国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)とシャープは、変換効率30パーセント以上のIII-V化合物型太陽電池パネルを用いた実証EVを製作し、普通自動車に1KWクラスの発電力を実現することが可能で、ユーザーの利用パターン次第では、年間の充電回数をゼロにすることが可能であることを確かめるための実証実験を開始しました。世界最高レベルの変換効率31.17%を達成したパネルが使われています。
年間の充電回数がゼロ?
春夏秋冬を通じて充電不要ということであれば、これはもう永久に充電不要ということを意味します。電気自動車が充電しないというのは矛盾ですが、要するに自車に載せた太陽光パネルで自家発電して搭載しているリチウムイオン電池に「内部充電」しているわけです。外部電源による充電不要ということは、オフグリッド、電力会社との接続も不要になります。
普通の一般家庭の屋根に載っているシリコン多結晶の太陽光パネルは発電効率が18パーセント前後ですから、III-V化合物半導体の30パーセントを超える発電効率は別物ということになります。
III-V族化合物半導体で最も有名なのは、ガリウムヒ素GaAs半導体ですね。ああ、あれか!はい、衛星放送のチューナーなどに使われている高周波向けの高価な半導体です。最近は窒化ガリウムGaNもモバイル充電器に使われています。これで太陽電池を造ったらそれは高価なものになりますね。でも、実証実験だから構わないわけです。
現在、無充電EVはニッサンのe-NV200を改造したミニバンタイプで、定格発電量1150W、蓄電量40KWhで試験運用されています。日本の年間平均日照時間は1850時間程度とされていますから、発電量は年間2100KWhということになります。40KWhのリチウムイオン電池を搭載するe-NV200の航続距離はJC08モードで300kmですから、2100KWhで年間15750キロを走行できることになります。年間1.5万キロって、普通の利用者なら十分に賄える走行距離ですね。これは既存車両を改造したものですから、太陽光パネルを沢山搭載できるように専用設計された車両であれば更なる性能向上も期待できます。普及には高価な化合物半導体ではなくシリコン系パネルを使うことが必要でしょう。
この無充電EVに、自動運転機能が追加されるわけです。自動運転タクシーが無充電運用されることが予想されます。無充電タクシーをスマホで呼び出すのです。当然、移動にまつわるコストが劇的に低下することになります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Off-the-grid
クルマが無充電になるなら、家も自家発電可能じゃないかという話になってきます。全家庭がオフグリッドになれば、電力会社が不要になります。電力会社が無い社会は、オフグリッド(電力網から切断)じゃなくて、ゼログリッド(電力網なし)ということになるでしょうか。自然エネルギー100パーセントの社会、脱炭素社会の実現ということになります。
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1576.html
このような産業の消滅は、社会の変革に伴って過去にも繰り返されてきました。明治日本で隆盛を極めた生糸産業も、ほぼゼロ近くまで減少しています。他にも、機械式計算機、計算尺、DRAM、国産白物家電、国産テレビなど、日本は何度も「産業の消滅」を経験しています。無充電EVの記事をきっかけとして、社会の変化の潮流を感じ取って欲しいですね。
※参考記事
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