グレートリセット

グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界

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世界経済フォーラムの年次総会はダボス会議と呼ばれますが、2021年1月のテーマは「グレートリセット」です。

これは勿論、新型コロナウイルスの流行による社会経済システムの崩壊を建て直すために、『協力を通じより公正で持続可能かつレジリエンス (適応、回復する力)のある未来のために、経済・社会システムの基盤を緊急に構築する』という問題意識のもとに提示されたものです。

世界経済フォーラムの創設者・会長のクラウス・シュワブ教授は述べています。 「私たちの地球はひとつしかありませんし、次は気候変動が世界規模の厄災をもたらし、人類にもっとはるかに甚大な結果をもたらすかもしれません。私たちはそれでも短いあいだに経済を脱炭素化して、思考と行動を今一度自然と調和させる必要があります」。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「グレート・リセットは、我々が直面している人類の悲劇は、我々に警鐘を鳴らしている事を認識させてくれるでしょう。私たちは、パンデミックや気候変動、他の多くの地球規模の変化に直面しても、より平等で包括的かつ持続可能な経済と社会を構築しなければなりません」と述べています。

シュワブ教授は続けます。「グレート・リセットは、人類の尊厳を中心に添えた新たなソーシャル・コントラクト(社会契約)を構築するために不可欠です。グローバル・ヘルスの危機は、社会的結束、機会均等、包摂性の欠如といった、古いシステムの非持続性を露呈しました。また、人種差別や差別の弊害から目を背けることもできません。私たちは、新しい社会的契約を世代間の責任に組み込み、若い世代の期待に応えられるようにする必要があります」

「新型コロナウイルス感染拡大の危機は、第四次世界産業革命の時代への移行を加速させています。私たちはデジタル、生物学的、物理的な世界における新しいテクノロジーが、人間中心であり続けるようにしなければなりません。そして、包括的に社会に奉仕し、だれもが公正なアクセスを持てるようにしなければなりません」

「世界規模のパンデミックはさらに、私たちがいかにお互いに繋がりあっているかをあらためて証明しました。私たちは今後50年の課題に対処できるよう構造化された、スマートかつグローバルに協力できる機能的システムを回復しなければなりません。グレート・リセットは今後、グローバル社会のすべてのステークホルダーが関心、目的、行動を共有するコミュニティにまとめることを必要とします。私たちは思考や態度を短期的なものから長期的なものに変え、株主中心の資本主義からステークホルダー責任主義に移行しなければなりませ ん。環境、社会、強いガバナンスが、企業そして政府の責任の一部として評価されなければならないのです」と加えました。

世界の知識人リーダーが集うダボス会議では、今現在、「持続可能性」「レジリエンス」が議題となっているのです。それは国連が提唱するSDGsの議論ともパラレルなものと考えることができます。「第四次産業革命」による社会変革にあたって、新しい社会経済システムを構築する必要があり、この時に新しいソーシャル・コントラクト(社会契約)が締結されることになるが、この契約内容を間違えると人類にとって不幸な21世紀を迎えることになってしまうという危機感があるのです。旧来の社会契約は「グレートリセット」されますがどうしますか、という問いかけなのですね。旧来の社会契約は無効化されるということです。

社会契約は一般に「国家と市民の取り決め」と言われますが、旧来の社会契約とは、旧来の因習と言っても良いでしょう。勿論社会契約ですから、世界中のどの国においても、有形無形の「法令」の形式や後ろ盾を持っているのです。人間社会で繰り返されて維持されてきたその慣習が無くなるかもしれないということです。ちょっと恐ろしいですが、列挙してみたいと思います。

  • 義務教育
  • 学歴
  • 資格(国家資格、民間資格)
  • 労働法制(正社員、契約社員、パートアルバイトの区別)
  • 税制
  • 民事法制
  • 刑事法制
  • 家族システム(結婚、親子関係)
  • 医療体制
  • 社会保険(年金、健康保険、生活保護)

なんとまあ、生まれてから死ぬまで、今まで、生きがいや、やりがい、プライドや自己実現、喜びも悲しみも、愛情さえも、人生の喜怒哀楽の全てを提供し続けてきたルールがリセットされるかもしれないという話なんですね。21世紀の我々は、竜宮城から帰ってきて現実に引き戻された浦島太郎のようなものです。我々は、旧来慣れ親しんできた「思考のオモチャ」を捨てなければならないかもしれないのです。今まで人畜無害で楽しかったオモチャが実は命取りになりかねない危険なものであるということになってしまいました。それは、パンデミックだったり、巨大台風や巨大地震による災害(津波、原発事故)だったり、核戦争、AI兵器による大量殺戮だったりしますが、20世紀までの社会経済システムに固執していると、人類全体が滅亡しかねない状況に差し掛かっているということに偉い人々が気付き始めたということなんですね。

※参考記事

レジリエンス
21Lessons 第5部レジリエンス
SDGs


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