座礁資産 Stranded Assets とは、社会経済、環境要因の変化などにより、価値が大きく減少してしまう資産です。座礁資産の償却費を、座礁コスト、座礁費用 Stranded costs と言います。変革が起きてしまえば、座礁資産は不良債権となってしまいます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Stranded_asset
https://en.wikipedia.org/wiki/Stranded_costs
座礁資産の形成はバブルとして成長します。例えば、化石燃料を活用する企業や設備投資は、化石燃料全盛時代には優良な資本効率により、巨額の投資資金を呼び込み、企業価値も設備価値も高額に評価されます。化石燃料に関して言えば、これは「炭素バブル Carbon bubble 」と呼ばれています。太陽光発電など自然エネルギーの発電コストが劇的に下がると、化石燃料を燃やす必要性が無くなってしまい、化石燃料とその活用施設は座礁資産となってしまいます。このような、座礁資産を生じさせるような大きな社会変革のことを、「破壊的イノベーション Disruptive innovation 」と呼びます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Carbon_bubble
https://en.wikipedia.org/wiki/Disruptive_innovation
※Citi GPS: Global Perspectives & Solutions, August 2015
米国シティバンクの2015年8月のレポートによれば、化石燃料の座礁資産は100兆ドル以上と見積もられています。これは史上最大のバブル崩壊になる可能性があると警告されています。ミレニアムITバブルとか、リーマンショックとかも比べものにならないほどのバブル崩壊です。
---引用はじめ
We examine the issue of unburnable carbon and stranded assets, in particular in which countries, industries and companies they are located, and find that at current prices, around $100 trillion of assets could be ‘carbon stranded’, if not already economically so.
---引用おわり
日本語訳=我々は、使われなくなる化石燃料と、座礁資産について、特にそれらが所在する国、産業、企業ごとに見積もりした結果、今現在そうではないにせよ、将来、貨幣価値に換算して、約100兆ドルの資産が「炭素座礁資産」となる可能性があることを発見しました。
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100兆ドルって、日本円だと11000兆円ということになりますね。2018年5月末の、トヨタ自動車の時価総額が約24兆円、東証全体の時価総額が676兆円ですから、いかに大きな数字か分かります。
ムーアの法則により、また、AI革命によりこれから起きる社会変革は、あらたなバブルを産み、新たな座礁資産を生むことになるわけです。今までずっと、そして今現在も価値が有ると信じて疑われないモノの価値が、急激に毀損してしまうような事件がどんどん起きるかも知れないというわけです。
たとえば、レイ・カーツワイルは、VR/AR技術の進化により、直接面談の必要性は急激に低下し、「不動産はヴァーチャルなものとなる」と予言していますので、それが実現した場合は、全ての不動産が座礁資産と化してしまうことになります。オラガ総研の牧野知弘さんは、利益を生み出さない赤字資産となってしまう不動産のことを「負動産」と呼びました。不動産に価値が無くなってしまうなんて、驚天動地の世界です。これはもう、相当なアタマの切り替えをしないと生き残っていけないリスクがあるということになります。
※参考記事