新しい物語「洞窟暮らし」


太田尚樹、アンダルシアの洞窟暮らし「もたない」「ゆったり」「自由」が満たされる世界

シンギュラリティを乗り越える「新しい物語」のひとつに成り得るような生活が、スペイン南部の地中海に面したアンダルシア地方にあります。断捨離の洞窟暮らしです。著者は東海大学名誉教授(比較文明史)の太田尚樹さん。若いころからスペインでフィールドワークをして住んでいた方です。ゲーテの「若い時代に旅をしていない人の、後半の人生の話は貧しい」を慰めに30過ぎまで無職の旅を続けていました。日本でも「かわいい子には旅をさせろ」という諺がありますね。シンギュラリティを乗り越えるためには学生時代の旅行が大切かもしれません。旅行と言っても外国に行くような物理的な旅行のほかに「知の冒険」「精神的な旅行」というものもあるでしょう。自分の専攻分野以外の世界にどんどん飛び込んでいく積極性が必要です。

この本に書いてあるスペイン人と洞窟暮らしの性質を列挙します。

  • 室内は常時20度で騒音とは無縁の静寂の世界。
  • 一週間に一回ほど麓の町に食料の補給に降りていく。
  • 冬支度は、食料と薪。食料は生ハム、ソーセージ、チーズ、パンを焼く小麦、チーズ、ワイン。
  • 洞窟の家で生まれ育って、一時洞窟を出て都会暮らしをして、退職して洞窟の家に戻る。
  • スペイン人は、他人のことにも、自分のことにも無頓着であり、未亡人が黒の喪服を3年以上着ていることもある。
  • ジプシーはインド北部を発祥地として流浪の生活を続け15世紀にスペインに入ってきた。
  • 15世紀当時、ドイツでもフランスでもジプシーは同じ町に3日の滞在を許されたが4日目には退去させられた。スペインの坑道跡の洞窟ではそのような要求は無かった。
  • ジプシーは農繁期の臨時雇い農夫や、フラメンコダンサーなどの仕事をしている。牛馬の目利きと調教と飼育や繁殖や売買の仲介、オリーブ、サフラン、ブドウ、オレンジの収穫を手伝う。
  • イスラム時代、洞窟に住んだイスラム教徒の遊牧民ベドウィン族は、羊と毛糸を売って小麦粉などの食料を得る。持ち物は、薄いじゅうたんとポリタンクと地下水を掘り当てるスコップだけであった。羊の乳を主食としていた。
  • 著者は、物を極力持たない洞窟住人から「我々の文化の方がレベルが高い」という言葉を聞いた。
  • 近年、非ジプシーのスペイン人や欧米人の洞窟住人が増えて過半数を超えた。水道電気が整備され、道路が舗装され車を持つ住人が増えた。
  • 洞窟住宅の価格の一例。①7LDKで200万円。②8部屋で5万円、③平均は100万円程度、④廃墟を自分で改修して家賃なしで生活している住人もある。
  • 洞窟住人の愉しみは読書。スペイン哲学者オルテガの著作を5冊ほど所有する。読んで体得した本は捨てる。
  • 多くのスペイン人は、一日に少なくても1回、ふつうは2回、3回もバールに立ち寄って、一杯のビールかワインをなめるように飲んで、知人たちととりとめもない会話を楽しむ不思議な人種である。
  • 「ドン・キホーテ」を書いたセルバンテスは「模範小説集」の中の短編「ジプシー娘」のなかでジプシーに次のように言わせている。「わしらジプシーには名誉を失うという気遣いも無ければ、それを高めようという野心にかられて、あくせく思いわずらうこともない」

現代日本の生活とはちょっと違う、時間がゆっくり流れるジプシーの生活に思いを馳せることも、シンギュラリティ対策のひとつになるかもしれません。

そういえば近年はやっているという「軽トラハウス」ムーブメントも、ちょっとそういう遊牧民の気持ちが入っているのかもしれません。

 軽トラハウスマスターブック

https://www.carsensor.net/usedcar/freeword/軽トラハウス/

なんと中古車販売検索サイト「カーセンサー」では「軽トラハウス」で検索すると何十台もヒットしました。軽トラハウスが既に流通しているのです。軽トラハウスのベース車両として「保冷車」が使われることもあるようです。

「軽トラハウス」は、忙しい都会生活から抜け出して、心の平安を求めるという試みなのかもしれません。それは現代日本のジプシーと言えるかもしれません。

※参考記事

新しい物語

※参考書籍

図説ジプシー

セルバンテス、模範小説集


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