海賊党の液体民主主義

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著作権法改正が閣議決定され、刑事処罰される違法ダウンロード行為の対象を音楽や映像だけでなく、書籍や論文などを含めた全ての著作物に拡大するという改正案が成立する見込みとなりました。「海賊版サイト」の取り締まりを強化する趣旨だということです。

勿論、著作権者の許諾無しに違法にアップロードされたもののダウンロード行為が処罰されるだけであって、合法的に公開されているサイトからのダウンロード行為や、学術論文の学術引用行為と学術議論は処罰されることではありませんが、これを聞いて「世知辛い世の中だなあ」と感じました。

2005年にスウェーデンで著作権法が改正されて、インターネットを通じてソフトウェアや映画などをファイル共有することが違法となった時、100万人以上と言われたファイル共有者ソフトの利用者たちも同じ事を感じたのです。そして、スウェーデンで世界初の「海賊党」が誕生しました。この「海賊」は「海賊版」の海賊です。著作権を破るという意味の「海賊」です。一般市民の著作物を自由に見たいという素直な感情に立脚した政党です。peer-to-peerの情報交流を阻害すべきではない、という主張です。

勿論、著作権者の保護も全く考えていない訳ではなく、著作権保護期間を5年にせよ、などと主張しているようです。急進的な活動家は「著作権、特許の全面廃止」を掲げている場合もあるようです。

これは、1968年にヒッピー運動の機関紙「ホールアースカタログ」を創設したスチュアートブランドの、「情報はフリーになりたがっている“Information wants to be free.”」というスローガンにも通ずる考え方です。知的財産権の分野における協働型コモンズを推進すべきという主張です。

海賊党は欧州の地方議会から国政選挙まで、獲得勢力を拡大し続けています。海賊党の政策は、シェアリングエコノミーやベーシックインカムと親和性があると言われています。

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海賊党運動の高まりを受けて、海賊党インターナショナル(国際海賊党連盟)という国際組織まで誕生しており、日本でも海賊党の運動を試みる活動が続いています。

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英国海賊党は7つの基本理念を掲げています。

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・共有 -私たちの社会は、知識、アイデア、文化の共有に基づいて成立しています。それは思想と表現の自由によって促進され、法の支配によって保護されています。海賊党は、これらの財産の保存と開発を確保するために存在しています。

・安全性 -私たちの社会のセキュリティを確保するために、その保護のメカニズム、および必要なサービスとインフラストラクチャを提供することが政府の責任であると考えています。

・平等 -法の下の平等原則。私たちは皆、政策立案プロセスにおいて発言権を持ち、私たちのために何が行われているのかを知る権利を持っています。

・証拠 -私たちは、全国民の利益のために民主主義を通じて社会の同意を得て、証拠に基づいて行動します。

・参加 -社会に自由に参加するには、誰もが正義(権利の回復、裁判)、教育、およびその中での生活に必要なサービスやインフラストラクチャにアクセスできなければなりません。

・敬意 -政府も社会も、個人の私生活と家庭生活に対する敬意を払わなければなりません。我々の党では個人の選択の自由が最大限尊重されます。

・尊厳 -人間の尊厳は不可侵です。私たちはそれぞれ、生命と生きる権利、思考の自由と自己決定権、そして社会に参加する権利を持っています。

一部の海賊党では、直接民主制と間接民主制の中間的な政治形態である「液体民主主義 liquid democracy」を主張しています。liquid feedback のようなソフトウェアを活用して個別の政策事項について委任することを可能にして、個々の政策に直接民意を反映させる仕組みを目指しているのです。liquid というのは代議制民主主義のような固定した民主主義よりも柔軟性があるということでしょうか。勿論、民意が直接反映されれば「厳格すぎる著作権法改正は撤回されるべき」という主張が含まれています。

※参考記事、「代表制民主主義と直接民主主義の間」

https://icu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4441&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

なんでシンギュラリティを乗り越える当サイトで「海賊党」を御紹介しているかと言えば、ジェレミーリフキンの「限界費用ゼロ社会」で、あらゆる情報とモノの価格がゼロに近づく社会が提言されているからです。ムーアの法則が人間社会全般に作用すると予想されています。ムーアの法則が著作権にまで影響するとは驚きですが、「稀少さから豊穣へ」時代が変化していると述べているのです。リフキンは、「所有からアクセスへ」、「囲い込みからコモンズへ」など、限界費用ゼロ社会について様々なスローガンを提唱しています。

その変化の流れを止めるべきではないというのが海賊党の運動なのです。

※参考書籍

浜本隆志、海賊党の思想

ジェレミーリフキン、限界費用ゼロ社会

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