素晴らしきデフレの世界

マーク・モビアス、素晴らしきデフレの世界

20年間で3万6000パーセントの運用実績を叩き出した伝説のファンドマネージャー、マークモビアスのデフレ解説本です。大学の時に経済学の勉強が不十分だったなあと反省させられますが、たとえ大学で経済学を勉強したとしても、2000年以降の中央銀行の動きを知らなければ21世紀のデフレ(とインフレのリスク)を理解できません。その21世紀の中央銀行の悪戦苦闘が詳細に記述されている本です。「デフレの世界」という題名ですが、9割方はインフレの説明になっています。人類の歴史のほとんどはインフレとの戦いだったわけですから、ある意味当然かもしれません。消費者物価を計測することが如何に困難か、政治的な意図が影響し続けているか詳述されています。人々の消費動向を反映させるために、消費者物価指数に使われる構成品目は常に変化し続けています。

第8章で紹介されているアルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)のグラシエラ・バベッカ局長の解雇事件は非常に考えさせられるものでした。日本でも厚生労働省の勤労統計不正問題があり、身につまされる話です。

※バベッカ局長解任の記事

https://www.thebubble.com/indec-graciela-bevacqua-fired

※厚生労働省、毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03758.html

要するに、「いまだかつてインフレから逃れることができた通貨は無い」、「物価の計測は人々の生活が変わる過程において、また、政治の影響を受ける中で、正確性を維持することは不可能である」という2点が著者の見解になります。

第9章「素晴らしきデフレの世界」では、食料価格が金価格に対して下がり続けていることを指摘して、生産性の向上がデフレの要因であると分析しています。

pricedingold.com による食料価格チャート分析

Food

「人類はムーアの法則を体験している。」

食料と半導体には直接の関係はありませんが、半導体の微細化と低コスト化を牽引する「ムーアの法則」がIT革命を通じた生産性の向上をもたらし、食料価格にも引き下げ圧力をかけているのです。ムーアの法則は、我々の生活全体に影響しつつあります。

テクノロジーはあらゆる分野にデフレ圧力をかけています。airbnb はホテル業界のデフレに影響しましたし、uber は交通流通価格のデフレに影響しました。数多くの進歩が逃れようのないデフレトレンドに大きな影響を与えており、(信用できない)政府のインフレ統計を見ずに、正味の生活を見れば我々はデフレを経験し続けていることが分かるというのです。実質賃金は向上し続けているので、生活は向上し続けているのだから「デフレを喜んで受け入れよう」というのが著者マーク・モビアスの見解になります。

この本には、AIによる仕事の消滅についての考察や意見は含まれておりませんでした。実質賃金が増えているというのは「従来の収入が維持できるのであれば」という前提条件つきの見解ということになります。それでも、「法定通貨をモノに変えよう」、「デフレを活用して安いモノやサービスを利用しよう」という教訓にはなると思います。モノというのは、金や、BTCなどのデジタル通貨や、企業の株式ということになるでしょう。zoom会議の流行などを見ると、不動産より、NEXT FUNDS NASDAQ100連動型上場投信(1545)のようなIT企業の方が良いのかもしれません。

https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/stock_detail&MKTN=T&QCODE=1545

※参考記事

シェアリングエコノミー、限界費用ゼロ社会

ムーアの法則


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