ユヴァル・ノア・ハラリさんのサピエンス全史は、紀元前8000年の農業革命は史上最大の詐欺だった(農耕民は狩猟採集民よりも労働時間が増えてしまった)、という主張で有名ですが、農業を軸に世界史を理解することは有益です。
そこで、今まで人類が経験した農業に関する革命を復習し、更に現在進行中のバイオとITの双子の革命についてもチェックしてみましょう。
農耕革命
紀元前8千年頃、人類は新石器時代にチグリス・ユーフラテス川流域のシュメール文明で農耕を開始し、食料生産を倍増させ、農地周辺に定住するようになりました。これは、農業革命、食料生産革命、新石器革命、定住革命などとも呼ばれる大変革でした。人類の祖先が毎年の植物の生態を観察し、種を採取してそれを翌年撒いて収穫するサイクルを体得し、収量の大きな品種を選別することにより、作物の品種改良も開始されました。現代のトウモロコシや小麦が、原生品種とは大きくかけ離れた種になっていることは御存知でしょうか。
こんな10センチにも満たない原生種大切に育て続けて、選別し続けて、さらに20世紀に入ってからは放射線照射などの技術も使って品種改良し続けてきたのです。更に21世紀には遺伝子編集技術が付加されることになります。
農業革命
歴史学では農業革命のことを18世紀イギリスで始まった、輪作と囲い込みによる農業生産向上とそれに伴う農村社会の構造変化を意味します。人類が農耕を開始した新石器革命のことを「農業革命」と呼ぶ学者も多いので紛らわしいですが、違いを区別することが意味理解にも繋がりますので大切です。
輪作は、ノーフォーク農法と呼ばれるもので、コムギ→カブ→オオムギ→クローバーと順番に栽培することにより年間を通じて耕作地から農作物を収穫し、牧草で家畜の飼育量も増やし、ヨーロッパの人口爆発を引き起こしました。このような輪作の順番を「発見」したことは、紀元前8千年前に人類が「種まき」を発見したのと同じようなイノベーションでした。
囲い込みは、細かい土地が相互に入り組んだ混在地を統合し、所有者を明確にした上で排他的に利用することですが、議会主導で行われました。これも絶対王政から立憲君主制への移行を前提とするもので、いわば「人権革命」の波及効果と言えそうです。
それが都市人口の増加をもたらし、産業革命を加速させ、フランス革命などの市民革命の火種に繋がっていったと言われています。
緑の革命
緑の革命は、1940年代から1960年代にかけて、小麦やトウモロコシやイネの高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したことです。1909年、NH3アンモニアを人工合成するハーバーボッシュ法の発明により、窒素化学肥料の大量生産が可能となりました。高収量品種の導入は、育種学の進展により品種改良が進んだ影響が大きいです。
ITゲノム革命
そして21世紀のITバイオ双子革命です。AI情報革命と、遺伝子編集バイオテクノロジー革命が、相互に作用し合って影響を倍増させる現象です。キーテクノロジーは、ジェフリーヒントンさんのディープラーニングと、ダウドナ&シャルパンティエさんのクリスパーキャス9遺伝子編集酵素です。驚くべきことに、この2つの技術は2012年という同じ年に出現したのです。
遺伝子組み換え食品が指数関数的に増えていくでしょう。生産性革命の農業版、農業イノベーションです。
※参考記事
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