NHKのBS1スペシャル「新型コロナ挑み続ける研究者たち」という番組を見たのですが、そこで東大医科学研究所の河岡教授が1999年にリバースジェネティクスによりインフルエンザウイルスの人工合成に世界で初めて成功したと紹介されておりました。
リバースジェネティクス?なんですかそれは!
ユヴァルノアハラリ先生は、「21lessons」でバイオとITテクノロジーの双子の革命が進行中と言っておられますので、シンギュラリティ対策ではバイオテクノロジーの知識が必須ということになります。それでちょっと調べてみました。
※Generation of influenza A viruses entirely from cloned cDNAs
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC17785/
※米国科学アカデミー外国人会員選出プレスリリース
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/info/post_12.html
論文には、クローン(人工合成)されたインフルエンザウイルス(8本のRNAで出来ている)に対応する8本のcDNAをプラスミド(環状DNA)に組み込んでヒト胚性腎細胞に挿入し、細胞内でインフルエンザウイルスを合成することに成功したということが書かれています。更にリバースジェネティクスの手法により、新しいインフルエンザウイルスを合成して、表現型も調べたと書いてあります。この手法で実際の感染経路によらず効率よくインフルエンザウイルスを増やすことができるようになり、ワクチン開発に役立つ可能性があるというのです。
感染じゃなくてプラスミドを使ったtransfection挿入によりウイルスを増やすということなんですね。
リバースジェネティクス(逆遺伝学)は、フォワードジェネティクス(順遺伝学)の反対語なんですね。順遺伝学は突然変異個体から遺伝子を突き止める方法で、リバースジェネティクスは遺伝子ノックアウトマウスを作って個体に何が表現されるか調べる方法なんですね。
※国立遺伝学研究所の解説ページhttps://www.nig.ac.jp/museum/livingthing/16_c.html
https://www.nig.ac.jp/museum/livingthing/16_d.html
※wikipedia 解説 reverse genetics
https://en.wikipedia.org/wiki/Reverse_genetics
フォワードとリバースの両方の手段で、個々の遺伝子の機能が解明されていくんですね。それぞれの手法がそれぞれ改良されて、解明の速度がアップしているというわけです。そのうち、遺伝子の発現を全てコンピューターシミュレーションで実験できるようになるかもしれません。まさに「ホモ・デウス」の時代です。
※参考記事
ホモ・デウス上巻
ホモ・デウス下巻
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