nuclear fusion up until now. This reaction was highly reproducible, and the higher the temperature, the greater the reaction.

和訳

SUS304合金を圧縮・引張加工し、300℃から800℃に加熱したところ中性子が生成され、そのエネルギーは0.7 MeVであることを見いだした。ここでは中性子発生の制御について報告する。反応器は、厚さ2 mmのSUS304板を曲げて作製した円筒状チャンバーで、直径10 cm、長さ40 cm、内面は#400のバフ仕上げとした。両端を封止し、1気圧の水素を導入したのち排気した。管を加熱して温度を変化させることにより、余剰熱と中性子の放出が確認された。NE213液体シンチレータを用いてガンマ線と中性子を弁別し、中性子エネルギースペクトルを確認したところ、中性子エネルギーは0.7 MeVにピークを持ち、従来核融合によるものと考えられてきた2.45 MeVとは大きく異なっていた。この反応は再現性が高く、温度が高いほど反応は顕著になった。


核融合と言えば、太陽のエネルギー源であり、1億度℃以上に熱した重水素を超電導磁石で閉じ込めて核融合反応を起こすという「正攻法」の計画も進行中ですが、cold fusion の可能性も捨てきれず、同時並行で研究開発が進められているのです。cold fusion って、ベータ崩壊の逆みたいな事なんでしょうか。

この新規熱反応は、ファラデーが電気を実験したり、マクスウェルが電磁波を予言したり、アインシュタインが相対論を発表した頃の人類の状態に似ていると思います。そのエネルギーが何なのか良く分からないけど、とにかく実験して、その仕組みを解明しようと努力している状態です。その新しい技術が、数十年後に我々の生活を一変させているかもしれないのです。勿論、なにも起きない可能性だってありますが、それに注意を払い続ける態度が必要なのです。

※参考記事

核融合の現在地点


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です