最終共通祖先(LUCA)

科学雑誌ニュートン出身のサイエンスライター藤崎慎吾さんの「我々は生命を創れるのか」を読みました。合成生物学の最先端の試みと、生命の起源を探求する生物学者たちの奮闘と思索が紹介されています。その分野の方々にとっては当然のことでも門外漢には新鮮であり、驚きに満ちた話です。もちろん、ITとバイオの双子革命を生きる21世紀の子供たちにとっては、必修科目になります。

いくつかの概念をご紹介いたしますので各自読んで勉強してみてください。

LUCA(Last Universal Common Ancestor)最終共通祖先・・・全生物が最後に枝分かれしたときの共通祖先の生物。真核生物と古細菌(アーキア)とバクテリアが分かれた分岐点に存在していたはずの生物。当初生物は、核を持つ真核生物と、核を持たないバクテリアに分類されていたが遺伝的に両者に隔たりが大きすぎており、20世紀に入って分離培養された高度好塩菌やメタン菌や好熱好酸菌が古細菌としてバクテリアとは別に分類され、「古細菌」「真核生物」「バクテリア」に分類する3ドメイン説が提唱された。海底熱水噴出域で生息する超好熱菌が最もLUCAに近いとされる。

生命の起源「化学進化説」・・・進化論のダーウィンが、さまざまな栄養やエネルギーに富む「小さな温かい池」で一連の化学反応が起きた結果生命が生まれたと主張した。スタンリーミラーのフラスコ実験でメタンとアンモニアと水素の中で1週間火花を飛ばしてアミノ酸の生成を確認した。

・生命の起源「海底熱水噴出域説」・・・人体の元素組成が地殻より海水に近いこと、超好熱菌の発見などを根拠として生命の起源を海底に求める説。1977年、アメリカの潜水調査船が南米エクアドルのガラパゴス諸島沖で最初の熱水噴出孔を発見したのが起源。

・生命の起源「陸上温泉地帯説」・・・生物細胞にはナトリウムイオンよりカリウムイオンが多く、海水より陸上の温泉地帯に近いこと、間欠泉のように湿ったり乾いたりする場所で有機物が重合しやすいこと、核酸に必要なリン酸が温泉に多いことなどを根拠として生命の起源を陸上に求める説。核酸ができるためにはヌクレオシドとリン酸が脱水縮合しなければならないことを重視している。

RNAワールド・・・生物が誕生したころ、代謝も複製もRNAが一手に引き受けており、そういう世界がしばらく続いたと考える仮説。RNAが酵素タンパク無しで切り貼りされること(自己スプライシング)が発見され、また、RNAからDNAが合成される逆転写酵素を持つレトロウイルス(遺伝情報はすべてDNAを起源とするセントラルドグマの例外)が発見されたことにより提唱された。

合成生物学といえば、クレイグベンター人工細胞のことかと思っておりましたが、日本の「細胞を創る研究会」などではもっと幅広い研究が行われているようです。最初の生物が誕生する前の、「生命0.1」や「生命0.5」なども考えて実践してみようという試みが行われています。工学的に合成された高分子のふるまいが意外に現実の細胞と似ていることなどはとても興味深いことだと思いました。遺伝子編集と合成のルートでも、工学合成のルートでも、人類が目的にあわせて自在に生物種を生み出すことができるようになるのも時間の問題かもしれないと思えてきます。そうなったときに、農業や畜産業や酪農の生産性がどうなるか考えてみると良いでしょう。

※参考記事

合成生物学の衝撃


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