The Great Stagnation 大停滞

タイラーコーエン、大停滞

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Stagnation

2011年の少し古い本ですが、リーマンショック後の21世紀の経済がどうなっていくのかを論じた本です。それは20世紀の経済とは異なるということなんですね。

コーエンは、大停滞の原因を「イノベーション率の低下」に求めています。アメリカの20世紀の発展は、5つの果実によってもたらされたものと言います。

1、無料で未開拓の土地を容易に耕作できたこと。

2、画期的な18世紀と19世紀の科学発見が資本化され1880年から1940年に急速にイノベーションが起きた。

3、賢いが未教育だった生徒を大学に送り込むことにより得られる大きな果実。

4、安価な化石燃料の供給。

5、アメリカ合衆国憲法の強さ。

アメリカ憲法の強さっていうのは、1787年ですから、1789年のフランス革命と同じく「市民革命」の強さということですね。自由と平等と民主主義という近代的価値観を人類が発見し、これを活用し始めたということでしょうか。王侯貴族が独占していた富を市民が強奪し分配し始めたんですね。いわば市民革命の果実です。市民革命から200年以上が経過して、その果実を食べ尽くしてしまったということなんですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/シェールガス革命

安価な化石燃料というのは、シェールオイル革命(2013年)も含むでしょうから、もう少し持続するかもしれませんが、「化石」燃料なので、やがて枯渇することはあきらかです。

賢いが未教育の生徒を大学に送り込んで果実を得るというのは教育革命でしょうか。日本でも、高度成長期に大学進学率の上昇とシンクロしていたことがありましたね。日本の大学進学率は2019年で58.1パーセントに到達し、もはや「行くべき人はあらかた大学に行くようになった」と言っても過言では無いでしょう。

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/08/08/1419592_1.pdf

画期的な18世紀と19世紀の科学発見が資本化されたというのは、第一次産業革命の資本主義的拡大ということでしょうか。蒸気機関や電気通信の発明に、投資資金が結びついて事業化が一挙に進みましたね。発明されたものにお金を掛けて事業化するだけで、立派なイノベーションでした。いま、それに相当する新たな発明はあるのか?という問いなんですね。

無料で未開拓の土地って、アメリカインディアンを追い出して手に入れた土地なんですけど、確かに大規模農場で小麦やトウモロコシなどを栽培し、大規模酪農畜産で乳製品や牛肉や豚肉を大量生産して、莫大な利益を上げましたね。土地を開拓するだけでイノベーションになったわけです。

今から思えば、日本の明治維新だって、イギリス産業革命とアメリカ独立戦争とフランス革命の市民革命の余波が来たということなのかも知れません。アメリカインディアンが大虐殺されてアングロサクソンが手に入れた土地が開発され、巨大捕鯨船を建造し、ついにはイノベーションを日本にも押し付けてきたというわけです。そのイノベーションの波が、20世紀までずーっと続いたわけです。

しかし、コーエンさんは、これらのイノベーションが原因が、どれもこれも枯渇しつつあり、総じて「大停滞」に至りつつあるということを主張しているわけです。開発すべき対象が枯渇しつつあるというわけです。これはちょっと資本主義の終焉論と似ている部分があります。21世紀の子供たち、我々大人も、大停滞の時代をどのように乗り越えていくべきか考えておく必要があります。

※参考記事

資本主義の終焉と歴史の危機

Post Capitalism

ニューノーマル新常態とは

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