ステーブルコインの時価総額が100億ドル(1兆600億円)を超えたそうです。おごれるもの久しからず。そんなステーブルコインにもXデーがやってきます。それは、世界の基軸通貨ドルを発行しているアメリカのFRBがCBDCを発行する日です。
CBDCは真にstable なコインです。FRBがCBDCを発行するとき、従来のステーブルコインがどうなるか、正確には、FRBがCBDCを発行することが正式に決まった日から、従来のステーブルコインはどうなるか考えてみたことがありますか。CBDC発行後に、普通の民間会社が発行するステーブルコインに存在意義は残り続けるでしょうか。存在意義を維持するには、金利が付くとか、スマートコントラクトなどの付加機能があるとか、処理速度が速いとか、送金手数料が安いとか、匿名性が高いとか、CBDCに対して何らかのアドバンテージが必要になるでしょう。しかし、相手はFRBです。とても資金力で敵うものではありません。CBDCにもスマートコントラクト機能が実装されるでしょう。
FRBがCBDCを発行することが決まった日から、従来のステーブルコインの生き残り戦争が始まるでしょう。今まで時価総額が増え続けていたのですから、減り始めれば逆回転です。その時、各仮想通貨取引所が自己資本残高の範囲内で抑制的に発行しているような独自コインであれば存続の道もあるでしょうが、自己資本を無視して乱発しているようなステーブルコインであれば、急激な逆回転に見舞われる恐れがあります。
カンボジア中銀は、日本のブロックチェーン企業ソラミツのブロックチェーン「いろは」を使って2019年7月18日からbakongというCBDCの試験運用を開始しています。バコンのアプリではドルも利用できるので、事実上ドルのCBDCは既に発行されていることになりますが、登録にはカンボジアの携帯電話番号が必要なので世界的な普及には至っていません。
FRBでは、CBDC導入による支払効率の向上、金融包摂の向上、支払いのイノベーションを期待して、実際には、私的ステーブルコインや外国のCBDCにシェアを奪われる危機感のもとに、分散台帳技術distributed ledger technology (DLT)を用いたCBDCの実証実験 The FooWire project が開始されています。
1980年代から、中央銀行が提供する Real-Time Gross Settlement RTGSシステム(アメリカではFedWire)が銀行間の資金決済に使われてきましたが、日本では中央銀行である日銀が市中銀行からの注文をまとめて午後1時、午後3時などに、差し引きした差額のみ決済する「時点決済システム」が併用されていました。これは通信処理速度の遅い時代の遺物でしたが、日本でも2001年からRTGS(日銀ネット)に一本化されています。このRTGSの参加者を拡大する試みがRTGS+ですが、RTGSと同じ従来型の中央集権的なクライアントサーバーモデルのシステムであることは変わりありません。
CBDCが分散台帳技術をベースに開発されるとしても、その参加者(ノード)が無制限に開放されることは無いでしょう。認可された金融機関のみ参加を許す可能性があります。折衷的なブロックチェーンになると予想されています。
原理主義の論争となりますが、果たして参加者を無制限にするBTCのブロックチェーンと、参加者を金融機関に限定するCBDCのブロックチェーンとどちらが堅牢なシステムなのか、これは現時点では未解決の問題です。ただ、ブロックチェーン生成の参加ノードを米国内に限定することは、たとえば米国が核兵器で壊滅した場合にはCBDCも壊滅してしまうので脆弱なシステムとなってしまいます。アメリカからみて地球の反対側、インド洋のあたり、つまり対蹠(たいせき)地にもノードを設置すべきです。CBDCも世界中にノードを設置すべきことは間違いありません。
CBDC競争も米中貿易戦争、経済戦争と同じ競争です。中国のCBDC(デジタル人民元)が正式運用開始されれば、FRBも導入加速するはずです。
https://www.google.com/search?q=デジタル人民元+試験運用
デジタル人民元は、120万個のウォレットで、2020年4月から8月の間に310万件、11億人民元(約170億円)の規模で試験運用が開始されています。FRBの試験運用も近いと見るべきでしょう。
※参考記事
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