長期停滞 secular stagnation は、1938年にケインズ経済学者アルビン・ハンセンが提唱した、大恐慌後の経済成長が全く無い状態が継続している事を指します。ケインズ経済学では、公共事業の政府支出でも何でも良いので有効需要を増やして景気を回復させましょう、ということになります。
これが21世紀にも再認識されているのは、1987年ブラックマンデー、2001年ミレニアムITバブル崩壊、2008年リーマンショックを経て、1930年代と同じ様な金利低下などの停滞現象が起きているからです。
IMFのラテンアメリカクラスターレポート2017年3月号では、これを concurrent slowdown 世界同時減速と呼んでいます。
※IMF CLUSTER REPORT – TRADE INTEGRATION IN LATIN AMERICA AND THE CARIBBEAN, MARCH 2017
https://www.imf.org/~/media/Files/Publications/CR/2017/cr1766.ashx
The concurrent slowdown in global economic activity, particularly in investment,accounts for up to three-fourths of the trade slowdown (IMF 2016b).
世界経済活動の同時減速、特に投資の減速が、世界貿易減速の最大4分の3の要因となっている。
※IMF専務理事ゲオルギエヴァ氏の年次総会スピーチ
https://www.imf.org/en/News/Articles/2019/10/03/sp100819-AMs2019-Curtain-Raiser
The global economy is now in a synchronized slowdown.
This widespread deceleration means that growth this year will fall to its lowest rate since the beginning of the decade.
世界経済は今、同期減速のさなかにあります。この広範な減速は、2020年代の最初の年である今年の成長率が低下していることを意味する。
投資の減速というのは「金利の低下」ということですね。誰も投資したがらないので債権にお金が流れて金利が低下してしまうのです。はっきりとは言っていませんが、ゲオルギエヴァさんは、2020年代を通して長期停滞が続く可能性を示唆しています。
大きな歴史の流れで見れば、21世紀の長期停滞は、世界人口の伸びの鈍化、生産性革命の進展による利子率の低下ということに根拠を見出すことができます。19世紀や20世紀にとっての「アジア」や「アフリカ」はもう無いのです。開発する対象の人口も技術も枯渇しつつあるということですね。
長期停滞を打破するには、「新大陸」を発見する必要があります。砂漠の緑地化や、巨大干拓やメガフロートなどの技術的なブレークスルーが起きれば別なのでしょうけど、現在のところ解決策は見出されて居らず、長期停滞は長期に続く可能性が高いでしょう。21世紀の子供たち、大人たちは、長期停滞の時代を生きていくことになるということを認識する必要があります。
※参考記事
The Great Stagnation 大停滞
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